鬼滅の刃に出てくる伝説級の剣士が兄に言った言葉で「兄上、我々はそんな大層なものでもなんでもない。時が来たらば潔く自身の幕を閉じれば良い」みたいなセリフがあります。これは、その兄弟とも強い剣士だったのですが、後進が育っていないことをお兄さんの方が憂いている際に、伝説級の弟が言ったセリフです。この兄弟のやりとりが自分には妙に刺さる時があります。
10数年医療をやっていると真面目にやっていればそれなりの知識や技術がつきます。循環器内科の勤務医はカテーテル治療が好きな医師が多く、私もその一人です。最近は私自身のカテーテル治療も大分安定した手技で行えるようになってきていると思います。そして私も先輩医師から教わってきたように、若手に自分が持っている技術を伝承してあげたいと思い日々努力(若手教育)をしています。大抵の若手医師もカテーテル治療がやりたくて循環器内科を志した者ですので、非常に熱心に私の話に耳を傾けてくれています。
若手教育に励む一方で私の中にもう一人の私がいます。自分が最初から最後までカテーテル治療に手を下せば、短時間で安全に終わります。もちろん心臓の治療なので安全第一で指導は行いますが、安全を若手に優先してもらうとやはり時間が多くかかってきます。患者さんにとっても早く終わる方がいいでしょうし、私自身もカテーテル治療がやりたくて循環器内科になったのにできるようになった頃には指導に回らなければならなくなった感じがどうしてもあって、少し悩むことがあります。
転職して自分がファーストでできる病院で働く、もしくは現在の教育システムを見直し、昭和の『職人の背中を見て勉強しろ』みたいな感じで若手にあまりカテーテルを触らせず自分でやってしまう、などの生き方、やり方などもあるとは思いますが、若手の熱心な姿を見ると「教えてあげたい」という感情も実在し、「自分でやりたい」と「教育したい」が半々であるというのが現在の自分と分析しています。
どんな職業であっても知識や技術を伝えていくのは大切であり重要な課題だと思います。伝え方、ないしは伝わり方も千差万別です。今後も先に述べた二つの正反対の感情を織り交ぜ吟味しながら働いていきます。また、ここに書いてみたことができたらご報告いたします。