※『檸檬(レモン)~突如姿を消した君~』は、魅綬オリジナル小説です。
※魅綬本人の実体験を元に、登場人物や場所・建物名・出来事などには、フィクションを交えて作成しています。
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【プロローグ】
「魅綬、今日このあと何か授業ある?終わり?」
親友の麗子と直美に聞かれた時、私は営業時間が終わって自由解放された大学の食堂内にいた。麗子たちが今年の4時間目に取っている授業を、私は既に1年生の時に取り終わっていたので、2年になったらその時間、私は自習をしながら麗子たちを待っていたのだ。
私達は東京にある音楽大学に通う2年生。専攻は教育指導マスターコース。
将来、音楽講師や音楽の授業を持つ教師など、生徒さんに音楽を教える人を育成していくような、音楽教育者の指導者的存在のスペシャリストになるためのコースにいる。
1年生の頃は大学に合格した嬉しさと、1人暮らしがスタートした解放感で少し遊び過ぎたけど、2年生にもなると3年生や4年生の先輩たちが「卒業後の道がなかなか決まらない……」と若干ノイローゼ気味になっている姿を目の当たりにしてからというもの、「自分も来年にはこんな風に焦っているのか…」と少し怖くなり、ひとまず授業やレッスンに勤しむことで、何となく毎日が意義あるような過ごし方"風”をしているところ。
「うん、私は今日の授業はもう終わって、今自習を1時間したから、この後は練習して帰るよ~。」
私は自習時間中、明日のドイツ語の授業で提出する課題を終わらせたので、この後は夜19時までの3時間をピアノの練習時間に使おうと思っていた。
「オッケー。じゃあ私達も練習室行こうかな!
あ、この時間の授業で仲良くなった子がいて、この子が魅綬と友達になりたいって言ってるから連れてきたー。」
そう言われて紹介されたのは、色白の肌に明るい茶髪の髪色でほんわりと優しく笑う、身長が割と高めの男の子だった。
「友達になりたい」そう麗子たちが言った通り、かなり興奮気味に目をキョロキョロさせて私と麗子たちを交互に見つめるその表情には、「もう自分で自己紹介してもいい!?」と言わんばかりの勢いがあった。
「初めまして!1年の凌(りょう)です。太田凌!友達になりたいです!」
呆気に取られてポカンとしている私に、麗子と直美はちょっと楽しそうな顔をしながら言った。
「すごくいい子だし、私達と同じコースの後輩だよ!
大学内で初めて魅綬のこと見かけた日から、ずっと魅綬と友達になりたいって思ってたんだって!」
へえ、そうなんだ。私達と同じコースの後輩かぁ。
見たところ悪い子じゃなさそうだし、恋愛の意味とか下心で近づいてきた訳では無さそうだし、友達が増えるのは嬉しいから、大歓迎だ。
そう思って、私は右手を差し出した。
「そうなんだ、ありがとう。魅綬です、よろしくね!」
凌の顔に若干垣間見えていた不安そうな陰が、一瞬でパァっと晴れたような表情になったのが分かった。そして私の右手に自分の右手を重ね、しっかりと力強い握手をしながら凌はこう言った。
「わぁー!嬉しい!こちらこそよろしく!魅綬ちゃんって呼んでもいい!?」
本当に嬉しそうな表情をしている彼に、私は心の奥の方で何かが反応しているのを感じた。そしてそれと同時にほのかに檸檬のような柑橘の香りと柔らかいフローラルのような香りがしたのを覚えている。
「香水?何の香水付けてるの?いい香りだね。」
私が言うと、凌は「ドルガバのライトブルーだよ!魅綬ちゃんもいい香りがするけど、どこの香水!?」
「私はGucciのrush2だよ。」
「rush2っていい香りだね!今度一緒に香水買いに行かない!?」
ずっと興奮気味に受け答えをしている。
私が凌と出会ったのは、香りと手の柔らかさと温かさがイメージとして強烈に残る、ある6月のことだった。
次回は『第一章 雨とワイン』をお送りします。
是非お楽しみに♬
魅綬✬