【SFC対策講座/SDGs】小論文の知識/用語解説②~予想問題つき

記事
学び

(1) はじめに


 SDGs(持続可能な開発目標)は政治経済など高校の教科書にも載っていて、高校生なら知らない人はいないだろう。

 地球環境問題に関連させてSDGsが語られることが多く、大学入試小論文を研究するうえで避けて通れないテーマである。

 書店の棚にもSDGs関連の本が多く並べられていて、私も何冊か買って読んでみたが、正直に書くと心に響くものではない。

 その理由は、SDGsにことよせて企業が商品開発を行い、投資家や消費者に秋波を送っている。SDGsの理念にはおおむね賛同できるものの、だからこそ企業がこちらの良心につけこんで「売らんかな」という魂胆が透けて見える。

 最近、企業ではCSR(企業の社会的責任)が盛んに論じられていて、投資家の間でも、SRI(社会的責任投資)と言って、企業の成長性や財務の健全性などに加えて、環境、人権、社会問題などへの経営の取り組みも投資基準として考慮する考え方が浸透してきた。

 SDGsはまさにそんな時勢に乗った形で入ってきたという印象が強く、トレンドに乗せられているようで、私は本気にこの問題を考えてこなかった。
 事実、大学入試小論文でもSDGsをまともに取り上げた問題は少ない。

 というのも、SDGsが掲げる17の目標は広すぎるし、焦点がぼけてしまい問題を作りにくい。

 そうとはいえ、SDGsの取り上げているテーマはどれも相互に深く関連し合うものであり、その解決に向けては分野横断的な知を総動員する必要がある。
 こうしたスタンスはまさにSFCの目指すものと一致する。

 このようなわけで、SFC対策講座の2回目にSDGsを取り上げた次第ある。

(2)SDGsと17の目標


・「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称。

・2015年9月の国連サミットで採択された。

・国連加盟193か国が2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた17の目標と169ターゲット。

SDGs.png

(3)SDGsは大学入試小論文でどのように出題されるか


 SDGsそのものよりも、各学部学科の専門分野の「持続可能性」について聞かれることが多い。

 例えば以下のような例。


・持続可能な農業、林業、水産業:東京農業大学、東京海洋大学
・持続可能都市:建築学部

・資源の持続可能性、自然環境の持続可能性:文系理系各学部

・日本経済の持続可能性:人口減少と関連付けて経済系学部で出題される。


(4)資料①/新型コロナウイルス感染症とSDGs


はじめに――危機の時代の羅針盤

急性的危機と慢性的危機

① 2019年12月に突然出現した「新型コロナウイルス感染症」(covid‐19)は、その後数力月の間に、ヨーロッパ、北米を席巻し、さらにイラン、トルコ、中南米などにも飛び火して、瞬く間に世界を変えた。数カ月で数千万人が感染し、数十万人を死に至らしめる破壊的なパンデミックに直面して、これまで国境を越えて「つながる」ことに信を置いていた現代世界は立ちどころに国境を閉ざした。世界のほとんどの国で、人間は「家にいる」ことを推奨され、人と人との関係は、インターネットを介したバーチャルなものへと移行させられた。3月以降にとられた「社会的・物理的距離」戦略に基づく強制的な「外出制限措置」は、その中でなんとか見いだされてきた、人間社会・経済とcovid‐19の「平衡・均衡」のプロセスヘと移行してきたが、今後少なくとも数年間、人類はcovid‐19との共存を余儀なくされることとなっている。

② この危機の中で、私たちが想起しなおさなければならないものが一つある。2015年9月、国連で193カ国の首脳の合意のもとに採択された「持続可能な開発目標」(SDGs(エスディージーズ)Sustainable Development Goals)である。covid‐19が登場する前、それは日本の経済界、地方自治体、政府などでいわば「台風の目」となっていた。大企業や大手金融機関、政府や地方自治体の職員たちのスーツの襟には、円形のSDGsバッジが輝いていた。政府はSDGsに関わる取り組みに貢献した企業などを表彰する「ジャパンSDGsアワード」を設け、内閣総埋大臣、内閣官房長官、外務大臣の出席で表彰式が行われていた。

③ SDGsはそもそも、国内外で拡大する貧困と格差、「地球の限界」がもたらした気候変動や生物多様性の喪失など、ここ数十年の間に人類に破局的状況をもたらしかねない慢性的危機に対して、2030年という年限を切り、17のゴールと169のターゲット、232の指標を示して持続可能な社会・経済・環境」に移行することによって、これを克服することを目的とするものである。しかし、covid‐19登場以前に人類をとらえてきた慢性的危機に対する意識は、covid‐19がもたらしたショックによって少なくとも、一時的には、忘却の危機にさらされた。

④ Covid‐19の有無にかかわらず、慢性的危機は存在し、深化している。人類はいま、Covid‐19と様々な慢性的危機の双方に同時に直面している。実際には、covid‐19がもたらす急性的な危機は、貧困や格差・環境破壊・汚染といった慢性的危機により増幅され、ますます大きなショックをもたらすものとなっている。ここで忘れてはならないのは、SDGsは、「危機の克服」のために作られた目標だ、ということだ。実は、SDGsがその序文や宣言、目標、実施手段、フォローアップとレビューという各パートで掲げる原則や方法は、Covid‐19がもたらしている急性的危機を克服へと導く処方箋としての価値を持っているのである。

⑤ いまcovid‐19の登場によって、危機の時代におけるSDGsの「真の価値」が問われている。ただ、これは逆さに見れば、「危機の時代を導く羅針盤」としてのSDGsの真の価値を再発見できるかどうかが問われている、ということでもある。もし私たちが、SDGsをcovid‐19の危機を打開するための指導理念とすることができれば、covid‐19を克服し、その後の社会を「持続可能な社会」へと移行させることができるかもしれない。一方、仏たちがcovid‐19のもたらしているパニックの中でSDGsを忘れてしまえば、covid‐19やその次にくるパンデミックと、気候変動や環境破壊、貧困・格差による社会の崩壊という二つの危機を前にして、苦しい二正面作戦を強いられることになるかもしれないのである。

⑥ covid‐19が登場する前の日本のSDGsブームには、いささか浅薄なところがあった。実際のところ、日経や朝日新聞などの調査によれば、「SDGs」という言葉を聞いたことがある人は全体の3割程度、仕事がらみでの認知が多かったこともあって、関心はビジネス・パーソンに局限される傾向があった。また、世界経済フォーラムとフランスの調査会社IPSOSの調査によれば、日本のSDGs認知率は、調査対象となった世界28カ国の中で、英国と並んで最も低く、また、SDGsの各ゴールの重要度を問う質問に対しても、「たいして重要でない」「全く重要でない」という否定的な国答が最も多かった。この結果が示しているのは、「誰一人取り残すことなく」、貧困・格差をなくし、「持続可能な社会」をめざす、というSDGsの精神は、SDGsの認知度が高いビジネス・パーソンの中でも、「きれいごと――「建前」としてしかとらえられていないところがあったとも考えられる。世界がCovid‐19という急性的危機に直面し、SDGsのブームが過ぎ去った今こそ、「危機の時代の羅針盤」としてのSDGsにじっくり目を通してみよう。
(『SDGs~危機の時代の羅針盤』南博、稲場雅紀、岩波新書、2020年 pⅰ~ⅶ)

(5)SFC予想問題


「新型コロナウイルス感染症」(covid‐19)感染拡大とSDGsとの関係を考える場合、以下の169のターゲットのどれと関連するか。
見本に示したようなに図示しなさい。
さらに、covid‐19感染拡大の背景、世界の対策、この疾病が社会や人々に与えた影響などに関連するターゲットを複数選んだうえで、あなたが関連すると考えた根拠とともに400字以内で説明しなさい。

(解答例はオンライン講座をご受講された方の希望者に配布しています)


サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す