占いに翻弄されるコスプレ女

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「ごはん、次いつ行く?」


美華が訊ねる。火水金土が出勤なのは知っている。


「あー次は29かなぁ。それまで出ない」そっけなく答える。


29日、たぶんこのビル全体でハロウィンイベントが行われる。といってもただのコスプレデーだ。当日、3階の店の女の子に呼ばれているのだ。仮装するから来て!と。


3か月間、新規開拓を始めた初日から今まで何度も飲んだことのある子からの誘いだ。しかし、実は今、干している最中。


そうだなぁ、仮名ゆりとしよう。


ゆりは高身長美人なので私のタイプなのだが、まじめで嘘くさい接客が、妙に後味を悪くさせている。ガードが堅いわけでもないのだが、なんというか、途中で白けてゾクゾクしないのだ。おかしな占いの数々が彼女を操っている印象だ。自分を生きてない、そんな感じが伝わってきて、彼女本人に対する興味が失せてしまった。


小さな店の中で干されるのはどんな心境だろう。まぁいい。自分で蒔いた種だし、因果応報だ。


男は男らしくあるべきだし、決して女性にへりくだったりしてはならない。たとえ戦略としてそれを用いたとしても、おそらく良い結果に繋がらないはずだ。少なくとも私はこれで成功した事例を持ちあわせていない。


一旦ナメられたが最後、巻き返そうとオラ感だしたところでウザ客認定でさらに降格である。敗者復活など皆無の厳しい世界なのだ。男も女も立ち回り方のようなものがちゃんと存在するのだ。


嬢がやるべき仕事はたったひとつ。店に来た客とちゃんと向き合う事だと考えている。喜怒哀楽を客にぶつけるのだ。そうする事でディープな人間関係が構築されていく。「君じゃなきゃダメ」そう思わせる事で他の嬢に見向きもしなくなる。


そういう嬢と飲んだ翌日は、その嬢との会話やしぐさ、顔を思い出す事が多い。男の心に深く食い込み浸蝕していくのだ。際どいドレスでニコニコするだけの嬢はすぐに飽きられ、指名替えされる。可愛い子なんて他にいくらでもいるからだ。




ハロウィンイベントに一人で顔を出すなんて不可能だ。どうせなら何人かで楽しみたいし、どうせなら目立ちたい。私達の着飾りが最も威力を発揮するのはこの手のイベントの際だ。


ハロウィン当日、どの嬢を選ぶかでさらに揺さぶりをかけていく。“ 全魅了”とは、常にニコニコしたいい客でいることではない。


魅了の第一段階は、着飾りで期待値を高める。ブランディングの浸透期間だ。これは3か月でほぼ完了。


魅了の第二段階は、嬢同士の嫉妬心を煽りに煽るのだ。既に私はこのフェーズに入っている。


クリスマスが近づくにつれ、平常心を保てなくなる女性は少なくない。狡猾に、入念に準備を進め攻勢を強めていく。


軍資金のムダな消失を防ぐため、スクリーニングをかけるのだ。賢明な男性諸君は忘れてはならない。男として生まれた以上、私たちは常に選ぶ側に立たなければならないという宿命を。


それが男の強さであり男の魅力なのだから。
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