【フリー】ショート台本【1人用】
『主演男優』(男)夢を見ていた。雲1つない青い空。降り注ぐ暖かい木漏れ日。両脚で立っている地面には色とりどりの花々が咲いていて時折吹く風に凛と揺れている。そんな美しい世界の中心に自分はたたずむ。不思議と身体が軽やかで、足を一歩踏み出すとアン・ドゥ・トロワのリズムでステップを奏でた。陽の光が僕を照らし出し、身にまとう純白の燕尾スーツがそよ風に揺れて舞台を色鮮やかな花が彩る。あぁ、なんて幸せな夢なんだろう。僕だけがここにいて、僕だけが踊っている。周りは僕のために、主役をたたせるために輝きを放つ。――この舞台の上では、僕が1番。ボクが『主役』だ。馬鹿にしたやつも、見下していたやつも、ここでは脇役。ボクが仕立て上げた深紅の衣装に彩られ、力なく踊り続ける。あぁ……なんて憐れな――美しい姿なんだ。でも、ボクよりも輝くことは許されない。もっと、もっと紅く染めて、鮮やかで醜い姿で……全てを溶かしつくす。それでも君たちはまだボクを馬鹿に出来るかい?見下すことが出来るかい?……答えなんて聞きたくないけど、言える口だけは残しておくよ。その口で素敵な囀りを奏でてくれ。もちろん、ボクだけのために。『主演女優』(女)夢を見ていた。雲1つない青い空。降り注ぐ暖かい木漏れ日。地面には色とりどりの花が咲き誇り、時折吹く風に凛と揺らめいている。そんな世界の中心に私は立っていた。不思議と身体が軽やかで、足を一歩踏み出すとアン・ドゥ・トロワのリズムでステップを奏でる。陽の光が私を照らしだし、そよ風が身にまとう純白のワンピースをひらめかせ花々が舞台に彩を加えた。あぁ……なんて幸せな夢なのでしょう。私だけがここにいて、私
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