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『フツウの僕』

何をやっても、僕は平均で。
人より優れた点なんて一つもなくて。
見た目も性格も一般的。大多数の中の一人。
でもそれはある意味いいことだった。
一般的ということは周囲に簡単に溶け込めるということ。
変に目立つことはなく、平凡だからこそ平穏な毎日をおくれる。
――そう、僕が一人ならば。

僕が一般の中に入り込むことが出来ない理由、それは己と瓜二つの肉親。
年の一つ離れた兄の存在だ。
その兄は容姿もよく、文武両道。
万人受けするような性格の持ち主で嫌な噂も耳にしない。
正真正銘、出来た人間だ。

そんな兄の下に生まれた僕。
秀才な兄と平凡な弟。だからと言って、兄が僕を邪険に扱うことはなかった。
それだけ中身もよく出来ていた。
そんな兄に対し僕も特に嫌な気はなかった。
――あの日までは。

僕は一人の女性に一目惚れした。
彼女は慎ましやかで、眉目秀麗。正しく自分とは釣り合わない人物だ。
いつもなら、一目惚れしたとしても自分では無理だとすぐに身を引く。
しかし今回は違った。
彼女は、己の想い人はあろうことか、自身の兄に恋心をよせていたのだ。
瓜二つの兄に。


――おはよう。あぁ、うん。今日は早く帰れるようにするよ。
僕が遅くなると何も出来ないもんね。大丈夫、安心して。
僕はキミが何もしなければ酷いこともしないよ。
……うん。イイ子。じゃあ仕事に行ってくるね。




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