自分がこれまで本業で培ってきた技を活かして皆さんのお手伝いがしたい。そしてあわよくばお小遣いがほしい。そう思って始めたこのサービス。皆さんからのご依頼を観ていると、とほほ、と思ってしまうときがよくあります。
それは、動画のポスプロ(「ポストプロダクション」の略。編集〜テロップ入れ〜音効などの完パケへ向けての作業のこと)を皆さんがあまりに簡単なことのようにイメージしているんちゃうかなと感じたときです。
いや、めっっちゃ大変なんです、正直言って。
この機会に、我々が放送業界で映像を作るとき、だいたいどのぐらいの時間がかかっているかご紹介しましょう。
「一週間後に放送」は忙殺レベル。
報道などでその日起きたニュースをカット編集してスタジオでテロップ生づけ(放送するときに文字を重ねること)、ナレ生読みといういわゆる「撮って出し」のものもありますが、基本的に放送される番組は撮影した素材を編集してテロップやタイトルなどの効果をつけ、BGMやSE、ナレーションなどをミックスするというポスプロを経て放送されます。
ロケ当日までどのような準備が必要かはまた別の機会におくとして、ロケ後の素材をSSDなりHDDに取り込んでからは主にディレクターの個人作業になります。複数カメラが回っている場合はそれらを編集ソフト上でシンクロさせ、まずは明らかにNGの箇所を刈り込んでいきます。
次にナレーションを挿入する予定の箇所に使う映像を選び、仮ナレに合わせて並べていきます。また思ったより出演者コメントが冗長でわかりにくいところはナレーションに置き換える判断をし、同様の作業を行います。出演者のコメントに映像を重ねたほうがわかりやすい場合はその映像も選んで重ねます(いわゆる「インサート」)。
と、同時に放送時間(いわゆる「尺」)に合わせなければいけないので、切るべきところ、残すべきところを整えてゆきます。今やっているコーナーだと18分前後のVTRを2〜3時間前後の素材からつなぎますが、素材量の多さは映像の性質によって本当にまちまちです。
だいたいの内容が固まったら放送局の責任者(「プロデューサー」。漫画の編集さんのようなもの)にアポを取り、隣で仮ナレを映像に合わせて読みながら観てもらいます(「プレビュー」)。コンプラ的な部分や傷ついたり怒る人がいないかもこのときにジャッジしてもらいつつ、より内容が効果的に伝わり、テンポよく観られて視聴者の興味が離れない演出を協議します。
再び内容の直し編集をしてプレビュー、ということを数回繰り返すと、テロップやBGMはまだつけられていないけれど映像の並びとしては一本化できた、という「白」「白完パケ」ができあがります。ここまでで台本だと4〜5回の直しが入っています。
編集の早さにはものすごく個人差がありますが、自分の感覚としては今より若い頃の方がひとまず一本にしてしまうのは早かった気がします。歳を重ねて選択肢が増えるほど時間がかかるようになっています。だいたい一本つなぐのに
朝から晩まで取り組んで最速3日〜1週間はかかります。3日で、というのはほぼろくに休憩も取らず、食事も編集しながら、というレベルです。
でも実はここまでの映像をどうつなぐか、という作業がVTRの面白さをほぼ90%決めてしまっていて、この後のテロップ入れなどで持ち直せることはあまりありません。
まだまだ作業はかかる。
白ができたら、このできあがった白素材とプロジェクトファイルを持って編集室・編集スタジオさんに行き、冒頭からテロップをつけてもらいながら体裁を整えていきます。
テロップは事前にテキストで書き出してスタジオに送っておき、あらかじめ作成しておいてもらいますが、当日編集しながら担当スタッフが作ってゆくパターンもあります。テロップの枚数はいわゆるフルテロップで1分あたり10枚はあります。自分の場合18分尺のVで200枚越えが多いです。
この編集が一日かかることはザラです。こないだは13時から取りかかって22時終わり。9時間かけて18分のテロップ入れだったので、1分テロップ入れするのに30分かかる計算。妥当だと思います。
そしてテロップ入れができあがると(「画完パケ」)音効さんに持っていって面白くBGMと効果音を入れてもらいます。これがまた一日以上かかります。1時間以上の番組だと2〜3日かかります。
音効さんが音をつけてくれるのと同時に、ナレーターさんを呼んでナレーション録りも行います。これは早ければ30分ぐらい〜長くて半日といったところ。
このナレーションと現場音、BGMやSEなどのバランス取り(「MA」。マルチオーディオの略)が終わると晴れて完パケ。
でもだいたいこの音効作業の間にテロップミスが見つかったりしてそのままスタジオに直行、ということも少なくありません。ミスしたらあかんねんけど、人間どんなに注意してても見逃すときは見逃すので、このときに見つかればラッキーぐらいの気持ちです。
なんやかやあって、やっとオンエア。
こんな感じで、ロケ前にもかなりの準備時間がかかっているので、無事オンエアされたときの解放感はひとしおです。ビールがうまいです。
で、ですよ、上記のような業務内容をつらつら書いたのは、ひとえに映像が撮影されてからできあがるまでの間に何が行われているか、皆さんに改めて理解してほしいと思ったからなんです。
その作業に対して、マジでそのお値段? 自分らの仕事、値打ち低いなー、と思うことがけっこうあるんです。
お願いです、僕らの仕事を認めてください。
もちろんハイアマチュアの人や動画編集が趣味の人がその値段でやりますって言うなら僕は何も文句は言いませんが、たとえば「5000円で15分のV5本つないでくれ、フルテロップでBGMもつけてくれ」っていうのは本職からすると失望しかありません。
一本1000円でしょ、だって。それで15分作るんでしょ。朝から急いでやって午前中に白までつないで、午後からテロップ作成して載せて、夕方からMつけて、って考えるとどんなに急いでも1日はかかると思うので、それでは日給1000円になってしまいます。
だから自分の場合は最大限譲歩して、放送のときよりは作業をだいぶ簡略化して、スタッフも外注せず自分ひとりでやるとして、それでも1分つなぐのに2000円は欲しいです。いや、最低でも1000円かな……。高いと思うでしょ? でも朝から晩まで働いて15000円。ちょっといいアルバイトぐらいなんです。
あとはやっぱりお値段をケチると、それなりのモチベーションでしか他の動画編集者も動かないと思うんですよね。1本15分、必死につないで1000円。真剣にやるほうがバカバカしい。初心者が練習でやってみてお金もらう、OJTみたいな、生徒がハサミを持つ専門学校付属の美容院とかならわかるけど。
それからなるべく勘弁してほしいのは「修正回数は無制限でお願いします」という要求。もちろん気に入らなくなったら直したい、そのたびにお金を取られるのはイヤ、その気持ちはわかります。でも逆の立場になってみてください。永久にタダで直し続けるの、いざ自分がやるとしたらどうですか? 自分のためにじゃないですよ。人の動画を無償で直し続けるんです。その間一切対価は支払われないってまあまあツライです。
もちろんこういうことを言う人が根に持っている不安は理解できます。気に入らないものを作られて、直すたびにお金を取られるけど一向によくならない。これじゃまるで詐欺だ、ってなるのがイヤなんですよね。わかります。でも、ある種、旅先で病院に行って医者に診てもらうのと一緒なんです。初めて会う先生がどんな先生かわかりませんよね。でもそこでこちらの腕と誠意をある程度信用してもらわないと、永久にいい関係は築けません。簡単な修正なら無料でやりますので、気さくにやり取りさせていただけると嬉しいです。
まあこれは僕個人の意見でしかないので、こんな自分を高く売るヤツはキライ、他の人に頼もう、と思うのは皆さんの自由です。でも僕個人としては昔からずっと、動画編集の地位がもっと向上してほしいと願っています。今や動画メディアが世の中に溢れすぎていて、その値打ちが完全にインフレして底を打っています。もっと値打ちを認めてほしいと切に願っています。
何か愚痴っぽくなっちゃったので本日はこのへんで失礼します。でも真剣に考えて本音を書いたつもりです。一生懸命やってるんで、もしよかったら気に留めていただいて、何かの機会の折にはお声がけくださると嬉しいです。そのときはお値段以上の映像をきっと納品させていただきます。
これから暑さが本格化しますが、皆様しっかり水分補給して、体調にはくれぐれもお気をつけください。ロケが地獄の季節到来です。