マイナンバー健康保険証に大きな欠陥発覚!

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2024年秋には健康保険証の発行をやめ、マイナンバーカードを健康保険証とするという政府方針が出ました。以前から、マイナ保険証を浸透させようとする動きには拙速だと指摘してきましたが、マイナ保険証には、大きな欠陥が隠されています。

業界では問題化していますが、メディアでは取り上げられていないので、ここでご紹介します。

薬剤情報がマイナポータルで見られない欠陥

マイナ保険証のメリットの1つに、マイナポータルを通じて自分の診療情報や薬剤情報が確認できる……という点があります。診療と調剤の情報は、多くの場合、社会保険診療報酬支払基金(支払基金)という団体に送られ、そこでの突合審査を経て、健保組合等に病院や薬局への支払が請求される流れです。

支払基金にデータが流れていれば、マイナポータルで診療と薬剤の情報が確認できます。しかし、とくに薬剤情報については、支払基金を経由せずに審査・支払を行っている健保組合も少なくないのです。

「直接審査」という仕組みで、法的にも認められているのですが、そういう組合の加入者は、マイナポータルをいくら見ても、自分の薬剤情報が確認できません。

出してはいけない薬が投与される可能性も?

薬剤情報を病院や診療所、薬局等でも確認できるようになることで、重複投薬や併用してはいけない薬を出してしまうことが防げます。これも直接審査の場合はできないため、マイナ保険証の義務化を急いでは、将来に禍根を残す懸念が拭えません。

法的に認められているのにマイナ保険証は非対応?

健保組合が直接審査を採用するのは、支払基金を通じるよりも事務処理が素早くでき、手数料も安く済むためです。病院等との紛争処理ルールの取り決めが必要であるなど、手続きに煩雑さがあることから、広く普及するところまでは至っていません。
健康保険法第76条では、▽保険者(健康保険組合などのこと)は病院や薬局から費用の請求があったときには、審査の上、支払う▽審査・支払の事務を支払基金に委託できる……とされています。
健康保険法は、直接審査の方が本筋で、面倒だったら支払基金に任せてもいいよ、という建付けです。それなのに現状では、直接審査を利用していると、マイナポータルの利点が生かせない制度になっています。

直接審査をやめた健保組合もある

直接審査を取り入れていた日産自動車の健保組合は、マイナポータルで服薬情報の確認ができないことなどを理由に、2022年8月調剤分を最後に、直接審査をやめています。一方、トヨタ自動車の健保組合では、直接審査の対象となる薬局での調剤については、情報の閲覧ができないことを健保サイト上に明示し、注意喚起しています。

本来、法的に認められた方法で審査・支払が行われている以上、国は、直接審査による薬剤情報もマイナポータルで閲覧できるように仕組みを整備すべきです。このような欠陥を放置したまま、マイナ保険証を実質義務化し、従来の保険証を全廃しようとするのであれば、やはりそれは拙速と言わざるを得ないのではないでしょうか。

なお、私個人はマイナ保険証そのものには賛成です。細かな点の整備を怠って、拙速に物事を進めようとする姿勢を批判しています。

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