朝、画面に映るのは暗い見出しばかり。
赤や黒の文字がせわしなく切り替わり、
専門家の声が淡々と流れていた。
「影響が続くでしょう」
「さらなる懸念があります」
はっきりした答えは示されないのに、
その曖昧さが人の心に影を落としていく。
駅に向かう道でも、同じ空気が漂っていた。
無言のまま歩く人々の表情。
電車の中、画面を覗き込み、眉をひそめる視線。
隣にいる誰かの不安が、知らぬ間に伝わってくる。
職場の会議では、言葉がなかなか出てこない。
沈黙の時間だけが伸び、
誰もが胸の奥で同じ問いを抱えていた。
「これから先、本当に大丈夫なのか」
その不安は数字でも記事でもなく、
互いの仕草やため息の中で増幅されていく。
暗がりから眺める不安の番人は、
冷たい笑みを浮かべながらささやいた。
「人間は未来を知らぬ。
だからこそ、自分の影で未来を黒く塗りつぶすのだ。
私はただ、その影を撫でてやるだけでいい」
その声は誰の耳にも届かない。
けれど確かに、月曜の空気に混じり、
一日のはじまりを静かに曇らせていた。
──そして番人は知っていた。
不安を植えつければ、やがて人は互いを比べはじめる。
沈黙は重くなり、孤独の影が濃くなる。
今日の種は、明日以降の闇を呼ぶ。