【連載小説】第15話 薔薇の戦場

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銀座の夜は、女を選ぶ。
数寄屋通りの灯りの下で
生き残れる者と消える者が、静かにふるいにかけられる。
その夜、雅子は
薔薇の香りの漂う扉を押した。

『おはようございます』
雅子は初めての銀座でましてや今までは
お座敷の経験しかなかったので勝手が違うというか
本当にうぶな新人のような緊張感を感じていた。
由佳里ママは革張りのカウンターの席で予約の確認をしながら
ただ一度、雅子を上から下まで見ただけだった。
その視線はまるで宝石を値踏みする鑑定士のように冷静だった。

『おはよう、店長の三枝だけど雅子さんだね。こっちに来てくれる』
『はい』
と三枝店長は店則というのを詳しく話し始めた。
やはりお座敷とはシステムがぜんぜん違い
今までは用意されていた場所へ行けば良かったが
これからは自分で呼ばないといけないらしい。

『あ、いらっしゃいませ』
さあ、今日一番のお客様が到着された。
『雅子さんお願いします』
早速雅子に声がかかった。
見るからに大会社の社長といった感じの人で
紳士的な雰囲気は銀座の街によく似合う人だと思った。
『大越さんいらっしゃいませ。
今日入ったばかりの新人の雅子さんです。宜しくお願いします』
と店長は雅子を紹介してくれた。
『今晩は。初めまして』
『これはこれは美人さんが入ったね』
『いいえ、まだ緊張して声もうわずってますわ』
『そうかな、落ち着いて見えるよ』
『大越さんは銀座が似合う人ですね』
『銀座が似合うか、それは褒めてもらってると思っていいのかな』
『もちろんですよ』
『それで雅子ちゃんはどこの生まれ?』
『じゃ当ててみてください』
ほんの一瞬、店内の空気が止まった。
新人が客を試す?
だが大越は笑った。
『面白い子だね。ヒントなしか』
『そうですね。東京都内にあって川で釣りができて登山もできるの。
それに温泉もあっていいところですよ』
『都内で?それはかなり田舎だなぁ』
『ええ、もう熊が出そうな所ですよ』
『参った、降参だ』
『まあ、もう降参ですか。正解は奥多摩です。
でも小さい頃しか居なかったのであまり記憶にないの』
『人生いろいろさ、さあ今日は雅子ちゃんの入店祝いでシャンパンでもあけようか?』
『わっ、嬉しい!いただきます!』

雅子は初めて銀座の灯りを自分のものにした。
薔薇は棘を持つ女だけを歓迎する。
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