「うちの子、成績が下がってきてるわ!」と不安になることは多々あると思います。
でも、実はテストの点数だけではなく、どの問題でなんと答えているかまで見てみると「わかってないわけじゃない」と気づいたりします。
今回は塾講師をしていた時に出会った生徒の算数のお話をしようと思います。
親御さんからの希望は下がってきた成績を上げること
塾講師をしていると、お子さんにどうなってほしいのか親御さんの書いた書類を読むことがあります。
私は生徒3人に対して先生が1人の個別指導塾で教えていたのですが、その書類を読むといかにも勉強ができない子、という印象でした。
その日は算数で、面積のテストを復習するために持ってきてくれていました。
点数は70点から80点くらいだったと記憶しています。
確かに点数は少し低め、でも答案を見ると「面積=縦×横」はわかっている様子でした。
少し複雑な形は、計算しやすい四角形に分けるということもわかっている。
そして式まであっているのに計算ミスをしている。
「もしかして、テスト簡単だった?」
授業の最初に解く小テストのスピードも速かったため、そのように聞いてみました。
その生徒さんは大きく頷きました。
「簡単だった!すぐ終わったよ!」
と言うので、よくよく聞いてみると15分ほどで解いたとのこと。
小学生なのでテスト時間は45分あったはずです。
なんと、3分の1の時間しか使わないで解いたのですね。
しかもその後は暇で寝ていたと。
このやりとりで、この子は授業の内容がわかっていないのではなく、テストの点の取り方がわかっていないのだとわかりました。
「ゆっくり解いて、時間が余ったら見直ししようね。」
この生徒さんに必要なのはこの言葉と、ゆっくり解く練習でした。
もし、ご両親がこのことに気づいていたら塾に通わないで点数が伸びた可能性もあります。
「ここに気づくのも塾講師の役目よ!」と言われたらそれまでですが。
本人が困っているのは問題が解けないからではない時もある
面積の応用問題は、ちょっと複雑な形を二つの四角形に分けて計算するのが王道なのですが、この生徒さんのテストの問題もその形でした。
「分けると良いんだよ。」
と言うと、
「わかってるよ。でも、どっちがどっちの計算だったか忘れちゃうの。」
と返事がありました。
「じゃあ、お名前つけてあげると良いよ。こっちの四角は『あ』さんで、こっちの四角形を『い』さんにしたら?」
ホワイトボードに『あ』『い』と書くと、生徒さんの目がキラキラしました。
「その手があったか!」と感動しているように見えました。
解き方はわかっているので、そこからはどんどん問題を解いていきました。
時々、「ゆっくりね。」「先生が来るのが遅かったら見直ししててね。」と付け加えるのを忘れずに。
この生徒さんは応用問題の解き方はわかっているのに、出した計算結果がどちらの四角形の面積か見失ってしまっていました。
この課題は、名前をつける方法で解決されました。
どこで引っ掛かっているかはよく話を聞いてみないとわからないものですね。
「知ってるよ!間違っちゃっただけ!」
上記のセリフは小学校1年生の男の子のものです。
彼はテスト用紙に書いた答えが間違っていても、頭で知っていれば良いと思っているのでしょう。
テストでは間違ってはいけないとわかっていないのです。
会話をしていると、こんな面白い認識の違いに気づかされます。
子どもの発達の勉強をしたことがありますが、子どもは自分の頭の中で考えていることは親と共有されていると思っている時期があるようです。
幼稚園や保育園の話をしている最中に
「なんで知らないの!」
と怒られた記憶がありませんか?
「いや、パパもママもそこにいなかったから!」と突っ込みたくなるのですが、
「自分の知っていることはパパとママも知っている。」と本気で思っているのです。
この男の子ももしかしたらそう思っているのかもしれません。
「テストでは間違っちゃったけど、僕が本当は知ってるって先生や親はわかっている。」と。
だから、テストで間違えたらいけないと気づいていないのかもしれませんね。
「授業を理解する」と「テストで点を取る」は違う技術。
特に小学生は、わかっているのにテストで間違えることが多いです。
解き方が雑だったり、頭の中が共有されていると思ったりと点にならないことが多々あります。
①問題の解き方(授業の内容)を理解する
②テストで点が取れるように解き方(ゆっくり丁寧に解く、見直しをするなど)を練習する
この順序で訓練をすると点数が伸びていくはずです。
①の段階でわかっていないこともありますし、②で失点していてもったいないこともあります。
お子さんがどこでつまずいているのかテストの答案を見てあげてください。
特に小学生のお子さんはそれだけでグンと点が取れるようになったりします。
私がお伝えしたいのは、
「ゆっくり丁寧に解いてごらん。解き終わったら見直しもしてごらん。」
と伝えるだけで点数が伸びる子がいるということです。
「ほら、わかってるじゃん。点数にならないのはもったいないよ。」
と言ってあげてください。
きっと笑顔が返ってきますよ。