介護離職で失うのは給料だけではない

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「親の介護が始まったら、仕事は続けられないかもしれない」
そう感じたとき、多くの人が最初に思い浮かべるのは、やはり給料が止まることだと思います。

もちろん、それはとても大きな問題です。
でも実際には、介護離職で失うものは給料だけではありません。

総務省の令和4年就業構造基本調査では、介護・看護のために直近1年間で前職を離職した人は10.6万人でした。介護離職は、決して特別な誰かだけの話ではありません。だからこそ、「辞めたら収入が減る」だけで考えるのではなく、その先に何を失いやすいのかまで見ておく必要があります。

いちばん目に見えやすいのは、今の収入が崩れること

まず分かりやすいのは、今の家計への打撃です。

厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査では、一般労働者の賃金は55~59歳で46万5,900円となっています。単純に12か月で見ると、約559万円です。ちょうど親の介護が始まりやすい年代が、自分の収入面ではピーク帯にあるということです。

しかも、在職中に介護休業を使えたとしても、介護休業給付は休業開始時賃金日額の67%相当額です。平均賃金をそのまま当てはめた単純計算では、1か月あたりの差額は約15万円、3か月で約46万円の減少になります。さらに、生命保険文化センターの2024年度調査では、介護にかかる費用は一時的な費用が平均47.2万円、月々の費用が平均9.0万円とされています。月9万円なら、1年で108万円です。つまり介護は、「収入が減る時期に、支出が増えやすい」という形で家計を直撃しやすいのです。

本当に痛いのは、「次の収入」が元に戻るとは限らないこと

介護離職を考えるとき、見落とされやすいのがここです。
辞めたあと、また働けばいい。
そう考えたくなる気持ちはよく分かります。
でも、いったん仕事を離れた後に、同じ収入水準へ戻れるとは限りません。

厚生労働省の令和5年雇用動向調査では、2023年の転職入職者全体では、前職より賃金が「増加」した割合が37.2%、「減少」した割合が32.4%でした。
ところが、55~59歳では「増加」27.7%に対して、「減少」34.3%で、減少が増加を6.6ポイント上回っています。これは介護離職者だけの数字ではありませんが、少なくとも50代後半の再スタートでは、前の賃金水準に戻すのが簡単ではないことを示す目安にはなります。

つまり、介護離職で失うのは「今月の給料」だけではありません。
将来の earning power(稼ぐ力)そのものが弱くなる可能性があるのです。

辞めると、働きながら支えるための制度も一緒に失いやすい

もう一つ大事なのは、会社に在籍しているからこそ使える制度です。

厚生労働省の資料では、介護休業は「介護の体制を構築して、働きながら対応できるようにするために一定期間休業するもの」と整理されています。対象家族1人につき通算93日、3回まで分割可能です。つまり介護休業は、長い介護生活のすべてを休業でまかなう制度ではなく、最初の体制づくりのための時間を確保する制度という位置づけです。

また、介護休暇は、通院の付き添い、介護サービスの手続き、ケアマネジャーとの打ち合わせなどに使える制度で、対象家族1人なら年5日、2人以上なら年10日、しかも時間単位でも取得できます。働いているからこそ、こうした制度を組み合わせて、仕事と介護を両立する余地が生まれます。逆に、先に辞めてしまうと、失うのは給料だけではなく、働きながら支えるための選択肢そのものになりやすいのです。

そして最後に、自分自身の老後資金にも響いてくる

介護離職の影響は、目の前の生活だけで終わりません。

いちばん収入が高くなりやすい時期に仕事を離れると、その分だけ、

貯蓄
投資
保険の見直し
自分の老後資金づくり

に回せる余力も小さくなります。

生命保険文化センターの2025年度調査では、夫婦2人の老後の最低日常生活費は平均月23.9万円、ゆとりある老後生活費は平均月39.1万円となっています。親の介護で仕事を手放すことは、親を支えるための決断である一方で、自分自身の老後の土台を削る決断にもなり得るのです。

だから私は、介護離職の損失は今の給料だけではなく、

次の給料
働きながら支える制度
自分の老後の備え

にまで広がると考えています。

では、どう考えればいいのか

ここで誤解してほしくないのは、私は「絶対に辞めてはいけない」と言いたいわけではない、ということです。
本当に状況が厳しければ、退職が必要になることもあります。

ただ、少なくとも避けたいのは、最初のパニックの中で、急いで辞めることです。

介護休業や介護休暇の制度は、まさにその「最初の混乱」を少し落ち着かせるためにあります。まずは時間をつくり、親の状態を見極め、介護保険や家族の役割分担を整理し、それでも本当に仕事継続が難しいのかを考える。
この順番がとても大切です。

今やっておきたいことは3つ

1.退職の前に「使える制度」を確認する
介護休業、介護休暇、短時間勤務、残業制限、相談窓口。
在職中だからこそ使える制度があります。先に辞めてしまうと、その選択肢も失いやすくなります。

2.6か月から1年の家計をざっくり試算する
今の収入、休業時の給付、介護費用、生活費。
この4つを並べるだけでも、感情だけで判断しにくくなります。平均値ベースでも、収入減と介護費用増が同時に起こりやすいことは見えてきます。

3.親の介護準備と自分の働き方を一緒に考える
親のことだけ考えると、仕事を手放す方向に傾きやすくなります。
でも本当は、親の介護準備と、自分の収入防衛はセットです。
ここを一緒に整理しておくと、最悪の選択を避けやすくなります。

まとめ

介護離職で失うのは、給料だけではありません。
今の収入が減り、次の収入も元に戻りにくくなり、働きながら支える制度を手放し、その先には自分の老後資金への影響まで広がっていきます。

だからこそ、親の介護が始まったときに大切なのは、「辞めるか、辞めないか」だけを急いで決めることではありません。

まずは、使える制度、家計への影響、親の状態、家族の役割、自分の今後の働き方を整理することです。

親の介護と自分の仕事、両方をどう守ればよいのか分からない。
介護離職だけは避けたいけれど、何から考えればいいか迷っている。
そんな方は、一人で抱え込まず、早めに整理しておくことが大切です。

一緒に頑張っていきましょう。

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