契約書などの作成は、ビジネスや個人の権利を守る上で非常に重要な行為です。そのため、無資格者が報酬を得てこれらを代行することは、法律で厳しく禁じられています。
無資格者が契約書等を作成した場合、その状況(法的な争いがあるかどうか等)によって、主に「行政書士法違反」または「弁護士法違反(非弁行為)」のいずれかに問われることになります。
1. 行政書士法違反になるケース(一般的な契約書の作成)
契約書、示談書、念書、協定書などは、法律上「権利義務に関する書類」と呼ばれます。法的な争いやトラブルに発展していない段階で、当事者の合意内容を書類にまとめる行為は、行政書士の独占業務です(または弁護士も可能)。
無資格者が「他人の依頼を受け」「報酬を得て」「業として(反復継続して)」これらの書類を作成すると、行政書士法違反となります。
該当する違法行為の例
経営コンサルタントが、顧客企業の業務委託契約書を報酬を得て作成した。
無資格の個人が、クラウドソーシングサイト等で「契約書作成代行」を請け負い、料金を受け取った。
「書類作成代は無料」としつつ、実質的に契約書作成の対価を含む「コンサルティング料」などを請求した(※2026年の法改正により、名目を問わず違法となります)。
罰則(行政書士法第21条など)
個人に対する罰則
1年以下の懲役または100万円以下の罰金。
法人に対する罰則(両罰規定)
2026年(令和8年)1月施行の法改正により、違反行為を行った個人のみならず、その者が所属する法人(会社)に対しても100万円以下の罰金が科されるようになりました。
2. 弁護士法違反(非弁行為)になるケース(法的な争いがある場合)
作成する契約書や示談書が、すでに発生している法的なトラブルや紛争を解決するためのものである場合、あるいは当事者間の交渉を代理して行う場合は、弁護士でなければ扱うことができません。
無資格者が報酬を得て、法的な見解を述べて契約内容に介入したり、示談の交渉から書面作成までを請け負ったりすると、弁護士法第72条の「非弁行為(非弁活動)」に該当し、より重い罪に問われます。
該当する違法行為の例
離婚の慰謝料や財産分与で揉めている夫婦の間に無資格者が入り、交渉をまとめた上で離婚協議書を作成し、報酬を受け取った。
交通事故の示談交渉を無資格者が代行し、示談書を作成して手数料を取った。
罰則(弁護士法第77条)
2年以下の懲役または300万円以下の罰金。
依頼する側・される側のリスク
無資格者による契約書作成は、刑事罰の対象になるだけでなく、以下のような重大なリスクを伴います。
契約書の法的効力・精度の問題
無資格者が作成した契約書は、法的な要件を満たしていなかったり、当事者の一方に著しく不利な条項が含まれていたりする危険があります。いざトラブルになった際、その契約書が法廷で証拠として十分に機能しない可能性があります。
依頼者側のコンプライアンス違反
企業が違法と知りながら無資格者(無資格のコンサルタント会社など)に契約書作成を外注した場合、企業のコンプライアンス(法令遵守)体制が厳しく問われ、社会的な信用を失うリスクがあります。
まとめ
報酬を得て契約書を作成することは、明確な「法律専門職の業務」です。
争いがない一般的な契約書の作成 → 行政書士(または弁護士)
法的な争いや交渉を伴う契約書・示談書の作成 → 弁護士
「少し文章をまとめるだけだから」「安く済むから」と安易に無資格者に依頼したり、逆に無資格で請け負ったりすることは、重い刑事罰に直結する違法行為であることを十分に認識する必要があります。