ラーメン屋さんでは、とても良くしてもらえた。
前にも書いた通り、物凄く忙しいお店だった。
15時が終わったら、賄を出してくれて御飯中、店主さん夫婦の会話を聞いたり、話たりするのがとても楽しかった。
そして17時からも頑張れた。
たまに怒られながらも、それでも、そこにはちゃんと「愛情」というのが感じられた。
夜遅くなった時は、奥さんが家まで送ってくれたりした。
そして、カラオケなどにも誘ってくれたり、私の知らない楽しさを教えてくれたりした。
なにせ、お金を取られているから、カラオケやボーリングなどには全く縁がなかったのだ。
多分、普通の17歳なら、みんなが経験していることなんだと思う。
そして、給料支給日になると、店主はいった
「お前の母さんのことは知ってる、だから1万円少なく調整してるから、これ…」
といって、私に茶色い封筒を渡した。
そこには
「一万円」
が入っていた。
その気持ちがとても嬉しかった。
なにを買おうか!
と思ったが、
何かを買っていくとバレる。
咄嗟にそう思った。
だからお金を持っていても、なにも買えなかった。
服や自分の好きなもの
好きなこと
自分の好きなことにお金を使えなかった。
だから私は、その店の店主夫婦に、プレゼントをすることにしていた。
そんな大したものは送れていないが。
ビールだったり(当時は未成年でもお酒を買えた)
タバコだったり。
当時店主さんが好きそうなものをプレゼントしていた。
家に帰っても、財布は母親に見つからないようにしていた。
ところが…。
なにを思ったか、私が寝ている隙に財布を見たらしい。
次の日、なんでお金があるのかを聞かれたが、店主さんのことは絶対言わない!と私は口を継ぐんだ。
しかし、母親の感は鋭いもので、「給料を騙していたのか!」と怒鳴り声を上げ始めた。
そして、また私に手を挙げた…。そして、財布の中から全部の現金を抜き取った。
給料を騙された、それでも、ラーメン屋さんには言えなかったのだろう
休めとも何も言わなかった。
叩きつけられた体を無理やり起こして、自転車でラーメン屋さんに向かった。
私は店主さんたちには、バレたとは言えなかった。
が、しばらくして、私にお金がないのを不審に思ったのか、
「俺の家から店に通うか?調理師免許も取ればいい」
と言ってくれた。
私は、すぐにでも、はい!と返事をしたかったが
今度は店主さんの家まで迷惑をかけることになる…
私は「ありがろうございます。そこまでは大丈夫です」
としか言えなかった。
私が店主さんたちの家に住み込みで働こうものなら、また前の理容店のように家に給料を取りに来たり、もめごとを起こすに違いない。
店主さんご夫婦にもお子さんもいる。
これ以上の甘えは許されないと思った。
そんな毎日の中、私の手はドンドン荒れていった。
家でも店でも休むことのない水仕事に手がもう適応しなくなってきたのだ
気づいた時には、指が曲げられなくなっていた。
関節、爪の間、いたるところが切れていたのである。
私は衛生面なども考えて、休むことにした。
なにせ指が動かない。
私は母親に店主から病院に行けと言われたといって
皮膚科にいった。
そしたら病院の先生は、「2週間くらい水仕事は控えてください」と指の一本一本に包帯を巻きながら言った。
それは、仕事も休めということだった。
私はどうしよう!と思い、ラーメン屋さんに向かった。
理由を聞いた店主さんは
「まず、ちゃんと治しておいで」
と言ってくれた。
他に普段バイトの人を雇っていないから心配だった。
そして家に帰り、母親に状況を説明した。
家のこともできない状態だ、ということを含めて。
そして、母親の顔を見ると
なにか嬉しそうな顔をしていた。
なにを企んでいるのか、私はその顔が怖かった。
二瞬間後、大体指も動くようになってきた。
まだ完璧ではなかったが
明日からバイトいけそうだな、と思っていた。
店主に「長いことお休みしてすみません、明日から行けそうです」
と電話をした。
その翌朝、私がバイトに出ようとすると、母親が「自分も行く」と言い出した。
長いこと休んだから謝りにいかないと、というから断れるわけもなく…
ただ不安だけが増していった。