①「何を話すか」ではなく、「相手がどう反応するか」が大事
自分が好きなことになると、突然、話に力が入って、相手がどこまで理解しているかもお構いなく喋っている人がたまにいますが、相手の「寒さ加減」「ドン引き度」が分からないと、コミュニケーションが次第に薄くなっていくことは容易に想像されます。「オタク」であることは個人の自由なので全然構いませんが、それを表現する時には、相手の「反応」を見極めなければなりません。大体、コレクターとか趣味に熱中している人とかは何がしかオタク的です。
ただ、ここで重要なことは「マイナス反応」に敏感になることも大事ですが、それ以上に「プラス反応」に敏感になる必要があるということです。話題が豊富で人を喜ばせることが得意な人でも、決して100発100中なのではなく、日常的に「ネタだめし」を行なっているのです。家族や友達との会話の中で、「これ、おもしろいよな~」と思いつつ話してみて、「あれ、思ったほどウケないな~」とか「やっぱ、笑うじゃん!」とか、相手の反応を見ているわけです。
さらに人前でしゃべることが最初から得意な人はいませんが、こうした「ネタだめし」を頻繁にしている人は予行演習をしているようなものですから、「これとこれで仕掛けてみよう」と考えます。いわゆる「聴衆の心をつかむスピーチ」というものも自然にそうなるのではなく、「そうしよう」と思っているからそうなるのです。もちろん、「想定の範囲外」でウケることも外すこともあるわけですが、それもまた1つの「ネタだめし」となって、「次こそは」と場数を踏んでいくのです。
実は「話す自分」「しゃべる自分」と共に「それを客観的に見る自分」が必要なのであり、いわゆる「ボケキャラ」の人も最初からそうなのではなく、「ボケた時に皆が笑ってくれた」というプラス体験が何度かあったから、「自分はボケキャラ路線で行こう!」と決めたのです。まれに正真正銘の生まれつきと思われる人もいますが。客観的にボケている自分を見て、「自分から見てもおもしろいじゃん」という見方がちゃんと出来ているからこそ、安心してボケていられるのです。さらに相手の反応をフィードバックさせて、ボケを洗練させていくのが本物でしょう。
ちなみに相手の「プラス反応」に注目することは、営業でも重要です。営業はビジネスの基本なので、誰もが経験すべきですが、そうかといってすぐに売上が作れるわけもなく、実績の前にはその何十倍もの否定を覚悟しなければなりません。ひどい言葉を投げかけられたり、成約まであと一歩のところまで迫りながら、「やっぱり今回はいいです」となることもしばしばです。そこでお客の「マイナス反応」をいつまでも引きずって、「ああ、何で売れなかったんだろう?」「どこが悪かったんだろう?」と落ち込むわけですが、これが何十件も続くので、メンタルがやられます。実は売上をコンスタントに出している人は、お客の「マイナス反応」には目もくれず、「プラス反応」にのみ注目して、「どうして売れたんだろう?」「ここが響いたのかな?」などと考えていたりするのです。
例えば、ある車のセールスマンが駆け出しの頃、何か月も全然車を売ることができず、絶望の余り、自殺まで考えたほどですが、やっとこさ売れた時のことを振り返ってみると、大体「150回に1回」の割合で車が売れることに気づきました。それで、それまではお客の「マイナス反応」を食らうたびに「どうして売れないんだろう、あ、また売れなかった、また今度もだ」とばかり思っていたのが、「149回のノーを通じて、1回のイエスが現れる」(これをプロダクション・ラインと言います)ことに気づいてからは、逆に「早く149回断られないかな」と「ノー」を待ち遠しく思うようになったというのです。プラス反応に注目していくと、マイナス反応も肯定的に受け入れられるようになり、ベスト・セールスマン、スーパー・セールスマンとして知られるようになったのです。
あるいは、65歳にして無一文状態から再出発したカーネル・サンダースも、1009回断られて1010回目に契約にこぎつけ、ケンタッキー・フライドチキンを創始しました。現在では世界中で約2万店舗に拡大しているのですが、彼もそれまで自分のフライドチキンを「おいしい!」と言って食べてくれた人達の「プラス反応」が絶対的自信の根拠となっていたのでしょう。