本音は質問力ではなく、安心感から出てくる

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コラム
 「何かあったら言ってね」
そう言われても、言えないことがあります。

本当は苦しい。
本当は不安。
本当はわかってほしい。

 でも、それを言葉にできない。
人は、話したくないから話さないのではなく、
この人に話しても大丈夫だと思えるまでは、本音を出せないことがあるのだと思います。

 私は看護師として長く働く中で、そのことを何度も感じてきました。

 患者さんと関わっていると、言葉では「大丈夫」と言っていても、
言葉になっていない何かがそこにあることがありました。
 表情が少し曇っていたり、目線が泳いでいたり、いつもより反応が鈍かったり。

 言葉と、そこにいるその人自身が、少しだけズレて見える瞬間があるんです。

 そんなとき、私が思っていたのは、

「この人はまだ本音を言える状態じゃないんだな」ではなく、
「まだ本音を言える関係性ではないんだな」
ということでした。

 それは、私がまだ信頼を得られていないのかもしれない。

 その人自身が、これまでの経験の中で心に傷を抱えているのかもしれない。

 あるいは、私がちゃんと手を差し出せるところまで届いていないのかもしれない。

 だから本音が出てこない。
そう思っていました。

 本音は、相手の中に「あるか、ないか」ではなく、
この人に出しても大丈夫かどうか?で、表に出てくるかどうかが変わるのだと思います。

この人なら、ちゃんと見てくれるかもしれない。
この人なら、雑に扱わないかもしれない。
この人なら、自分のために動いてくれるかもしれない。

 そう思えたときに、ようやく少しずつ、本当の思いが言葉になっていく。
だから私は、足を止めて話すことを大事にしていました。

 忙しい現場では、つい立ったまま会話をしてしまうこともあります。
でも、本当にその人のことを知ろうと思ったら、それだけでは足りないことがある。

 だから、横に立つのではなく座る。
少しだけでも時間を取る。
その人に意識を向ける。
 そして何より、本当に聞くことを誰よりも意識していました。

 話の内容だけではありません。

 表情、間、声のトーン、視線、沈黙、ちょっとした動き。
そういう言葉にならない部分も含めて、
「この人は何を伝えようとしているんだろう」と受け取ろうとしていました。

そこで大事にしていたのは、何でも共感することではありません。

 全部に「わかります」「そうですよね」と返すことが
正解だとは思っていませんでした。

 むしろ、必要なのはフラットに受け止めることだと思っていました。
感情に飲まれすぎず、冷たくもならず、
冷静な目で見ながら、その人が本当は何を言おうとしているのかを
丁寧に受け止めていく。
 そうやって関わっていくと、少しずつ相手の言葉が変わってくることがあります。

 最初は「大丈夫」と言っていた人が、
本当は不安だったと話してくれる。

 平気な顔をしていた人が、
実はずっと苦しかったと打ち明けてくれる。

 怒っているように見えた人が、
本当は寂しかっただけだったと見えてくる。

 そういう瞬間を、私は何度も見てきました。
だからこそ思うのです。

 人は、聞かれたから本音を話すのではない。
この人になら話しても大丈夫だと思えたときに、やっと本音を話せる。

 これは看護の現場だけの話ではないと思います。
家族でも、職場でも、夫婦でも、親子でも、友人関係でも同じです。
人間関係で苦しくなるとき、表面では言葉のやり取りができていても、
本当の思いはずっと奥にしまわれたまま、ということは少なくありません。
 そして、本音をずっと飲み込んでいると、人は苦しくなります。

我慢が続く。
言えないことが増える。
わかってもらえない感覚が積み重なる。
それはやがて、心のストレスになっていきます。

 私は看護の現場で、そういう姿もたくさん見てきました。
だからこそ、このことを書きたいと思いました。

 本音を話せない人が悪いわけではない。
うまく聞き出せない人がダメなわけでもない。
ただ、本音というのはそれだけ繊細で、
信頼や安心感があって初めて出てくるものなんだと思います。

 だから、人の本音を知りたいと思ったときに大事なのは、
質問を磨くことだけではありません。

 その前に、相手が安心して言葉を置ける関係性をつくれているか。
自分はちゃんと相手の前で足を止められているか。
本当に聞こうとしているか。
決めつけず、フラットに受け止められているか。

 そこが、とても大事なのだと思います。

本音は、質問力ではなく、安心感から出てくる。

 私は、その感覚を大切にしています。
そしてきっと、人が少しでも生きやすくなるためにも、
「本音を言える関係性」は、とても大切なのだと思っています。
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