「先が見えない」──誰もが口にするその言葉。
空に雲がかかったような曖昧な影が、人々の胸を重くしていた。
未来は誰にも分からないはずなのに、
その「分からなさ」こそが恐れを生み、
希望よりも不安を選ばせてしまう。
人の耳元で、不安の番人がささやく。
「きっと悪くなる」
「努力しても無駄だ」
「未来はお前を裏切る」
その囁きはやがて、心の法廷に響き渡った。
そこに現れるのは、悪徳裁判官。
彼は冷たい目で人間を見下ろし、槌を振り下ろす。
「有罪──。
お前の未来には希望などない。
待っているのは失敗と後悔だけだ」
判決を聞いた瞬間、人はうつむき、胸に影を宿す。
誰もその判決を疑わない。
むしろ「そうだ、きっとそうだ」と受け入れてしまう。
だがそのとき、法廷の片隅に、
誰にも気づかれぬまま静かに座る影があった。
裁くことも、囁くこともしない。
ただ沈黙のまま、人の未来が白紙であることを知っているような気配。
その存在に気づいた者はいない。
けれど確かに、そこには裁判官とは違うまなざしがあった。