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これまでも何度かDXについて書いてきましたが、DX(デジタル・トランスフォーメーション)という言葉だけが独り歩きするという状況を危惧しています。「デジタル化の本質を理解すること」が重要なのです。デジタル化の本質を理解すれば、仕事の時間配分が大きく違ってくるはずです。
DXというのは、経産省の定義によれば「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」です。
これまで何度も書いていますが、DXは目的ではなく手段にしかすぎません。経産省の定義を読むと目的のようにも見えますが、その実態はIT化・デジタル化という手段です。単なる手段しかすぎないものを目的とはき違えてしまうことで、DXという言葉だけが独り歩きし、「DXが流行っているからうちの会社も導入しなければ」という風潮が生まれるのです。DX自体が目的ではありません。自社が抱える課題や問題を解決するうえでDXという手段が役に立つのかどうかということです。DXが自社が抱える課題や問題を解決してくれるかを判断するためにはDXの本質を理解することが必要になるのです。
1.コロナ収束後の会社組織と働き方
コロナ以前からDXの必要性・重要性は指摘されていましたが、コロナ禍でテレワーク・リモートワークの導入が浸透しDXが加速しました。
DXの1つの意義は「ITの浸透により、人々の生活をより良い方向に変化させること」です。ビジネスで言えば、「デジタル技術・IT技術、デジタルビジネスモデルを用いて、組織を変革し業績を改善すること」ですが、それによって顧客や従業員その他のステークフォルダー、さらに社会をより良いものにすることです。
いずれにせよ、世の中や社会、企業や組織をより良いものに変えていくためには、一人ひとりがそのことを意識しながら日々の営みに取り組んでいくことが求められるのです。
(1)組織はよりフラット化し、関係性も大きく変わる
組織や事業はこれまでのピラミッド型からフラットなプロジェクト型に変わっていきます。上意下達で上の指示命令を下へと伝えていく「上司―部下」のビラミット型の組織から、チームとして協働して1つの目的を達成していくというフラットなプロジェクト型に移ってきています。フラット化することで、1人当たりの「つながり」や「コミュニケーションパス(経路)」は飛躍的に増えています。
(2)異分野の知見を持ち寄ってプロジェクトを進めていく
一つのチームとして一つのプロジェクトを進めていくためには、異分野のあらゆる知見が必要なことは言うまでもありません。これまでは交流機会のなかった異種の人材間で協力・連携しながら、一つの商品やサービスを作り上げる必要が生まれてきています。
(3)価値創造する場所全てが、オフィスになる
これまで仕事はオフィスでするものと考えられてきましたが、オフィスという言葉を「人が価値創造するための広義の場」ととらえるならば、自宅やカフェ、オンライン上のコミュニティさえも価値を生むことができればオフィスとして認められるようになります。コロナ禍で、リモートワークが導入され、多くの人がリモート体験しました。コロナ収束後はこの体験を生かしながら、会社か在宅かといった狭い視野ではなく、価値創造できる場所であればどこでもいいので自分でワークプレイスを選ぶことができるというように、広義のオフィスの本質に立ち返ることが大切です。
(4)多くの仕事がデジタル情報のまま実行・完結
ペーパーレスということが言われてかなりの時が経ちますが、実際のところなかなか進んでいません。コロナ禍で、ハンコを押すためだけに出社するという紙仕事の欠点が露呈しました。そうした背景もあり、行政手続きなどで多少の「脱ハンコ」が進みましたが、ペーパーレス化はまだまだ先のようです。しかし、デジタル化が進んでいけば、仕事をデジタルの状態で受けて実行・完結できる機会も増えていきます。同時に、紙や文具・重機に頼らなくなることで、関節時間や間接コストが自然と減っていくことにも気付けるようになります。
(5)デジタル化で、仕事の比重や質が大きく変わる
DXという言葉が先行し、デジタル化で具体的に何が変わるのか、どのような良いことがあるのかといったことがきちんと伝わっていません。その点は、デジタル化の恩恵をどのレベル、どういう立場で見るかによって、違ってきます。仕事やタスクの面で見れば、時間的な内訳が大きく変わります。具体的には、知的労働は「探す」「考える」「作る」「伝える」というプロセスで構成されますが、それぞれの段階でデジタル化の恩恵を受けるのです。「探す」では検索ツールを使うことで、「作る」ではテンプレートや共有資料を活用することで時間を圧倒的に短縮することができます。「探す」「作る」というプロセスで時間を短縮できた結果、「考える」「伝える」というプロセスに時間をかけることができます。じっくりと時間をかけて考えることで自分の理解や洞察が促進され、「伝える」ことに時間をかけることで、他人への共感が促進され、より良い人間関係・信頼関係が構築され、やる気が高まり仕事の質や成果も向上します。
2.中小企業にとってのDX
ここに書かれていることだけを見ると、DXは良いことばかりのような気がしてすぐに飛びつきたくなります。確かにDXの必要性・重要性は否定しませんが、特に中小企業の場合、自社のどのような課題や問題があるのかを把握し、その解決のためにDXは有用かを検討し、必要な範囲でのみDXに取り組むという姿勢が重要です。
別段、既存事業の効率化、データの統合、基幹システムの刷新の必要性を否定しているわけではなく、デジタル技術の活用という視点から新ビジネス・サービスを考えていくアプローチを否定しているわけでもありません。あくまでも経営の関心は、競争優位を確立すること、ビジネスを成長させること、市場から退場させないこと(生き残りをかけた戦いに勝つこと)で、それに限界を感じたら新規事業への進出・転換を目指すことです。そうした目的を達成する手段の一つがDXでありIT化、デジタル化なのです。
目的達成のために必要であるならば、必要な範囲でデジタル化やDXに取り組めばいいですし、目的達成に必要がなければ、現段階では敢えて取り組む必要はありません。
DXに取り組むというのは極めて大変なことです。人任せにはできません。経営者が率先して取り組み全社を巻き込む必要があります。自社で自立し、自走しなければなりません。DXの人材も自社で育成しなければならないのです。何も考えずに、流行りだからと飛びつけば、自分の首を絞めることにもなりかねません。DXを導入するなら慎重に考えてそれ相応の決意をもって導入してください。