組織文化を変えるのは容易ではない

組織文化を変えるのは容易ではない

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コラム



1.文化とは「慣れ」の連続

構造と体制の中間に位置づくものとして、私は組織の「文化」を捉えています。

文化とは、経営者や職員一人ひとりの日々の行動の積み重ね、すなわち“慣れの連続”によって形成され、やがて空気のように組織全体に染みついていくものです。

それは目には見えませんが、確実に組織の在り方を表しています。


売上が低迷している組織や、人材が定着しない組織に共通して見られるのは、この文化が「他責思考」で満ちているという点です。

経営者から管理者、そして現場職員に至るまで、自ら責任を引き受けることを避け、「誰かのせい」にしてしまう。

この空気が常態化している組織の支援は、正直なところ容易ではありません。




2.他責思考にに陥る理由とは


では、なぜ人は他責思考に陥るのでしょうか。その背景には、いくつかの心理的・社会的要因があります。

まず、人は失敗や不都合な結果に直面したとき、自尊心を守ろうとする防衛本能が働きます。

自分の判断や能力の不足を認めることは痛みを伴うため、「環境が悪い」「他人のせいだ」と解釈することで、その痛みを回避しようとします。

次に、努力と結果が必ずしも一致しない状況が続くと、「自分が頑張っても意味がない」という無力感が生まれます。


その結果、原因を自分ではなく外部に求めるようになります。


反対に自責思考には、失敗を振り返り改善点を見出す力が求められますが、そのような思考プロセスを学ぶ機会が少ない場合、人はより簡単で感情的に楽な他責思考へと流れてしまいます。

つまり他責思考とは、単なる怠慢ではなく、自己防衛・環境・経験の積み重ねによって形成される“自然な傾向”でもあるのです。

他責思考の文化は放置すれば組織全体を蝕みます。

だからこそ、誰かが意図的に抑制し、コントロールしていかなければなりません。


ただし、組織の内部にいる人間ほど、この文化に無自覚です。

日々その空気の中で働いているため、それが当たり前となり、問題として認識すること自体が難しくなります。


その意味で、外部のコンサルタントが介入することは、費用をかけてでも文化を可視化し、変革していくための有効な手段だと考えています。




3.医療ITベンチャーの離職率の原因は「挨拶」だった



以前、私が在籍していた創業4年の医療系ITベンチャー企業でも、文化の問題が顕著に表れていました。


正しい医療情報の発信と、医師と患者を直接つなぐという理念を掲げ、従業員は140名以上、資本金も1億円を超え、上場を目指す勢いのある企業でした。

しかし、その一方で離職率の高さが大きな課題となっていました。


その根底にあったのは、「挨拶がない」という、極めて基本的でありながら深刻な文化でした。


急成長の中で人材が一気に増えた結果、同じオフィスにいながら「仲間」という感覚は希薄になり、単に“同じ場所で働く他人同士”という関係性が広がっていました。

社内ツールでの連絡に対しても返信はなく、日常的なコミュニケーションも成立していませんでした。

外から見れば整ったオフィス環境であっても、内部では人間関係が分断され、不満を言い合い、互いの状況を探り合うことが日常となっていたのです。




4.1on1を導入しても無駄だった



この離職問題に対して会社が打ち出した施策が、「1on1ミーティング」でした。

1on1は、2017年に出版された『ヤフーの1on1』を契機に、日本企業に広く浸透したマネジメント手法であり、人材育成や離職防止の手段として知られています。

しかし現実には、この手法を正しく運用できている組織は多くありません。

「1on1を導入したが、むしろ疲弊した」という声が多いのは、単に“個別で話す場”を設けただけに留まり、本質的な対話が行われていないからです。


この企業でも同様で、当時の代表自身が「面談に時間を使うのは無駄だ」といった姿勢を見せており、その空気が現場にも伝播していました。

本来、1on1とは対話によって相互理解を深めるための手法です。

しかし、上司が自分の価値観や理想を一方的に押し付ける場になってしまえば、関係性はむしろ悪化します。

これが、いわゆる「機能しない1on1」です。

そもそも、経営者と現場の間には大きな意識の差があります。その状態で対話を行うこと自体に難しさがあるのは当然です。

それでもなお、組織文化を変えるためには、一人ひとりの意識を変えていくしかありません。

時間も労力もかかる取り組みですが、「組織とは人である」という前提に立つ以上、避けて通ることはできないのです。


Fukushi Vision Group株式会社
医療・介護・福祉経営コンサルティング
代表取締役 塚本洋介
社会福祉士│福祉マネジメント修士(専門職)

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