最近、コンサルティングファームでは、これまでのサービスからより広範なサービスへ幅を広げたり、デジタルテクノロジーを活用して最新トレンドを導入したり、色々と差別化のために取り入れていますが、差別化の本質は人材の質です。
即戦略として良い人材を入社させることも重要ですが、ポテンシャルのある若い人材に対して丁寧に育成することにも力を入れています。
一昔前までは、優秀な人材を残すためにUp or Outで振るいにかけるような企業体質がありましたが、今ではほとんどないのではないでしょうか。
不確実性が高く複雑化している企業の問題解決に向けて、様々なスキルや価値観の人材を取り入れて、それぞれ良いところを伸ばしていくことに、重点を置かれているように感じます。
しっかりと教育して、中長期的にリーダーとして活躍できる人材育成に力を入れています。この傾向は、どのファームでも同じことが言えるのではないでしょうか。
そこで今回は、僕の所属している大手グローバルファームの場合ですが、研修制度について解説していきたいと思います。
研修制度の概要
主に、研修制度は以下6つのタイプに分けられると考えられます。
入社時研修
新卒で入社したコンサルタントの卵に対して、ハードスキルとマインドセットの研修を実施しています。
具体的には、コンサルタントとしての基礎スキルとなる、ロジカルシンキング・構造化、議事録の作成、エクセルを活用したモデル作成、スライド作成とそのお作法など、これ以外にも様々なベーススキルがありますが、丁寧なプログラムを用意しています。
マインド面に関しても、社会人としての心得やコンサルタントとしての立ち振る舞いなど、充実した研修をみっちりと開催しています。
座学だけでなく、グループワークを通して、協働で達成していくプロセスの学びも研修内に組み込まれています。
だいたい2ヶ月ほどの研修期間を経て、配属が決まるという流れで、コンサルタントとして最低限押さえるべき一通りの基礎を研修で学習できます。
また、中途入社者に向けても、新卒研修と密度は異なりますが、同様の研修プログラムが用意されています。
研修期間は2週間ほどと短いですが、要点は押さえていますので、不足分は独学でキャッチアップすることになると思います。新卒ほどは丁寧なプログラムは用意されていないものの、基本動作は研修を通して学べる環境はあります。
基礎スキル研修
部門ごとに定期的に実施している研修プログラムになります。
入社時研修に比べて、一段レベルアップした中級者〜上級者向けの研修内容が多く、座学による講師からの一方通行というよりは、受講者に考えさせるような内容だったり、実体験に基づく、より実務に近い研修内容となります。
コンテンツ内容は、多岐にわたり、チームの状況に応じてウィークポイントを改善するよう、研修企画・トレーニングチームが都度オーダーメイドで企画するような傾向があります。
ナレッジシェア
過去実施したプロジェクトを通しての「学び」を共有する研修プログラムとなります。
クライアントの状況やプロジェクトのタイプ、またはマネージャーの進め方によって、プロジェクトアプローチは柔軟に変えています。
そのため、プロジェクトを通して、「工夫して良かった点」や「反省点(改善点)」、「振り返りからの学び」などをチーム内で共有することで、チーム力底上げに繋げているプログラムとなります。
オンラインによる受講研修
昨今のリモートワークに伴い、リモート環境で研修を受講できるコンテンツも充実してきています。
講師と受講者の双方で、インタラクティブにディスカッションするような研修タイプにはあまり向いていませんが、座学や情報シェアするような内容は効率的に実施することができています。
以前に録画したコンテンツだったり、ライブストリーミングを駆使して、効果的に学べるインフラが整ってきています。
外部講師による研修
外部のプロフェッショナルを招待して受講する研修プログラムとなります。
本業として研修を生業とされていますので、体系的なコンテンツだったり、分かり易さ、説明の仕方など、学びの質が高く、基礎的な研修内容であっても毎回気づきがあります。
予算の制約もあり、頻繁には開催できませんが、チームの状況を踏まえて定期的に実施しています。
グローバルでの交流
少し色合いが異なりますが、グローバルファームならではの人材交流からの学びとなります。
最近は新型コロナウイルスの影響で実施が見送られていますが、グローバル規模で各国から一拠点に数人招待され、交流を兼ねた研修プログラムを実施するものです。
僕が参加した時は、ヨーロッパで開催して、ホテルに1週間滞在して、毎日びっしりと研修プログラムが組まれました。講師は各国のパートナークラスで、グローバルの最新トレンドやプロジェクトでのナレッジを共有する内容で、非常に刺激を受ける研修です。
研修受講において心がけること
上述の通り、コンサルティングファームの研修プログラムは非常に充実しています。
あわせて、研修受講において心がけておくべきことも紹介してみたいと思います。
受け身でなく自発的に参加
研修受講は年間のKPIで、目標とする累計受講時間を設定されている場合が多いかと思います。
ただ、単位取得を目的とした研修と位置づけず、地力をつけていくツールとして研修を位置付けるべきです。
研修を通して、非常に多くの学びがあります。
自発的かつ、積極的に研修プログラムに参加して、学びを最大限吸収していくことがコンサルタントとしての実力向上につながります。
持ち帰ってプロジェクトで応用
研修の受講を通して、新たな気づきや発見がたくさんあるかと思います。
多くの発見をそのまま持ち帰っても、おそらく活用できずにいつの間にか忘れさられてしまうことが多いと思われます。
僕の経験上、全てキャッチアップすることは難しいです。
おすすめとしては、これだけはやってみようと思ったもの(やりたいもの、やれそうなもの、やるべきもの)を3つメモ帳に残すことです。
3つは是非プロジェクトでトライしてみてください。
最初はうまくいかないケースもありますが、繰り返し実施することでトライアンドエラーから見えてくることが出てくるかと思います。
研修メンバーとのネットワーク
グループワークの研修だと、受講者メンバーとの交流は大事にする方がいいです。
研修によっては、部門を超えた様々なケイパビリティや価値観を持っている人たちが集まります。
ポジションが上がるにつれて、普段の仕事では交流できない人との関わり、ネットワーク構築は大事です。
個人では解決できない・わからないことに対して、気軽に相談できるプロフェッショナルがファーム内には多数存在しているため、社内ネットワークを意識的に広げていくことは重要です。
さいごに
コンサルティングファームの研修制度は、考えられた色々なプログラムが用意され、非常に充実しています。
研修の内容によっては、教科書的で書籍に書いてあるような内容も多くありますが、講師の実体験に基づいた解説を通して、新たな学びを得られることは多くあります。
頭では理解していても、実際どのように使えばいいのかわからないようなシーンはあるかと思いますので、先輩方のやり方や考え方をうまく引き出して自分のものにしていくことも重要な視点です。
個人的には研修を受講した、その後の行動で成長速度は大きく変わっていくと思っています。
受講した内容を持ち帰ってプロジェクトで是非活用してください。
活用することによって、自分の中で咀嚼して、受けた言葉から行動に変換して、コンサルタントとして強くなっていくと思います。
入社してから伸びる人、伸びない人は極端に出てきます。
研修からの学びをうまく取り込むことができるか否かで大きく変わってくるのではないでしょうか。
実務で応用するように癖付してもらえると良いかと思います。