AIの職場への影響

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JILPT(労働政策研究・研修機構)が、「金融業におけるAI 技術の活用が職場に与える影響 ―OECD共同研究― 」を発表しました。本日は、この中から、「第6 章 主要な事実発見と論点および今後の課題」を見ていきたいと思います。

本内容は、AI が職場に及ぼす影響とは何かを検討することが主要な目的とし、金融業4 社に対するインタビュー結果からまとめられています。

労使協議までは実施せず

AI導入に際しては、対象部門内の説明会に留まり、労使協議までは実施していません。

理由は、AI は特定の部門の限られた従業員の業務に活用すること、現時点においては従業員の雇用、賃金や労働条件に影響を及ぼしていないことの2つです。

説明会では、数社において、自身の仕事が奪われるかもしれない、といった否定的な意見が出たようです。AIが人の仕事を奪うような情報が一部ありますので、この辺りは、丁寧に説明する必要がありそうです。

効率化の程度はまだ不透明

各社のAI導入による効率化の状況は以下のとおりです。

A 社:
住宅ローン仮審査業務の効率化、審査基準の均一化、審査時間の短縮による顧客利便性の向上といった効果があるが、正確に効果の程度は分からない。

B 社:
事故車両画像からの修理費見積へのAI 技術の活用は、業務効率化に貢献しているが、事業全体に大きな影響はない。

C 社:
AI が将来的なアドバイザーの人材確保難への対応、多様化する顧客ニーズへの対応、業務効率化、対応品質の向上に対して、一定の役割を果たしているが、その程度は明らかでない。

D 社:
AI による一定程度の業務効率化が進んでいるが、貢献の詳細については分からない。

AI導入は、一定の効率化に寄与しているものの、大きな変化までには至っていないようです。

タスクの補完にとどまる

各社の具体的なAI導入の業務は次のとおりです。

A 社:
住宅ローン仮審査の「可決」「否決」「保留」を判断するタスクをAI 技術が代替。これにより、審査担当者は、「保留」の処理と本審査業務に特化。最終的に人による判断は必要。

B 社:
外板を損傷した事故車両の修理費見積というタスクを代替。修理費見積の最終判断は人が実施。

C 社:
顧客の問い合わせに対する紙ベースのマニュアルを確認するタスクを代替。現状は、AI の精度に課題が残っているため、適宜、人が紙ベースのマニュアル確認を実施。

D 社:
顧客対応に必要な情報収集というタスクの一部を代替。営業自体は人が対応。

このように、AIは、これまで人が対応していたタスクの一部を代替しています。しかし、まだ人の業務を補完する位置づけです。

人の仕事が少し変化

AI導入により、人の仕事はどう変わったのでしょうか。

A 社:
AI 導入により、人は「保留」の処理と本審査という判断を要するタスクに従来よりも注力。また、AI の判断結果を理解して説明するスキルと知識が必要となった。人の経験と勘の保全も必要となった。

C社:
人は、AIに学習データを入力する業務や企画会議が増えた。

D 社:
AI による業務効率化で、人は顧客サービスの向上に割ける時間が増加。また、AI の判断結果を理解して説明するスキルと知識が必要となった。

まとめ

AI含めデジタルを活用していくことなしに、時代を乗り越えていくことはできません。しかし、まだAIは人の仕事を一部補完するにとどまっています。AIを過度に期待せず、状況を冷静に見ながら、使える技術を積極的に取り入れていく姿勢が大事なようです。

今後のAI技術の進展如何では、導入前の労使協議も考えておく必要があります。

最新技術をうまく使うことで、働き手がより高度な判断が求められる業務にシフトし、働き手も会社も成長していく、そんな好循環を目指したいものです。


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