②素朴な疑問を大切にする
ところで、質問するにしても、「こんなこと聞いたらバカにされるんじゃないか?」とか「自分が何も分かっていないことがバレちゃう」などといった不安が起きたりするものですが、ここは「素人」に徹しましょう。「何も知らない立場」で「その場で始めて聞いたこと」として、「1から10まで質問する」つもりでいるのです。アメリカの新聞なども「全く知らない人」を想定して、1から10まで説明することを基本としています。
しかも、1回2回聞いたぐらいでは理解できないことの方が多いのですから、何度も質問しましょう。「ごめん、これ、前も聞いたんだけど、やっぱりよく分かんない。結局、どういうこと?」と聞けば、「しょうがないなあ~」などと思っても、それでもまた説明してくれるでしょう。
問題なのは「分かったような気になる」「分かったフリをする」ことの方です。相手は当然理解してくれたものと思いますから、それを前提として話を進めていってしまいます。大体、「素人」ならいきなり新しい話を聞いてすぐに本質を理解できるわけないじゃないですか。むしろ素人ならではの「素朴な疑問」を大切にして、相手に率直に質問した方が、答える側としても「ああ、これは当然だと思っていたけどそうじゃないんだ」「こういう風に説明しても分かりづらいんだ」ということが分かるので、図に描いてくれたり、例え話を交えてくれたり、あれこれ工夫する余地が見えてくるのです。相手にとっても勉強になるので、教えてもらう立場でありながら、相手にプラスを与えることも出来るわけです。
大体、偉大な発明・発見というものも、稀代の叡智を結集して、というよりは、素人の素朴な疑問から始まっていることが多いものなのです。
ところで、「素朴な質問」は「鋭い質問」ともなり得ます。例えば、数学の質問で「どうして、三角比の単位円ではx軸とy軸にそれぞれ1を取るんですか?」と言ったとすれば、「おー!いい質問だ」といった反応が返ってくるかもしれません。なぜなら、この質問をした人は「単位円」というスーパー・アイデアの1つを理解する入口に立っていることが分かるからです。「教える心」に火をつける質問と言ってもいいかもしれません。
「そりゃあねえ、こうして角度θを置くと、三角比の定義からcosθはこうなってx座標になるでしょう。それでsinθはy座標になるじゃん!」
「???」
「だからさあ、分母が1になるでしょ、それでさ、こうなるじゃん!」
「何でそんなに突然、テンション高くなるんですか?」
実に「いい質問」は「答そのもの」と表裏一体なので、「いい質問」は相手の心に響いてしまうのです。アインシュタインは「もし私が1時間後に殺されるとしたら、最初の55分間は、適切な質問を考えることに費やすだろう」と言ったそうです。聞く人が聞けば、「質問」の内容だけで、今どこまで分かっているかはもちろん、これから伸びるかどうかまで、手に取るように分かってしまうものなのです。