現在でも多くの企業では、60歳定年制を設けています。
65歳までの雇用継続義務があり、70歳までについても努力義務があるわけですが、60歳を過ぎれば雇用はあっても収入はガックリ落ちるのが普通です。
そしてその後は年金収入と貯えの取り崩しで生活していくことになるので、まかり間違っても投資で損はできない状況となります。
ですから、教科書的には60歳を過ぎたらリスクを取るな、と言われるわけです。
FP(ファイナンシャルプランナー)100人に相談してみたら、特段の事情(数億円の遺産を相続しているとか)がない限り、100人全員がそう言うでしょう。
投資系YouTuberですら、60歳を過ぎてリスクを取りに行くのはお勧めしないと言っています。
リスクを取らないことのリスクはないだろうか?
でも、ちょっと考えてみてください。
60歳を過ぎて、その後の生活に十分と思える程度の貯えができていない場合、どうしたら良いのでしょうか。
そういう人、いますよね。私もそうなるかもしれません(というか、なりそう)。
それに、資産のすべてを銀行預金と個人向け国債とかの安全(=低金利)商品で固定し、年々着実に食いつぶしていくだけでそれを「安心」と呼ぶのが適切なのか、疑問も残ります。
人生100年時代だとすると、60歳から先に40年もあるのですから!
長生きと老後資金不足と超々低金利に打ち勝つには
オプション取引の価格形成理論となった「ブラック=ショールズ公式」を編み出した金融工学者フィッシャー・ブラックは下記のように言っています。
一般に若い時にはたくさんリスクを取り、年を取ってから減らせとアドバイスされることが多いが、このやり方は期待リターンを増やさずにリスクを増やしていることになる。(※)
どの時期にも等しいリスクがあるとすれば、年齢に関係なく常にリスク・エクスポージャーを一定にしておくべきである。(※)
リスクを取らないリスクもある、ということを考えると、60歳だろうが70歳だろうが、一定のリスクを取らないとむしろマズいのではないかということですね。
続きます。
(※)「金融工学者フィッシャー・ブラック」(ペリー・メーリング著、今野浩・ 村井章子訳、日経BP)