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Chapter6
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「あの日何があったのか全部思い出した」
車を駐め、志帆に全てを話した。
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10年前
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《高知》
「おはよう里奈、ご飯出来たわよ!」
「はーい!」
お母さんの声で食卓に向かう。
「里奈、今日学校どうだった?」
お酒を飲んでいるお父さんの前に座った。
「楽しかったよ!同じクラスのね、しーちゃんと遊んだよ!」
「いいね!新しい子?」
「そうだよ」
「新しい子と直ぐに仲良くなれるなんて偉いね!」
料理が上手なお母さんと、一緒に遊んでくれるお父さん。
親の愛情を独り占め出来て私はなんて幸せなのだろう。
私だけがこの世で特別な存在。
お母さんもお父さんも私だけいればそれだけでいいでしょ?
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ある日の授業終わり、仲良くなったしーちゃんといつも通り公園で遊んでいると、しーちゃんから親がまだ帰ってこないから今日は家で遊ばないかと誘われた。
断る理由もなかったのでしーちゃんの家で遊ぶことにした。
「ここが私のお家!」
しーちゃんの家は綺麗なマンションで、とてもいい匂いがした。
「お邪魔します!」
「おかえり!早かったね!あ、友達?どうぞどうぞ上がって〜」
誰かがいるとは思っていなかったから驚いた。
部屋の奥から出てきたのはしーちゃんのお父さんだった。
しーちゃんのお父さんはスーツ姿で、”真壁勉”と書かれた社員証をぶら下げていた。
「お父さん帰ってたんだ!」
「そう!ちょっと用事があって帰ってきた!でも、また会社に戻らなきゃいけない」
そういうことか。
話が終わるまで待っていると、しーちゃんのお父さんがこちらに目を向けた。
「あなたが里奈ちゃんね?娘からよく話を聞いているよ!仲良くしてくれてありがとう!」
「あ、はい!こちらこそ仲良くさせてもらっています!」
しーちゃんのお父さんはそれだけを言って家を出ようとした。
それを見てしーちゃんがすぐに言った。
「アトリエ部屋も見せたいから鍵借りてもいい?」
アトリエ部屋?何のことだろう。
しーちゃんは彼から赤いキーホルダーが付いた鍵を貰い、しーちゃんのお父さんは仕事場へ向かった。
「アトリエ部屋って何?」
しーちゃんに聞く。
「この近くにお父さんのアトリエ部屋があるの!今から一緒に行こ!」
私たちはしーちゃんの家を出てしーちゃんのお父さんのアトリエ部屋に向かった。
「着いたよ!ここだよ!」
しーちゃんの家から歩いて5分の所にある古いアパートの前に付いた。
中に入ると部屋中に絵がたくさん並べられていた。
床には所々絵具が付いており、キャンバスや色鉛筆、筆などが散らばっていた。
「すごいね!しーちゃんのお父さんお絵描きさんなんだね!」
初めて見る光景でワクワクした。
しーちゃんもたまにそこでお絵描きをしているらしく、それから私も一緒にお絵描きをするようになった。
ある日、描いている途中で眠くなり、いつの間にか眠ってしまった。
目を覚ますと、そこにはしーちゃんとしーちゃんのお父さんがいた。
「おはよう!寝てしまったんだね!親御さんが心配してると思うから送ってあげるね!」
少ししてから私を家まで送ってくれた。
ーーーーーーーーーピンポンーーーーーーーーーー
「こんばんは!真壁です。娘さんがウチで遊んでいる途中に寝てしまったので送ってきました!」
「こんばんは!ご迷惑おかけしてすみません!わざわざありがとうございます。もしかしてしーちゃんのお父様ですか?」
「そうです!いつも娘がお世話になっております!」
そこから親同士が仲良くなり、家族ぐるみでよく遊びに行くようになった。
しーちゃんのお父さんと私の両親が仲良くするようになって心底嬉しかった。
やっぱり私は神に選ばれた人だわ。
しーちゃんみたいに片親じゃない。ちゃんとした両親がいるし友達もいる。
本当に幸せだわ。
いつまでもこの幸せが続くと思った。
あの日までは。
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「里奈!こっちに来て!はい、プレゼント!」
「何これ!嬉しい!この画材セット欲しかったの!ありがとう」
「それとね、里奈に大事な話があるの」
またサプライズかな?なんだろう!
お母さんの言葉にワクワクしていた。
「なーに??」
「あのね、里奈に弟が出来るのよ!今お母さんのお腹には赤ちゃんがいるの」
え?
その言葉が一瞬にして私の幸せを奪った。
許せない。