前回は、脚トレが基礎代謝や全身の成長に与える影響についてお伝えしました。
ここまで、フォームの重要性、漸進性過負荷、トレーニング頻度、そして各部位(腹筋・背中・肩・脚)の考え方を一つずつお伝えしてきました。
今回は、これまでの内容を踏まえて、実際にどのようなメニューを組めばいいのか、初心者向けの具体的なプログラムをご紹介します。
「結局、何をどれだけやればいいのかわからない」という方に向けて、私が現場で実際に提案している「週3回の全身トレーニングプログラム」を解説します。
なぜ初心者には「全身法」がおすすめなのか
トレーニングプログラムには、大きく分けて2つの考え方があります。
全身法(フルボディ):1回のトレーニングで全身の主要な筋肉を一通り刺激する方法 分割法(スプリット):曜日ごとに鍛える部位を分ける方法(例:月曜は胸、火曜は背中など)
経験者向けのジムやSNSでは分割法が紹介されることが多いですが、私は初心者には基本的に全身法を提案しています。理由は3つあります。
①頻度を確保しやすい
以前の記事でお伝えした通り、同じ筋肉グループを週2回程度刺激することが筋肥大に効果的だと考えられています。週3回の全身法であれば、自然と各部位が週3回の刺激を受けることになり、頻度の条件を無理なく満たせます。
②動作の習得が早い
全身法では、スクワット・ベンチプレス・ローイングといった基本的なコンパウンド種目を毎回行います。同じ動作を週3回繰り返すことで、フォームの定着が早くなります。分割法で1週間に1回しかその種目をやらない場合、フォームを覚えるまでに時間がかかってしまいます。
③1回の休みが響きにくい
仕事や家庭の事情で1回トレーニングを休んでも、全身法であれば「その部位だけ何週も空いてしまう」という事態を避けられます。分割法で「胸の日」を休むと、次の胸トレまで1週間以上空いてしまうことがあります。継続性の観点からも、初心者には全身法の方が向いています。
全身法と分割法を比較した研究でも、トレーニング経験の浅い人を対象にした場合、両者で筋力・筋肥大の効果に大きな差は見られなかったと報告されており、頻度や継続性を確保しやすい全身法は初心者にとって合理的な選択だと考えられています(参考:Sports(MDPI)に掲載されたトレーニング頻度と筋肥大に関するシステマティックレビュー)。
週3回・全身プログラムの全体設計
私が提案する基本構成は、以下のような流れです。
Day A・Day B・Day Cの3パターンを用意し、月・水・金など中1日空けて実施する
3パターンを用意する理由は、同じメニューを繰り返すよりも、種目に少しバリエーションを持たせることで、刺激の幅を広げられるためです。ただし大きく変える必要はなく、メイン種目は共通させ、補助種目を少し変える程度で十分です。
中1日空けるのは、前回の記事でお伝えした「超回復」の時間を確保するためです。全身を使うトレーニングは回復に時間がかかるため、連日で行うことは避けてください。
Day A:上半身プッシュ中心
①スクワット 3セット×8〜12回(ダブルプログレッション) ②ベンチプレス(またはダンベルプレス) 3セット×8〜12回 ③シーテッドロウ 3セット×8〜12回 ④ショルダープレス 2〜3セット×10〜12回 ⑤プランク 2〜3セット×30〜45秒
Day B:下半身・背中中心
①デッドリフト(またはルーマニアンデッドリフト) 3セット×8〜10回 ②ラットプルダウン(または懸垂) 3セット×8〜12回 ③レッグプレス 3セット×10〜12回 ④サイドレイズ 2〜3セット×12〜15回 ⑤アブローラーまたはレッグレイズ 2〜3セット×10〜15回
Day C:複合バランス
①レッグプレスまたはランジ 3セット×10〜12回 ②インクラインベンチプレス(またはダンベルプレス) 3セット×8〜12回 ③ベントオーバーロウ 3セット×8〜12回 ④フェイスプル 2〜3セット×12〜15回 ⑤プランクまたはレッグレイズ 2〜3セット×30〜45秒
このプログラムの考え方
それぞれの日に、①脚または背中の大きなコンパウンド種目→②胸または背中のプレス・プル系種目→③補助種目→④仕上げの体幹種目という流れを意識しています。
大きな筋肉群を使う種目を最初に行うのは、体力やエネルギーが十分にある状態で、最も負荷の高い種目に取り組むためです。トレーニング後半になるにつれて、徐々に負荷の小さい種目に移行していく構成です。
各種目には、これまでお伝えしてきた原則をすべて適用してください。
メインセットの前にウォームアップセット(メイン重量の半分×10回)を必ず実施する
ダブルプログレッションで、回数→重量の順に伸ばしていく
RPE8〜9.5を目安に、フォームが崩れる手前で止める
最終セットのみレスト&ポーズ法を取り入れる(任意)
種目は6〜8週間固定し、その後バリエーションを変える
どれくらいの時間がかかるのか
このプログラムは、ウォームアップを含めて1回あたり60〜75分程度を想定しています。
「時間がない」という方は、種目数を減らすことよりも、セット間の休憩時間を適切に管理することをおすすめします。コンパウンド種目は2〜3分、補助種目は1〜2分程度の休憩を目安にしてください。休憩を極端に削ると、十分な回復ができず、後半のセットの質が落ちてしまいます。
時間が確保できない日は、①と②のコンパウンド種目だけに絞って実施しても構いません。何もやらない日を作るより、短時間でも基本種目だけ行う方が、長期的な継続には有効です。
このプログラムを何ヶ月続けるべきか
このプログラム自体の構成(種目選択)は、6〜8週間を目安に見直すことをおすすめしています。ただし「何ヶ月続けるべきか」という問いに対する答えは、結果が出続けている限り、変える必要はないというのが私の考えです。
ダブルプログレッションで重量や回数が伸び続けているうちは、同じ大枠の構成を維持して構いません。停滞を感じ始めたタイミングで、種目のバリエーションを変えたり、セット数を調整したりすることを検討してください。
初心者の場合、最初の3〜6ヶ月は「初心者ボーナス」と呼ばれる、比較的早いペースで筋力・筋量が向上しやすい時期にあたります。このプログラムを忠実に実施するだけで、多くの方が明確な変化を実感できるはずです。
プログラムを成功させる3つの習慣
最後に、このプログラムを最大限活かすために必要な、トレーニング以外の習慣を整理しておきます。
①記録をつける:前回の重量・回数を必ず確認し、今回の目標を立ててからトレーニングに入る
②食事を整える:前回までの連載でお伝えした通り、摂取カロリーは基礎代謝を下回らせない。タンパク質は体重1kgあたり1.0〜1.5g程度を目安にする
③睡眠を確保する:筋肉の回復と成長は、トレーニング中ではなく休息中(特に睡眠中)に起こります。7時間程度の睡眠を確保することが、プログラムの効果を最大化する土台になります
どれだけ優れたプログラムを組んでも、この3つの土台が崩れていると、期待した効果は得られません。トレーニング・食事・睡眠は、三本柱としてセットで考えてください。
まとめ
初心者には、頻度の確保・動作習得・継続性の観点から「全身法」がおすすめ
Day A・B・Cの3パターンを用意し、中1日空けて週3回実施する
各日は「コンパウンド種目→プレス・プル系→補助種目→体幹」の流れで構成する
ウォームアップ、ダブルプログレッション、RPE管理など、これまでの原則をすべて適用する
種目構成は6〜8週間で見直すが、結果が伸びている間は大枠を変える必要はない
記録・食事・睡眠の3本柱が、プログラムの効果を最大化する
次回は、「ダンベル1セットあれば十分?自宅トレの現実的な始め方」をテーマにお届けします。
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