兄の進路を決めた父ちゃんのひと言

兄の進路を決めた父ちゃんのひと言

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これまで、父ちゃんの言葉が、僕自身の人生にどう影響を与えてきたかについて、何度か書いてきました。でも、父ちゃんの言葉の影響を受けたのは、僕だけではありません。今回は、僕の兄のエピソードを紹介したいと思います。

「自衛隊」か「警察」か?

兄が若い頃、自衛隊に入隊するか、警察官になるかで悩んでいた時期がありました。警察官になりたかったのは「地域住民の平和を守りたい」との理由があったそうです。就職先として自衛隊を考えてたのは「日本が中国や韓国と緊張関係にあった」からだそうです。ある日、兄は、その悩みを父ちゃんに相談したそうです。
父ちゃんからは、どちらが良いとは、ひと言も言わずに、兄にこう聞いたそうです。
「なぜ日本は中国や韓国と仲が悪いと思うのか?」
この質問を聞いた兄は、その場で答えることはせず、席を立ち、1週間ほど考えた末に、自衛隊に入ることに決めたと、父ちゃんに報告しに来たそうです。

兄が気づいたこと

なぜ、父ちゃんの質問で、兄は自衛隊入隊を決心したのか?
後になって聞いたところによると、兄はこう考えたそうです。
日本と中国、日本と韓国は、地理的に近い。逆に、距離の遠いヨーロッパやアメリカとは、それほど大きな摩擦は起きていない。つまり、近くの存在同士だからこそ、摩擦は大きくなるのではないか、と。
兄は「中国や韓国と、どういうところで実際に摩擦が起きているのか。自分の目で確かめたい」という思いが強くなり、最終的に自衛隊を選んだようです。国と国との問題という、より大きな問題に関心が向いたようでした。

父ちゃんのパターン

こうして振り返ると、兄とのやりとりは、父ちゃんらしいやり方だったと思います。
実は、僕には、父ちゃんについて、これまでのブログでまだ書いていなかったことがあります。中学校の入学式の日、父ちゃんと一緒に中学校へ向かって歩いているとき「君はもう一人前なんだから、これからは何も言わない」と、父ちゃんが宣言したことがありました。そして、その宣言のとおり、僕が中学生になってからは、父ちゃんは、本当に「あれしろ、これしろ」と言ってこなくなりました。
兄とのやりとりも、この延長線上にあったのだと思います。「こうしろ」と答えを与えるのではなく、考えさせる質問を投げて、あとは本人に結論を出させる。今回のエピソードも、まさにその通りのやり方でした。
答えを与えるのではなく、問いを渡す。渡された問いを、兄は1週間かけて、自分なりに考えて結論を出しました。父ちゃんの言葉の影響力は、命令ではなく、こうした間接的な問いかけの中に強く表れていたのだと思います。

当時の沖縄で自衛隊に入るということ

兄が自衛隊に入ると聞いたのは、今から45年ほど前のことになります。正直、僕は少し驚きました。当時、沖縄の人にとって、自衛隊に入隊するというのは、かなり心理的なハードルが高かったからです。
自衛隊は、戦前の軍隊と結びつけて見られることが多く、地上戦の舞台となった沖縄では、自衛隊に入ることが「戦争に賛成している人だ」というレッテルが貼られる可能性がありました。自衛隊に入った家族に対して、近所の視線が冷たくなったという話や、自衛隊員の家の車に石を投げられたという話を、人づてに聞いたこともあります。今思えば、当時の沖縄における自衛隊への風当たりは、かなり強かったという印象が、僕の中に残っています。
そうした空気の中でも、兄は自分自身で考え抜いた末に、自衛隊を選びました。それだけ、父ちゃんの、あのひと言の影響力は大きかったのだと思います。

言葉で人生が動くことがある

父ちゃんのひと言が兄の進路を決めたと思います。あらためて考えると、言葉というのは、思っている以上に大きな力を持っているのだと感じます。
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