それはもう10年以上前のこと。
そのころの我が家は埼玉県のさいたま市に住んでいました。
まだ娘も幼く保育園に通っていました。
東京から転居するにあたり、通勤や保育園の都合もあって転職したのがその会社でした。
道路の補修をしたり、白線(横断歩道や道路に描かれている矢印など)を描いたりする会社に就職が決まりました。
自宅とも保育園とも近く、転居早々に就職が決まったことにほっとしていました。
今はどうかわかりませんが、当時は道路の補修工事などは自治体の管轄で、その工事を請け負うためには自治体に本社か支店がある必要があり、入札するためだけのプレハブ小屋のような小さなお留守番事務所(支店)でした。
自宅と会社は徒歩でも数分、会社と保育園は自転車で10分ぐらいの距離だったのですが、保育園への送迎の関係で、大きな三角形を描くように自宅→保育園→会社で通勤していました。
一旦自宅とも会社とも離れて保育園に行くので、天候が悪かったりすると大変でした。
その日もおもに電話番と簡単な図面引きなどをしていたと思います。
視線を感じて見上げると、プレハブの高い位置に小窓があったのですが、そこから男の人が覗いていました。
気味が悪く、すぐに上司に訴えて、小窓にカーテンをつけてもらいました。
ちょうど同業のやはり女性ひとりのお留守番事務所に強盗がはいったばかりだったので、いつもは腰の重い会社がすぐに対応してくれました。
ある日、娘の具合が悪くて会社を休んだのですが、日時指定の荷物が届くのでどうしても受け取っておいて欲しいとのことなので、仕方なく熱のある娘をつれて1時間だけ出社しました。
いつもは保育園から坂を下って会社の裏側に到着するのですが、その日は自宅から会社に向かったので、会社の表側に自転車を止めました。
会社の表側から見ると小窓のあるほうは駐車場になっていて、会社のある土地より30センチぐらい低くなっていました。
そこでようやく一般的な身長の男性では小窓から中を覗けないことに気がつきました。
小窓の高さは、一緒に働いていた男性社員や上司でもちょっと台が必要な高さにありました。
椅子にのってカーテンをつけてくれたので確かです。
あの男が覗いたのは1回だけでした。
それがカーテンをつけたからなのか、本当に1回だったのか、そもそも誰だったのか、何のためだったのか、生きていたのかさえ、今となってはわかりません。
気味の悪い体験でした。