【コミュニケーション・スキル⑲】メンターは何人いてもいい

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①分野ごと、テーマごとにメンターを持つ人は強い
 「メンター」(導き手、師)なる言葉は本田健さんの『ユダヤ人大富豪の教え』(大和書房)で一気に社会化したところがありますが、武道の世界でも「3年かけても良師を探せ」という言葉があり、「誰に学ぶべきか」ということは分野を問わず、大切なことであると認識されています。これは必ずしも実際に会わなくてはいけないということではなく、最初は本を通してでもいいのです。目的意識に沿って多くの本を読んでいけば、「この分野に関してはこの人の著書がいいな」とか「このテーマに関してはやはりこの人のこの本だな」といったことが次第に分かってくることでしょう。ただ、自分の持つ問題意識にドンぴしゃりの内容が本に必ず載っているとは限らないので、「生きた人間」で「聞けば何でも答えてくれる人」を如何に自分の「人脈」の中に確保するかが次のテーマとなってきます。
 例えば、「法律関係ならこの人に連絡しよう」「経済学ならこの人に聞けば大丈夫」「最新の流行についてはやっぱりこの人」といった「知り合い」がどれだけいるかということは、「アクセス・ルートの確保」がどれだけ出来ているかということを意味します。大体、今の社会においては必要な「情報」が「無い」ということよりも、「どこかに有るのは分かっているけれども、どこに有るかが分からない」「どの情報とどの情報をどう組み合わせれば自分にとって意味があるかが分からない」ということが問題になるのであり、こうした「アクセス・ルートの確保」と「個別目的に応じた加工」が可能になれば、それに基づく「情報コンサルティング」が出来るようになるのです。「何を聞いても答が返ってくる」「的確な情報提供をしてくれる」という人がいますが、こうした「情報」を駆使する「情報コンサルタント」は何でも知っている、何でも経験しているというわけではなくて、この2つに長けていると言ったらよいでしょう。
 ところで、人によっては「メンター」は「ブレーン」ともなるでしょう。楽天的な政治家(えてして「大ボラ吹き」と言われることになります)には、その人の能力をはるかに超えるブレーンがいたりするものですが、中でも筆頭格は池田勇人元首相でしょう。彼が「所得倍増論」を打ち上げた時、誰も信じる者がいなかったと言います。それはそうでしょう、敗戦国家で焼け野原から出発した日本がいくら戦後復興の波に乗っているとはいえ、そこまでハイレベルな「高度経済成長」を実現できるとは誰も考えられなかったのです。ところが、池田の経済ブレーン「木曜会」に集まるメンバーはそうそうたるもので、在野の経済評論家として名高い高橋亀吉、「下村理論」で有名な下村治ら「七人の侍」がおり、その叡智を結集した政策を実行に移したのが池田だったのです。
 ところで、実はこの池田の人生はとても順風満帆とは言えたものではなく、一高受験で2度落ち、やっと五高に入って京大法学部から大蔵省に入るも、これは決して主流派とは言えないコースでした。さらに彼はここで天然痘に似た奇病である皮膚病にかかり、医者から絶望を宣告されます。この看病疲れで、最初の妻は病死するほどで、見かねた母親が誘って四国八十八カ所の巡礼に出かけています。皮膚がボロボロのために草履がはけず、板を足に紐で結んで歩く状態で、大の男が母親に手を引かれてという有様でしたが、この難行による運動が効いたのか、発病して5年後に初めて風呂に入ることができるまでになります。やがて、完治し、2番目の妻と駆け落ち同然で上京し、税務署の用務員にでも雇ってもらえればいいと思っていたところ、大蔵省の課長の口利きで復職を果たしています。彼はその後もせいぜい国税課長を目指していたぐらいですが、戦後のレッド・パージで省内の地位が上がり、ついに事務次官から政界に打って出て、首相にまでなっていくのです。
 政界に出てからも池田の失言癖は有名で、「中小企業の1つや2つつぶれても」「貧乏人は麦を食え」といった失言を繰り返していますが、これらは激昂して口走ったのではなく、彼自身の実感の中から生まれた言葉であったと言います。実際、資本主義市場経済の第一原則は「失業と破産による淘汰」にあり、「自己責任」の原則も当然重視されますから、池田の言葉には一理あります。池田は知性的でも教養あふれるわけでもなく、都会人らしい繊細さもなかったようですが、素直に「オレは頭が悪いから助けてくれ」と言うので、周りの者は「それなら助けてやろうか」と思ったようです。そして、皆が知恵をふりしぼって案を練り上げると、池田は大真面目にそれを実行し、うまくいけば「どうだ、オレだってうまくできるだろう」と胸を張っているので、誰も彼を憎めなかったのです。そうでなければ、「知性の塊」のようなあの宮沢喜一元首相が池田のために粉骨砕身するなどということはなかったでしょう。
 実に「楽天主義」はその人の能力をはるかに超えて、「人の和」による大きな結果を生み出す秘訣なのです。
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