政府が6月に取りまとめる「骨太の方針」に、国民皆歯科健診の実施が盛り込まれることになりました。
歯医者さんの政治力を感じないでもないですが、悪いことではないと思いますので、本記事ではこれを解説していきます。
なぜ国民皆歯科健診を進めたいのか
歯科健診は現在、1歳半と3歳の乳幼児、就学時や小中高生の学校健診、歯に有害なガスを業務で扱う人などにのみ義務化されています。
今回の政府方針は、それを全国民に広げようというもの。
背景には、歯医者さんの政治力もあったかもしれませんが、歯周病を放置すると糖尿病などの大きな病気につながり、国民医療費が増大してしまうという懸念があります。
歯周病は知らぬ間に進行する
歯周病とは「歯と歯ぐき(歯肉)のすきま(歯周ポケット)から侵入した細菌が、歯肉に炎症を引き起こし、さらには歯を支える骨(歯槽骨)を溶かしてグラグラにさせてしまう病気」(厚生労働省e-ヘルスネット)を言います。
痛みが出ないことが多く、気づかないうちに進行してしまうのが歯周病の恐ろしいところで、歯肉からの出血など自覚症状が起こった時には歯が自然に抜け落ちるほどの重症になっていることがあります。
歯を失う原因のうち、歯周病とむし歯が80%以上を占めているのです。
歯の健診で大きな病気を防ぐ
歯周病はさまざまな全身疾患と関係が深いことが知られています。
特に重大な関連があるとされるのが糖尿病です。
糖尿病は糖代謝異常により高血糖状態となる病気。主な合併症に糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害などがあります。
糖尿病による免疫機能の低下から他の病気に感染しやすい状態となり、それによって歯周病が悪化する例も多くみられます。
歯科健診で歯周病を早期発見したい
歯周病は糖尿病以外にも、心疾患や慢性腎臓病、呼吸器疾患などとも関係があることが報告されています。
つまり歯周病を治療することは、その他の病気にならないようにすることにつながり、歯科健診を定期的に行えば、自覚症状のない歯周病にも気付くことができるというわけです。
歯周病予防の基本は毎日の歯磨き
歯周病予防の基本は歯垢が付かないようにすることです。
そのための手段として有効なのは、毎日の歯磨きと定期的な歯石除去であり、それ自体は難しいことではありません。
歯周病になってしまった場合は、歯科医や歯科衛生士によってより専門的な手法で歯の清掃を行ったり、嚙み合わせの調整を行ったりする必要があります。
重度の歯周病になると、歯ぐきの手術を要することもあるので、なんといっても予防を心がけることが重要です。
政府の方針がどうであっても、年に1回くらいは歯科で歯の状態を見てもらいましょう。
抜けたら生えてきませんので。