大学生から始める狩猟記録 #5 道具を揃えよう+黒い飲み物

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 めでたく狩猟免許を取り、いざ狩猟開始!

 と出来ればどれほど楽だっただろうか。
 むしろここからが難所。正解のあった試験と違って、ここから先は人によってケースバイケースだからだ。
 それでは私の場合はどうかというと、ツテもなければ、 地元の人間でもない、ただの学生。まぁ決して楽な方ではないだろう。
 とはいえそれは分かりきってたことだし、安くないお金払って免許を取ったのだ。ここまで来たら、金額倍プッシュしてでも狩猟をしたい。
 とりあえず狩猟を始めるに当たって、やらなければならないことは大きく三つ。

 ①狩猟を始めるための手続き
 ②狩猟のための道具を揃える
 ③狩猟をするためのコミニュティを作る

 ①はいわゆる狩猟登録と呼ばれるもので、これに関してはやり方を講習の時に聞いていたし、それに沿って粛々とやるだけだ。
 ②に関しては、どこで何を買うかを予め決めていた。まず罠猟なので罠は必須。あと止めさしや解体に使うナイフ、山を歩くので長靴、あとノコギリや熊よけの鈴、とりあえずはこれくらいだ。
 衣服に関して、ウィンドブレーカーやグローブ、リュック、ウエストポーチは持っていたので、それを利用することにした。
 だが残りは買わなくてはならない。

 しかしありがたいことに、どこで買うかはすぐに思いついた。
 これは全くの偶然だが、当時住んでいた場所の近く(自転車で20分くらい)の場所に銃砲店があった。
 もちろん銃は使えないが、銃を使うハンターが買い物する場所とも言えるお店。当然狩猟道具も取り扱っていた。
 自転車を飛ばして店に向かい、店長さんに自分の現状を話す。非常に親切な方で、取り扱ってる商品を見せてくれた。
 ここで買ったのは、解体用と止め刺し用それぞれのナイフ、そして手入れのための砥石、あと長靴である。
 どれもこれも安い物ではないため、お財布と相談しながら決めていく。
 解体用のナイフは、皮剥ぎから精肉までできるマルチタイプの物を購入。方位磁針がついているのがお気に入りのポイントだ。
 止め刺し用のナイフは、解体用ナイフと比べて刃が太くて長いのが特徴。そうでなければトドメは刺せない。
 見せてくれた物はどれも立派だったので、その中から一番安い物を選んだ。色々買ったこともあって値引きしてもらい、それでも三万くらいしたが。
 皮のカバーがついており、『しまう時は、カバーに刃を当てないように』と言われた。数回やってしまうと、カバーが切れてしまうほど切れ味がいいとのこと。
 そして砥石。正直解体用ナイフだけなら、市販の包丁研ぎでも何とか手入れできるらしい。
 ただ止め刺しナイフは頑丈過ぎるため、普通の包丁研ぎだと砥石の方が負けてしまうらしい。というわけで、こちらも止め刺しナイフに対応して、且つ安い物を購入。
 長靴に関しては、そこまで品数は多くなかったので早めに決まった。雪山で歩くことも想定して、スパイクのついた物を購入。
 こうして銃砲店での買い物は終わった。

 余談だが、これらを買ったのは、まだまだ暑さの残る夏の終わり。
 試着する長靴やらを用意してくれている間に、店主の奥さんが冷たい飲み物を出してくれた。
 中身は焦茶色の飲み物。時期もあって麦茶かと思った。
 喉が渇いていたこともあって、特に考えず飲んだ僕は、全身を駆け巡る衝撃に目を見開いた。
 冷たい飲み物ではあったが、味がどう考えても麦茶じゃない。
 口全体を指す酸味のような感覚と甘み。そして独特の香り。
「ッ⁉︎」
 吐き出すほどではなかったが、予想外の感覚に思わず変な声が出た。
 一応ご厚意で出してくれたものなので、不快感を与えないように気をつけながら、もう一度慎重に飲む。
 普段味わうことのない味と香りに眉を顰めて、私は考えた。
 自分のこれまでの経験から、考えられる正体を。
 そして数秒後
「これ………黒酢ですか?」
 さすがに気になったので聞いてみた。
 すると、飲み物を出してくれた奥さんが目を丸くしてこちらを見た。
 そしてゆっくりと首を傾げて、逆に質問する。
「………最近の子って、コーラ飲まないの?」
 あぁ、なるほど。
 それで全て納得した。これがコーラの味か。
 というのも、私は炭酸が苦手なため、普段からコーラは飲まない。だから味がよく分からないのだ。
 おそらく、あの酸味みたいな刺激が炭酸だったんだろう。
 昔母さんが買っていた炭酸水をこっそり飲んだ時、あまりの刺激につい吹き出してしまったことがあった。
 いつの間にか飲めるようになってたんだなぁ、と思いながら飲み干した。
 まぁ、それ以降飲んでないが。

 そんな気づきもありつつ、次に罠猟において最も重要な罠だ。
 まず大前提として、罠を作ることはしなかった。ネットが発達したこの時代、材料を買ってきて作り方を調べて作ることも出来なくはない。
 とはいえ手先が不器用且つ狩猟初心者の私が作ったところで、材料費を食い潰すのは目に見えている。
 そうなると罠を買うしかないわけで。
 しかし私はこれまで、罠を取り扱っているお店なんて見たことがなかった。
 ネットで探すこともできるが、品質を調べることは難しい。とはいえ適当に調べて、質の悪いものは買いたくない。
 あわよくば銃砲店で買えないかなとは思ったが、そこは銃砲店。罠が置いてあるはずもない。

 しかし買う先の当てがないこともなかった。
 そう、免許講習の時に貰った罠のカタログだ。
 品質が保証されてない物のカタログを、講習で配ったりはしないだろう。
 そんな安直な考えで、私はカタログに書いてあった電話に連絡。くくり罠を五つと、止め刺しをする際に電気を流す槍を購入した。
 くくり罠とは、バネの力で獲物の脚をワイヤーで締めつけて、アンカーとなる木にくくりつける罠。大型から中型、幅広い獣を獲ることができる。
 そして私の買った物は跳ね上げ式という、通常の物より脚の高い位置でワイヤーを締めつけられる罠(下部写真)だった。つまりかかった後に、ワイヤーが外れにくいというわけだ。
わな.jpg

 しかもセットもしやすく、安心のストッパー付き。初心者にピッタリだ。さらに感度調整も可能で、高くすれば中型の動物でも獲れるし、低くして鹿や猪だけを狙うのもアリという優れ物。
 この罠、後にできた知り合いが『弁当式』と言っていた。踏み板が長方形で、弁当箱みたいだからだろう。
 サイズは選べる3タイプで、反射的に一番大きな物を買った。獲れやすくなりそうだったから。
 今思えば一番小さくても全く問題無いし、何なら最悪小熊がかかる可能性もある(私は今のところ経験無いが)ので、まぁそこは自分で考えて選べばいい。

 そして本来の買うべき物リストにはなかった、電気を流す槍(下部写真)。
やり.jpg

 この槍は止め刺しの時に使い、厳密に言うと電気を流して獲物を気絶させる物。安全な止め刺しをするためにも、この気絶のフェーズは必要不可欠だ。
 そのため、とりあえずの保険として買うことにした。
 私は何となく、罠にかかった獲物は、棍棒で殴って気絶させるイメージがあった。
 ただそんな棍棒が都合よく手に入る保証も無いし、それこそ買う先の当てもない。
 誰とどんな狩猟をやるにせよ、とりあえず一人で一通りのことができるように道具を揃えたかった。
 そのため一人でも安全に気絶させられる手段を、確実に手元に残しておきたかったのだ。

 こうして罠と電気の槍を購入。数日後、特典の懐中電灯と共に我が家に届いた。
 着払いで対応してくれた配達員さんが、大変そうに運んできたのを今でも覚えてる。
 くくり罠五つは、ホームセンターに売ってるような衣装ケースに収納することにした。
 母さんが一人暮らしをする時に、『服を買ったらしまってね』と余分に買ってくれたものだが、下着と靴下以外の服なんて半年に一着買えばいい方だ。
 何なら他の空だった衣装ケースは、ほとんど特撮作品のおもちゃ箱となっている。
 そして電気の槍だが、槍というだけあってそこそこ長い。僕の身長とあまり変わらないくらい。
 衣装ケースどころか、クローゼットにすら収納は難しそうなので、仕方なくベッドの下に置いておくことにした。
 私の身長と変わらないので、ベッドのサイズでちょうど埃を被らずしまえるのだ。
 これで最も重要な物は購入完了。

 残りのノコギリと熊よけの鈴は、近所のホームセンターで購入できた。
 これで10万以上の出費。まぁ電気の槍を買わなければ、数万円くらい出費は抑えられるが。
 とはいえ、狩猟というものはお金がかかるのだ。一年生の頃アルバイト頑張っててよかった。
 こうして必要な道具は全て揃った。追加で購入が必要なら、その時に買えばいいだろう。

 さぁ、次にやるべきは最難関。コミニュティ作りだ。
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