何事にも終わりはありますよね。
いま自分が迎えつつある「終わり」は、組織人として第一線の管理責任者という役割の終わりです。
正直に言うと、僕は“続けること”の方が得意で、“終わらせること”があまり得意ではありません。サッカーは今も続けていますし、40歳まで乗っていたウインドサーフィンの道具もロフトにしまったまま。どうやら「終わる=手放す=失う」という思い込みが自分の中にずっとあったようです。
だからこそ、「終わること」は苦痛でした。
続けていた方が気持ちとしてはラクなんです。
でも、会社という組織の中では、オーナー社長でない限り、誰にでも必ず“役割の終わり”が訪れます。
「おいおい、オレはまだバリバリやれるぜ」と言ってみても、
「はいはい、ゲームオーバーね」と横にスッとどかされる。
最初は受け入れがたかったですね。
「え?まだ成長してるんだけど…マジか」
そう焦り、もがく中でキャリコンの資格を取り、セルフコンサルティングをしていく中で出会ったのが、ウイリアム・ブリッジズの「トランジション理論」でした。
堅苦しいものではなく、まさに“人生の転機の取り扱い方”。
その中で特に腹落ちしたのが、
「終わり」があって、「始まり」がある
というシンプルな考え方です。
当たり前のようでいて、「終わらせるプロセス」にはかなり時間がかかる。
なぜなら、それまで住んでいた“村”を離れるようなものだからです。
そして、“新しい始まり”の前には必ず
ニュートラルゾーンという空白の期間が必要
だということも、この理論は教えてくれました。
「はい終わり!」
「はい次いってみよう!」
なんて、現実にはいきませんよね。
僕も当初は
「終わっちゃう、早く次を探さなきゃ」と焦っていました。
でもこの理論に触れて、
「終わらせるには時間がかかるらしいから、時間をかければいい」
と、力が抜けました。
ありがたいことに、役職定年延長中の異動という、社内で例のない機会をいただきました。その2年間でやり切るべきことをやり、ようやく「現役ビジネスパーソンとしての最前線」という役割を終わらせることができた気がしています。
少なくとも、あの「終わっちゃう、失っちゃう」という空虚感はなくなりました。
おそらく、ニュートラルゾーンの混沌とした時間にどっぷり浸かったからでしょう。やっぱり時間は必要だったんです。
そして次は「始まり」だ! …と思いきや、ブリッジズさんはこう言います。
始まりは、印象に残らない形で静かに始まっている。
「よし今日から新しく始めるぞ!」
という派手な合図はない。
そう思うより前から、すでに始まっている——と。
なるほど、と納得しました。
あれはもう「始まり」の一部かもしれませんし、
あるいは、まだ始まりきっていないのかもしれません。
どちらにしても、焦りそうになったところで、この一文を読んでニヤリとしました。
「私はまだ完全に生まれ変わっていませんが、まあそのうちに」
まさにそんな感じで、役職定年まで残り1年を切ったカウントダウンを過ごしています。
ウイリアム・ブリッジズ
『トランジション ― 人生の転機を活かすために』より
【トランジションを迎えている人のためのチェックリスト】
□ 焦らない
□ 「とにかくなんとかしなくちゃ」と動かない
□ 些細なことでも自分のやり方を大切にする
□ 変化の良い面と悪い面の両方に配慮する
□ 話し相手を見つける