いい映像(動画)を制作するためにとっても大事、なのに意外とみんな軽視していること。

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地上波放送のVTR制作を生業にしています。おかげさまで担当しているコーナーは好評で視聴率もよく、スタッフの雰囲気も和やかでモチベーションも高いのですが、TVというメディア全体を俯瞰するとあまり状況は芳しくありません。皆さんもお察しの通り全体的な視聴者は減少傾向で「オワコン」などと言われてしまっています。さみしい限りです。

まあその理由はいろいろありますので詳しくは別の機会に書くとして、ひとつの理由として「プロなのに映像がキレイじゃない」と思うことが多くなったことが挙げられると思います。視聴者さんが言葉にしていちいちそう感じているわけじゃないにしても、どこかで映像のクオリティの劣化が視聴者離れにつながったことは否めないと思うんですよね。

なぜ、映像がキレイじゃなくなったか。

これはもうお金の話です。ここ20年近く、プロのカメラマンを雇う人件費、プロの機材を使う機材費をケチっているからです。というのも技術の進歩で最近はそれこそスマホでも4K相当の映像が撮れます。これがよくなかった。たまにロケ番組でスタッフが見切れて(※)いるとき、カメラマンが映り込んでいることがありますが、肩に担いだ大きなカメラではなくいわゆる「デジ」という、ひとまわり小さなビデオカメラを使っていることが多くないですか?

あれは本来肩に担ぐものよりも性能は劣るもので、大きなものを担ぐカメラマンだけでカバーしきれないときにサブとして回すものだったんです。ところが映像としては(よく見るとそんなことないんですが)そこそこ見るに耐えるものが撮れる。するとロケの費用をケチりたい制作スタッフはカメラマンたちを発注するときに「デジでいいから安くして」と値段を叩くようになったんです。これひどい話で、カメラマンは機材こそ軽くなったとはいえ、一日の労働内容は変わらないわけです。普通自動車で稼いでいた運転手を「軽でもいいから安くして」と言っているのと同じなんです。

それでも不景気の昨今、カメラマンさんたちも渋々引き受けざるを得ない、そういう状況が地デジ普及以降、ずっと続いているわけです。

(※ちなみに「見切れる」を誤用している人が多いですが「被写体がフレームからはみ出た」という意味ではなく「映るべきでないものがうっかりフレームに入り込んだ」と意味です。間違えないようお気をつけて)

さらに追い打ちをかけるように。

それでもカメラマンを雇っているうちはまだマシで、次第にADにカメラ持たせて「ちょっとお店の外観と店内だけ撮ってきて。設定はフルオートでいいから」なんてことが横行するようになりました。もうこうなると見てられない。映像はガタッガタ。かろうじて映っているものが理解できる程度のこともあります。そういうものを、僕ら地方の局がやるんじゃなくて東京の全国ネットの生放送情報ワイドみたいなののVTRでやっているんです。

そりゃあお客さん離れますよね。ただでさえ観なくても損しないコンテンツなのに、観てもらうための努力を自ら放棄しちゃってるんですから。

で、ですよ、翻って猫も杓子も解像度だけなら鮮明な映像が撮れるようになり、動画サービスが百花繚乱の今、これが意外とできていないせいでクオリティが下がっている、という惜しい映像もたくさん出てきています。今回はあるポイントに気をつければグッと映像のクオリティが上がる、という単純明快なコツをお教えします。

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あるものを使えばプロ顔負けの映像に!

意外と皆さん「なくてもいいだろう」「安物でじゅうぶん使えるでしょ」と投資してこなかった大事な機材があるんです。

ズバリ、それは「ビデオ三脚」です!!

マニアックな用語ですが、「フルード雲台のビデオ三脚」を買ってください
(できればアルカスイス互換、雲台にボールレベラーがあればなお楽)。フルード雲台というのはカメラを載せて上下左右に動かすところにフルード(液体)が封入されていて滑らかに動かせるものです。
値段は安ければ2〜3万円程度、よければ10万円以上します。

この三脚、そして三脚を使ったカメラワーク、これこそ全国キー局のアホADが軽視して使わず、映像のクオリティをダダ下げした、とっても重要なアイテムと技術なんです。プロのカメラマンを雇えばちゃんと三脚に乗せて撮ってくれたのに。

まずは店舗外観でも街の全体を見せるインサートでもちゃんと三脚を使って水平をとってキレイに見せること。テーブルの上の料理やスイーツは言うに及ばずです。

最近のカメラは手ぶれ補正がよく効くので手持ちでもしっかり押さえていれば大丈夫? いや、だからそういう「キレイな映像を撮る手間」を惜しむなっていう話でもあるんです。そりゃね、いちいち三脚を据えて構図を決めて高さや水平を調整して、ってのはめんどくさいですよ。でもそこを面倒がらずに丁寧にやるってことがクリエイターにとっての最低限のこだわりじゃないですか。

もちろんそんなの全然できてなくてもトークと人柄と編集テンポで見せる映像も巷にはあふれています。でもじゃああなたはそっちで勝負しますか? って話なんですよ。そして、仮に「そっちでいくわオレ」っていうウェイな貴方でも、三脚を使うことのデメリットは逆にありません。むしろ観やすい映像になってPVも増えて、プラスしかない。

リグ? ジンバル? その前にまず三脚でパン・チルト・フィックス・ズームイン&アウト(※)をマスターせよ! と言いたいです。ズームバックしながらのパン、なんてのも三脚ありきのテクニックです。

(※ズームとドリーの効果の違いについてはまたいつかご説明します)

以下は自分が実際にまあまあいい三脚で撮影したサンプルです。

カメラが少しぐらい安くても三脚がよければグッと見栄えする映像になるし、その逆も然りで、最高級のカメラを持っていてもガタガタのやっすい三脚では宝の持ち腐れになってしまうんです。

この夏、もっと映像の腕を磨きたい、という人は、ちょっと奮発してでも、しっかりしたビデオ三脚を買ってください。もうとっくに持ってるよ、という人は失礼しました。

みなさん、手間を惜しまず撮影して、よりよい映像ライフを送ってください。









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