JILPT(労働政策研究・研修機構)が、調査シリーズ No.225『自動化技術の普及による雇用の代替可能性に関する個人調査』を発表しました。
自動化技術の導入が働き方にもたらす影響を把握するために、就業者個人を対象とした、業務(タスク)、雇用形態や職業、産業、役職などの就業状況、コンピュータスキル、 情報通信技術の利用頻度に関する調査です。
本日は、「第5章 個人属性や就業状況による自動化確率の違い」を見ていきます。
職業別
自動化の確率が低い職業トップ10は、次のとおりです。AIに置き換わりにくい職業とも言えます。
1.司法警察職員
2.法人・団体管理職員
3.管理的公務員
4.船舶・航空機運転職
5.教員
6.生産設備制御・監視職(金属製品)
7.自衛官
8.製造技術者(開発)
9.研究者
10.生産関連事務職
高い専門性、技術職、公的職業が目立ちます。
自動化の確立が高い職業トップ10は、次のとおりです。AIに置き換わりやすい職業とも言えます。
1.商品販売職
2.生活衛生サービス職
3.販売類似職
4.接客・給仕職
5.宗教家
6.農業関連職
7.飲食物調理職
8.美術家,デザイナー,写真家,映像撮影者
9.営業職
10.機械組立職
消費者向けの産業で働く販売職やサービスが目につきます。一方、芸術家や営業職も含まれており、少し意外な感じも受けます。
産業別
自動化の確率が低い産業トップ10は、次のとおりです。
1.公務
2.教育、学習支援業
3.情報通信業
4.職業紹介・労働者派遣業
5.医療・福祉
6.その他のサービス業
7.輸送用機械器具製造業
8.廃棄物処理業
9.鉱業、採石業、砂利採取業
10.電気・ガス・熱供給・水道業
公的、専門性、技術に関係する産業です。
自動化の確立が高い産業トップ10は、次のとおりです。
1.洗濯・理美容・浴場業
2.持ち帰り・配達専用飲食業
3.卸売・小売業
4.宿泊業・飲食店
5.物品賃貸業
6.農業、林業
7.自動車整備業
8.家事、冠婚葬祭など生活関連サービス業
9.旅行業
10.娯楽業
消費者向けのサービス業が目立ちます。
以上の結果から、専門性が高いまたは公共性の高い仕事は自動化されにくい、つまりAIに置き換わりにくく、消費者向けの仕事は置き換わりやすいと言えそうです。
年齢別
自動化の確率が低い年齢は、男性は35-44 歳、女性は25-34 歳です。
自動化の確率が高い年齢は、男女共に、15-24 歳です。
男性は35-44歳、女性は25-34歳の層が、専門性が高く複雑な仕事を担っていると言えそうです。
勤務先数別
自動化の確率が低い社数は、1社です。社数が上がるほど自動化の確率は高まり、5社以上が最も高くなっています。
転職が多いと、自動化し易い業務に従事する可能性が高いと言えそうです。1社で長く働く方が、自動化されにくいとは、暗黙知が必要な仕事の比率が高まるということなのでしょうか。
キャリアタイプ別
最も自動化の確率が低いのは、「⼀つの企業・組織に⻑く勤め、次第に管理的な地位になるキャリア」です。
最も自動化の確率が高いのは、「いくつかの企業・組織を経験して、ある仕事の専⾨家になるキャリア」です。
理由はわかりませんが、一つの企業で管理的な仕事に就く場合、仕事の標準化がしにくく、複数の企業で通用する専門性というのは標準化し易いということなのでしょうか。
自己啓発の時間別
最も自動化の確率が低いのは、「1か月に10時間、自己啓発を実施している方」です。
最も自動化の確率が高いのは、「自己啓発していない方」です。
PC、ICT 利用
最も自動化の確率が低いのは、「業務上、上級程度でPCのスキルが必要な方」です。
最も自動化の確率が高いのは、「業務上PCのスキルが必要ない方」です。
まとめ
ここまで自動化の難易度を見てきました。言い換えると、AIへの置き換わりやすさです。
AIに置き換わりにくい仕事には、常に高度な判断が求められ標準化しにくいといった特徴がありました。専門的、対人系の仕事というだけでは、AIに置き換わられる可能性があります。
一方、産業や職業に関係なく、自己啓発を行う、PCスキルを伸ばすことが、その人の仕事をAIに置き変わりにくくすることも分かりました。
皮肉にも、AIにより、人が持つ力を最大限に活かすことが求められています。