父親に対して、長年抱えたままの、答えの出ない疑問はありませんか。「なぜあの時、あんな態度を取ったんだろう」「なぜ父ちゃんは、あんな生き方を選んだんだろう」。聞くこともできないまま、心のどこかに引っかかり続けている問い。今回は、そんな疑問が文章を書くことで解けていった、僕自身の体験について書いてみたいと思います。
「なぜ父ちゃんは動かないんだろう」という長年の疑問
僕の父は、もともととても活動的な人でした。色々な仕事に手を出し、アイディアを次々と実行に移し、行動力のある人でした。
ところが、そんな父が、いつのまにか家に閉じこもるようになってしまったのです。
母ちゃんは変わらず一生懸命働いているのに、父ちゃんは動かない。
子供の頃の僕には、それがずっと不思議でした。「なぜ父ちゃんは動かないんだろう」——これは、僕が父に対して抱いていた、一番大きな疑問でした。
理由がわからないまま、その疑問だけがずっと残っていました。
文章を書きながら、点と点がつながった
今回、父との関係をあらためて文章にしていく中で、あることに気づきました。
父が活動的な人から、家に閉じこもるような人へと変わっていった、ちょうどその頃に、父自身の父親——僕にとっての祖父——が亡くなっていたのです。
一つひとつの出来事は、これまでもばらばらに記憶の中にありました。
父に関することを思い出すままに書き出し、時系列の視点から考えていたら、突然「もしかしたら、父ちゃんは、動かなかったのではなく、自分の父親が亡くなったことがきっかけで、動けなくなってしまったのかもしれない」そう思いました。その瞬間、長年抱えていた疑問に、自分なりの答えが出て、納得できた感覚がうまれました。
さらに文章を書き進めるうちに、もう一つ思い出したことがあります。
祖父には元々、男の子が二人いましたが、長男である父の兄は、戦争で亡くなっていました。つまり祖父にとって、父ちゃんは唯一残された息子だったのです。
そのため、父ちゃんは祖父からとても大事に育てられていたようです。だからこそ、祖父が亡くなったとき、父ちゃんは、男の肉親を全て失い、ひとりぼっちになったような気持ちになったのではないか——そんなふうに、今は想像しています。
もちろん、これが本当の理由かどうかは、今となっては誰にもわかりません。
父に直接確かめることも、もうできません。
それでも「なぜ父ちゃんは、動かないんだろう」という、あれほど長く僕の中にあった疑問が「父ちゃんは動けなかったんだ」と自分なりの答えが見つかったので、僕の中では、その疑問がなくなったように感じました。
「本当の理由」でなくても、心は軽くなる
文章を書くことの面白いところは、書きながら、点と点のつながりに気づいていくところにあると思います。
頭の中でばらばらに存在していた記憶が、思いつくまま書き出しているうちに、思いがけない形でつながることがあります。
その答えが、客観的に「正しい」かどうかは、実はそれほど重要ではないのかもしれません。自分なりに納得できる形で疑問に答えが出ることで、長年の間心のどこかに引っかかっていたものが、少しずつほどけていく。
それだけでも、心はずいぶん軽くなるものだと感じています。
あなたの中にある「大きな疑問」も
もしあなたの中にも、父親に対して「なぜだろう」とずっと引っかかっている疑問があるなら、それを文章にしてみることをおすすめします。
すぐに答えが見つからなくても構わないと思います。
思いつくまま出来事書き出していくうちに、突然、点と点がつながる瞬間が訪れるかもしれません。
18の質問は、そうした記憶を一つずつ引き出しながら、自分なりの答えにたどり着くための手がかりとしてご用意しています。長年の疑問が、一行の文章から解けるかもしれません。