いま日本国の水面下で進んでいるのは金融空間の再設計だということ

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英国がEUを離脱した理由をめぐる議論は移民や主権の話として語られますが、決定要因は違う。
金融です。
英国がEUを離れた最大の理由は金融規制を自前のものとして保持する必要があったためです。これは推測ではなく、経済構造と制度設計の軌跡を追えば揺るがない結論として浮上します。
英国は脱工業化を経て、経済の屋台骨を金融に置き直しました。
金融は規制の柔らかい部分に利益源がある産業で、規制を自国の判断で動かせるほど競争力が高まっていきます。しかしEUは公平性の名のもとに規制の均質化を進めていました。この均質化は英国からすれば、金融国家としての生存条件を弱めるものだったのです。
英国がEU残留を拒んだ理由は明快です。制度設計の自由を守り抜かない限りロンドン市場の競争力は凋落の道をたどるしかなかったからです。
マイナスはありました。離脱で失われたのはEU市場への即時アクセスの一部です。しかし、得られた利益はそれをはるかに上回る規制裁量なのです。
ブレグジット後、ロンドンは規制を身軽にしただけではありません。英国圏に広がる属領法域を金融ネットワークとして全面的に動員する体制を整えたのです。英領ヴァージン諸島やケイマンを含むオフショア群は、ロンドン市場の外周を形成し、ロンドンで吸いきれない資金を処理する役割をさらに有効かさせました。
つまり公に口にしない事実。これら制度の柔軟さと匿名性を提供する領域が、英国の金融モデルの本質なのです。
どうでしょうか?ここからウクライナに異様なほど英国が支援する理由が見えてきませんか?
意外に知られていませんが、いま世界の租税回避地区は1/3が英国圏にあります。
つまり租税回避ネットワークをロンドンの金融界が大規模に利用している決定的な証拠だということ。ロンドン本体は高度な透明性で信頼を確保し、その外側の法域が動的な資本の逃避先として機能しているわけです。この両者が極めて効率よく連動させるために、英国はEUの枠から独立しも巨大な「金融複層的市場」として成立したわけです。
ブレグジットは帝国期の法体系を現代金融の装置として再利用した動きと見るのが、もっとも事実に近いとみるべきでしょう。
この、いわば「英国型モデル」は、EUが掲げる「均質化モデル」に対して、もう一つの潮流を形成した。・・とても面白いのは、アメリカがそのどちらにも寄りかかりながら、最終的には「自国の裁量による覇権維持」という別種の回路を選んでいる点です。
実はアメリカはEU型ほど均質化を重視していません。
合衆国という連邦構造には地方銀行や信用組合の気風が強く残り、規制は重層的で、州ごとに差が残ります。EUのように単一市場を幾何学的に整える志向とは距離があり、むしろイノベーションを吸い上げる柔らかい膜を維持する方向へ振れています。
この構造は、英国が狙う裁量モデルにも似ている。ただ、アメリカはそれを自国市場の圧倒的な深さとドルの国際的役割と組み合わせることで、英国とは別の巨大な磁場をつくっているのです。
アメリカは「裁量」よりも「主導権」を優先する国です。
たとえば金融制裁の執行権限は、法体系を通じて国際資本の動線に直接作用する。EUが透明性と均質化で秩序を描くのに対し、アメリカはドル決済の基盤そのものを外交のツールとして稼働させることで、世界経済を自国のネットワークに結びつけているのです。
これは英国の裁量モデルとは目的が異なり、EUの均質化モデルとも設計思想が違います。
これは「規則の提供国」であり、同時に「規則の管理者」という位置づけですね。
こうした三つの潮流が現在の世界金融を構成しています。EUが「同じルールの大陸的秩序」を築こうとし、英国が「裁量の余白を最大化した海洋的ハブ」を目指し、アメリカが「覇権通貨を用いた規範の投射」を続けています。いずれのモデルも、自国が置かれた地政学と産業構造の反映です。
では問う。日本は?
日本が進んでいる道は、EU型の「均質化」でも、英国型の「裁量拡大」でも、アメリカ型の「規範の投射」でもない独特の姿なことが見えてきます。
つまり世界の三つの潮流がはっきりと色分けされていく中で、日本はどれかの陣営へ寄るというより、歴史的な制度の慣性と、人口構造の制約と、財政の巨大さに引かれながら、別の航路に入っている。
日本の金融規制は、EUほどの大規模統一も、英国ほどの大胆な裁量確保も志向していません。
日本の金融規制は、安定性を過剰なほど求めます。国民性でしょうか?リスクに対して果敢になれない。慎重で、制度変更が段階的にしか進まない体質のため、EU型のような「体系的な均質化」ではなく、アメリカ型のような「規範の輸出」にもなりません。むしろそれ以前に、国内の制度的自給圏をどう守るかという姿勢が強くなる国なのです。
こうした姿勢に、もうひとつの制約が絡みます。
日本は人口減少と高齢化が、国内資本の性質を変えてしまいます。
高齢化が進むと、金融の役割が成長資金の供給から、さらに資産保全と分配へ進みます。つまり、日本の金融は、もう既に外に規範を投げかける段階にはなく、内側の収縮を整える段階にあるのです。
国家が自国市場を安全に維持することが戦略の核になるため、英国型のような裁量拡大で海外資本を吸い寄せる形にはならない。その姿勢へ進めば、日本は国家としてグズグズに壊れてしまう。
いま日本国の水面下で進んでいるのは金融空間の再設計です。
日本は、金融的にの巨大なバランスシートをどうやって軟着陸させるかという問題へ向かっています。
これをとらえるなら・・おおざっぱですが、日本は「縮小しながら安定を維持するモデル」に向かっているということです。
世界が三つの大きな力場で引き合うなか、日本は自国の制度の慣性と人口構造の圧力を背景に、別の宿題へ取り組んでいると僕には思える。
これは良いことか? はい、良いことです。無為に大国化させず小国として安定した国家へ進むことは、いま最も正しい道です。
その道を安定化させれば、将来、地域的な金融安全圏を整える国としての役割を日本国は担います。
道は収束していくものです。どの国も自らの地理と歴史に応じた金融空間をつくっています。日本の航路も次第に輪郭を帯びていくでしょう。
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