スキルとノウハウ、「できる」「上手くできる」の違い。

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このサービスのキャッチコピーは「スキルを売る買う」ですが、長年働いていてつくづく、スキルとノウハウは違うよなあ、と思っています。そして自分は後者を重んじています。

スキルとノウハウの違い

これは全世界共通の言葉の定義というわけじゃなくてもしかしたら自分の独断と偏見なのかもしれないけれど、スキルという言葉は単純に何らかの機械や道具、アプリケーションを使いこなせる「技術」を指す一方、ノウハウはそのスキルを長年活用してきた結果蓄積された経験からなる、上手く結果を出すための「秘訣」だと思っています。

映像業界は他のIT関連なんかに比べるとたぶん相当暢気な業界で、技術革新も日進月歩というわけでもないし、日々勉強していないと遅れる、というほどでもないのかもしれません。でもそれなりに新技術や新たなツールの投入はあって、そこは使い方=スキルを学ばないとついていけない場面もそれなりにあります。とはいえ最近思うのが、スキルをただ学んだだけでは上達・向上は必ずしも得られないっぽいよなあ、ということです。

おっちゃんの負け惜しみかもしれないのでまあこいつ何言うとんねんと思う方は笑い飛ばしてくださっていいのですが、要はカメラや編集ソフトをどれだけ手足のように使いこなせたからといって、人の心を動かす映像を作れるようになるとは限らない、とときどき強く思うのです。あくまで経験を積んで(それは何も仕事の経験だけではなく人生のあらゆる局面での成功・失敗・挫折を繰り返して……とまで言っちゃうと大げさか)こそ、観る側に訴える映像が創れるんじゃないかなと思っているんです。

ちょっと例を挙げます。

「え〜っと」の意味。情報と情緒。

映像の中で誰かが言葉に詰まって「え〜っと」と言っているとします。放送の場合時間は決められていますから、テンポよくつなぎたいと思ってこの「え〜っと」をカットし、言葉の間を詰めたとします。これをやっていい場合といけない場合があります

例えば学会発表などの単なる事実関係の説明にとどまる場合はこの「え〜っと」を切っても特に支障はありません。むしろ聞きやすくなって理解が深まります。しかし、誰かが言いにくいことを一生懸命勇気を振り絞って口にしようとしている、という場面で同じことをやったらどうでしょうか? 躊躇いなく易々と発せられた言葉に感じられて重みがなくなり、説得力に乏しくなってしまいます。つまりはその映像が価値を失います。

情報はコンパクトに尺を詰められます。でも情緒は詰められないのです。

ただ単に動画の編集スキルだけを積んでカット編集がスムーズにできるようになったとしても、上記のような違いに最初から気づくことはできるでしょうか? 僕は難しいと思います。

たぶん、我々がプロとして継続して仕事をもらえているのは、そういうノウハウの部分まで総動員して映像を仕上げているからこそなのです。そこはちょっと偉そうですけど、自負があります。どや、昨日今日始めたばかりの若造とちゃうねんで、と。

それからこんな細かな気配りも……。


次に、画面に出すテロップで思うのが、WEBの動画界隈はみんな忙しくて時間がないのかもしれないけど、わりともう雑だな(わあ、ごめんなさい石を投げないで)ということ。字詰めとかサイズのメリハリ調整とか、してますか?
トイプー02-1 字詰めの話.png

これは仮に作成したものですが、上と下で読みやすさの違いはありませんか?
(フォントの限界のせいで漢字とカナは別フォントにしています)

そう、上がまんま等間隔に字を打ったもの。下が一文字ずつ「カーニング」と言って字間を調整したり、助詞は一回り小さく、カタカナは一回り大きくするなど調整を加えたりしたものです。放送に使われるVTRは、全てではないとはいえこれらの細かな配慮を欠かしません。

というのも、放送で流す映像は、ずっと長い間「一度で見てなるべくスムーズに情報が入ってくること」を第一義に制作されてきました。今でこそHDD録画や見逃し配信サービスのおかげで何度も再生し直したりできるようになりましたが、WEB動画とは違って「一回でパッとわかる」ためのノウハウが蓄積されてきたのです。

こういう、わかりやすくするための気配りも、スキルではなくノウハウの部類に入ると僕は思っています。

気づかれないからこそ意味がある。

こういう工夫や気配りは気づかれないからこそ効果があります。そこが悪目立ちしたり、加工や調整の跡が気になるようでは本末転倒です。いかに違和感のもとやノイズとならぬよう自然に施すかが重要です。

何が言いたいかというと、ゆうてわてらこっそりめっちゃ考えてるんだっせ、ということです。だから「動画制作ってコストがかかるけど一体何のお金やねん、ほぼほぼ言い値やんけ、くそ」と皆さんは思うでしょうが、どうか大目に見てください、ということなんです。まあ、そこまでいうと卑屈すぎるかもしれませんけど。

あるいは、上記のようなところを皆さんも目利きできるようになって、この業者さんはここまでちゃんとやってくれたはるわ、と気づけるようになってくれたら、我々も正当な対価をいただけるようになっていくのかもな、と思います。

また長々と書いてしまいました。ヒマなんです。お仕事ください。

こんなふうに、気づいたことを今後もランダムに書き連ねていけたらなと思います。押忍。










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