雅子はラビアンローズに来てからめきめきと頭角を現した。
それから数年が経ち、もう押しも押されぬ
ラビアンローズのナンバーワンになり
雅子は華やかに変身を遂げた。
そしてこの4月から
チーママというタイトルを由香里ママからいただいた。
そんなある日、
『あら大越さんいらっしゃい』
と毎日のように来てくださる大越の席についた時
雅子は一瞬目を疑った。
『おお、今日は強敵を連れてきたぞ』
その声と同時に、雅子の指先が止まり
グラスを持つ手が、わずかに震えた。
時間が数秒だけ巻き戻ったような感覚。
『噂通りの美人さんですね』
その声は変わらない。
いや、むしろ以前よりも冷たく感じた。
『初めまして、雅子と申します』
二人は、完璧な他人を演じた。
このお店は三上の紹介だったが
一度も現れたことがなく少しづつ連絡も途絶えて
今では幻のような存在になっていた。
目の前に突如現れた三上は会えなかった時間だけ
深みが増して魅力的になっていた。
『もしかしたら知ってるかもしれないがたまにテレビに出る人だよ』
『どうりでどこかでおみかけしたような』
『雅子ちゃんそれじゃ正解を教えてやるよ。
この三上先生は議員さんで国会中継にもよく顔を出してるよ』
『国会中継はただ退屈なだけですよ』
と三上は微笑んだ。
『ですが、裏では皆、本気です』
その一言に、雅子は気づく。
今まで三上の本質を知らなかったと。
大越と三上は1時間程で帰ったが
その帰り際
三上は一度だけ振り返った。
その視線は「また会おう」と告げていた。
消えたはずの炎が
銀座の灯りに紛れて静かに息を吹き返す。
それは再会ではなくて再燃だった。