『何がしたいかわからない』と思い込んでた40代女性が、自分軸を取り戻すまで

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コラム

「良い娘」の違和感


ユウコさんは、ソファに座ると、ゆっくりと言葉を選びながら話し始めた。

ユウコ「ダイキさん、私......なんていうか、ずっと『良い娘』でいようとしてきたんです。母の期待に応えて、ちゃんとした仕事に就いて、真面目に働いて」

ダイキ「真面目に働いて......」

ユウコ「はい。でも、気づいたら......なんだかわからないけど、苦しくなってて」

少し沈黙があった。ユウコさんは窓の外を見つめている。

ダイキ「苦しくなって......今、どんな感じですか?」

ユウコ「......疲れてるんです。ずっと、誰かの期待に応えることに」

その言葉に、静かな重みがあった。

期待という名の鎖


ダイキ「期待に応える、って、具体的にはどんなことだったんでしょう?」

ユウコさんは少し考えてから、ゆっくりと話し始めた。

ユウコ「子供の頃から......母はいつも『ちゃんとしなさい』って言ってました。『気ままに生きるな』って。自由に生きる人を見ると、母は必ず批判してました」

ダイキ「お母さんにとって、『ちゃんとする』っていうのは?」

ユウコ「安定した仕事に就くこと。結婚すること。周りから見て『立派な娘』であること......かな」

彼女の声は、どこか機械的だった。まるで、誰かに与えられた台本を読んでいるかのように。

ダイキ「それって、ユウコさん自身が望んだことでしたか?」

ユウコ「......」

長い沈黙が流れた。ユウコさんは、膝の上で手を握りしめている。

ユウコ「わからないんです。自分が何を望んでいるのか......もう、わからなくなってしまって」

過去から続く物語


ダイキ「ユウコさん、いつ頃から、お母さんの期待を意識するようになったんでしょう?」

ユウコさんは、視線を下に落とした。

ユウコ「......小学生の頃、かな。あるとき、友達の家に遊びに行きたいって言ったら、母に怒られたんです。『忙しいのに、そんな気ままなことしてどうするの』って」

ダイキ「それで?」

ユウコ「それから、遊びに行くことも減って......いつも母の顔色を見るようになりました。怒られないように、がっかりさせないように」

彼女の声は、少しずつ小さくなっていった。

ユウコ「高校を選ぶとき、大学を選ぶとき、就職先を選ぶとき......いつも『母が喜ぶか』を考えてました」

ダイキ「ユウコさん自身の気持ちは?」

ユウコ「......考えたことないです。いや、考えちゃいけないと思ってたのかも」

守られた檻の中で


ダイキ「母の期待に応えることで、何か得られたものはありましたか?」

ユウコさんは少し考えた。

ユウコ「安心感、かな。母に褒められると、ホッとしました。『これでいいんだ』って」

ダイキ「それは大切なものですね」

ユウコ「でも......」

彼女は言葉を探すように、天井を見上げた。

ユウコ「でも、その代わりに失ったものも多かったと思います」

ダイキ「たとえば?」

ユウコ「自分で選ぶ力、かな。いつも誰かの答えを待ってる。自分で決めることが怖くて」

ユウコさんの目に、うっすらと涙が浮かんでいた。

ユウコ「友達が『私、これやりたい!』って目をキラキラさせて話してるのを見ると......羨ましかった。私には、そういう『やりたいこと』がなかったから」

二つの顔


ダイキ「今、ユウコさんには二つの気持ちがあるように聞こえます」

ユウコ「二つの気持ち......?」

ダイキ「一つは、母の期待に応えることで得られる安心感。もう一つは、自分の人生を生きたいという気持ち」

ユウコさんは、ゆっくりと頷いた。

ユウコ「そうです......それが、ずっと葛藤してるんです」

ダイキ「どちらも大切な気持ちですね。安心感も、自分らしさも」

ユウコ「でも、両方は手に入らないですよね......?」

ダイキ「そう思いますか?」

ユウコ「だって、母の期待に応えようとすると、自分を押し殺さなきゃいけないし。自分を優先すると、母を裏切ることになるし......」

彼女の声には、諦めが滲んでいた。

「裏切り」という言葉


ダイキ「今、『裏切る』って言葉を使いましたね」

ユウコ「......はい」

ダイキ「自分の気持ちを優先することは、お母さんを裏切ることなんでしょうか?」

ユウコさんは、しばらく黙っていた。

ユウコ「......そう思ってました。でも、今言われて......なんか、違和感があります」

ダイキ「どんな違和感ですか?」

ユウコ「......自分の気持ちを大切にすることが、なんで裏切りになるんだろうって」

彼女の声のトーンが、少し変わった。

依存という名の関係


ダイキ「ユウコさん、『依存』って言葉、聞いたことありますか?」

ユウコ「依存......アルコール依存症とか、そういうのですか?」

ダイキ「それもありますが、人間関係にも依存ってあるんです。相手の承認がないと自分の価値を感じられない、みたいな」

ユウコさんは、何かに気づいたような表情を浮かべた。

ユウコ「......私、母に依存してたのかもしれません」

ダイキ「もう少し聞かせてもらえますか?」

ユウコ「母に褒められないと、自分に価値がないって思ってました。母が喜ばないことは、やっちゃいけないって......」

ダイキ「今、それを話してみて、どんな感じがしますか?」

ユウコ「......苦しいです。今まで、それが当たり前だと思ってたけど......すごく、窮屈だったんだなって」

独立への恐怖


ダイキ「独立って、怖いですよね」

ユウコ「え......?」

ダイキ「依存していると、苦しいけど安心感もある。でも独立すると、全部自分で決めなきゃいけない。失敗も、自分の責任になる」

ユウコさんは、深く頷いた。

ユウコ「そうなんです......独立したいって思いつつ、同時にすごく怖いんです」

ダイキ「何が一番怖いですか?」

ユウコ「......」

彼女は、手を握りしめた。

ユウコ「母に見捨てられることです」

その言葉を口にした瞬間、ユウコさんの目から涙がこぼれた。

本当の恐怖


ダイキ「見捨てられる......」

ユウコさんは、涙をぬぐいながら続けた。

ユウコ「もし、母の期待に応えなかったら......母は私を見捨てるんじゃないかって。そしたら、私は一人ぼっちになって......」

声が震えている。

ダイキ「......」

しばらく、ダイキは黙ってユウコさんの涙を見守った。

ユウコ「でも......でも、よく考えたら......」

彼女は涙で濡れた顔を上げた。

ユウコ「私、もう大人なのに。なんで、そんなに怖がってるんだろう......」

ダイキ「ユウコさん、今、何に気づきましたか?」

ユウコ「......小さい頃の私が、まだ怖がってるんだと思います。子供の頃は、親に見捨てられたら生きていけなかったから」

彼女の声は、少しずつ落ち着きを取り戻していった。

ユウコ「でも、今の私は違う。自分で稼げるし、自分で生きていける。なのに......その恐怖が、まだ残ってるんですね」

古い脚本


ダイキ「人生を、演劇に例えることがあります」

ユウコ「演劇......?」

ダイキ「そう。私たちは、子供の頃に与えられた『脚本』を、大人になっても演じ続けることがあるんです」

ユウコさんは、興味深そうに聞いている。

ダイキ「ユウコさんの脚本は、『母の期待に応える良い娘』だった」

ユウコ「......そうですね」

ダイキ「その脚本は、子供の頃は必要だったかもしれません。でも、今のユウコさんには合わなくなってきている」

ユウコ「合わなくなってる......」

ダイキ「もし、その古い脚本をシュレッダーにかけて、新しい脚本を書けるとしたら、どんな物語にしたいですか?」

新しい脚本を書く


ユウコさんは、長い沈黙の後、ゆっくりと話し始めた。

ユウコ「......自分で選べる人生、かな」

ダイキ「自分で選べる人生」

ユウコ「はい。小さいことでいいんです。今日何を食べるか、週末をどう過ごすか......そういう小さな選択を、自分の気持ちに従ってしてみたい」

彼女の目に、少し光が戻ってきた。

ユウコ「母の顔色を見るんじゃなくて、『私はこれがいい』って言える自分になりたいです」

ダイキ「素敵な脚本ですね」

ユウコ「でも......急には変われないですよね」

ダイキ「急に変わる必要はないですよ。まずは、小さな一歩から」

自分軸と他人軸


ダイキ「ユウコさん、『自分軸』と『他人軸』って聞いたことありますか?」

ユウコ「なんとなく......」

ダイキ「自分軸は、自分の気持ちや価値観を大切にする生き方。他人軸は、他人の期待や評価を優先する生き方です」

ユウコ「私は、完全に他人軸でしたね......」

ダイキ「どちらかに偏りすぎると、バランスが崩れるんです。自分軸だけだと、周りとぶつかることもある。他人軸だけだと、自分を見失う」

ユウコ「バランス......」

ダイキ「大切なのは、自分の気持ちも、相手の気持ちも、両方大切にすること。それが『相互依存』という関係です」

ユウコさんは、メモを取り始めた。

母との新しい関係


ユウコ「でも、母との関係はどうすればいいんでしょう......」

ダイキ「お母さんとの関係を、どうしたいですか?」

ユウコ「......切りたくはないです。ただ、対等な関係になりたい」

ダイキ「対等な関係」

ユウコ「はい。母は母の人生があって、私は私の人生がある。お互いを尊重し合える関係」

ダイキ「それは、とても健康的な関係性ですね。具体的に、何かできそうなことはありますか?」

ユウコさんは、しばらく考えた。

ユウコ「まず......母の助言は聞くけど、最終的には自分で決める、っていうのを試してみたいです」

ダイキ「いいですね。他には?」

ユウコ「それと......母に、自分の気持ちを少しずつ伝えてみようと思います。『私はこう思う』って」

受容のプロセス


ダイキ「ユウコさん、『受容』って、どういう意味だと思いますか?」

ユウコ「受け入れること......ですよね?」

ダイキ「そうです。でも、受容には二つあるんです。自己受容と他者受容」

ユウコ「自分を受け入れることと、他人を受け入れること......」

ダイキ「はい。面白いことに、自分を受け入れられないと、他人も受け入れられないんです。そして、他人を受け入れられないと、自分も受け入れられない」

ユウコさんは、頷きながら聞いている。

ダイキ「ユウコさんは、お母さんの価値観を受け入れすぎて、自分の価値観を受け入れられなかった」

ユウコ「......そうですね」

ダイキ「これからは、自分の気持ちも受け入れてあげてください。『これが私なんだ』って」

ユウコ「それって......自分を許すってことですか?」

ダイキ「そうかもしれませんね。不完全な自分、迷う自分、失敗する自分......全部含めて、『これが私だ』って」

小さな反抗


ユウコ「実は......最近、小さな反抗を始めてるんです」

ダイキ「おお、どんな?」

ユウコ「母が『今日はこれを作りなさい』って言っても、『今日は私、これが食べたいんだ』って言ってみたり」

彼女は、少し照れくさそうに笑った。

ユウコ「すごく小さいことなんですけど......それだけで、なんか、自由になった気がして」

ダイキ「それは大きな一歩ですよ」

ユウコ「母は最初、驚いてました。でも......意外と、受け入れてくれたんです」

ダイキ「それは良かったですね」

ユウコ「なんか......私が勝手に、母はこうだって決めつけてたのかもしれません。実際に言ってみたら、思ったより理解してくれて」

許しと自由


ダイキ「ユウコさん、今、お母さんをどう思っていますか?」

ユウコさんは、少し考えた。

ユウコ「......前は、母のせいで私の人生が縛られてるって思ってました」

ダイキ「今は?」

ユウコ「母も、母なりに私のことを思ってくれてたんだなって。ただ、その愛し方が......私には重かっただけで」

彼女の声は、穏やかだった。

ユウコ「母を恨んでも仕方ないんですよね。母も、母の親から同じように育てられたんだと思います」

ダイキ「そう思えるのは、大きな変化ですね」

ユウコ「許す、って言うと偉そうですけど......母も一人の人間なんだって、やっと思えるようになりました」

転機という名のチャンス


ダイキ「人生には、いくつかの転機があります」

ユウコ「転機......」

ダイキ「仕事を辞めたこと、実家に戻ったこと......それも転機だったんじゃないでしょうか」

ユウコ「そうですね。でも、最初は失敗したって思ってました」

ダイキ「今は?」

ユウコ「......この転機があったから、自分と向き合えたのかもしれません」

彼女は、少し考えてから続けた。

ユウコ「転機って、辛いけど......新しい自分に出会うチャンスなのかもしれないですね」

ダイキ「まさにそうですね。トランジションっていう言葉があります。人生の転機のことです」

ユウコ「トランジション......」

ダイキ「転機は、古い自分を手放して、新しい自分になるプロセスなんです。だから、苦しいのは当然なんですよ」

これからの一歩


セッションの終わりが近づいてきた。

ダイキ「今日、話してみて、どうでしたか?」

ユウコ「......すごく楽になりました。なんか、自分を縛ってたものが、少し軽くなった気がします」

ダイキ「これから、どんなふうに過ごしていきたいですか?」

ユウコさんは、少し考えてから答えた。

ユウコ「まずは、小さな選択を大切にしていきたいです。『私はこれがいい』って、自分の気持ちに正直になる」

ダイキ「いいですね」

ユウコ「それと......母との関係も、少しずつ変えていきたいです。対等な、お互いを尊重し合える関係に」

ダイキ「素晴らしい目標ですね」

ユウコ「すぐには変われないかもしれないけど......焦らず、自分のペースで進んでいきたいと思います」

エピローグ:新しい脚本


ユウコさんが帰った後、ダイキは窓の外を見つめていた。

親の期待という「古い脚本」を生きることは、安心感をもたらす。でも同時に、自分らしさを奪うこともある。

大切なのは、その脚本を完全に捨てるのでなく、自分なりに書き換えていくこと。

依存から独立へ。そして、真の相互依存へ。

それは、一生をかけて取り組むテーマなのかもしれない。

数週間後、ユウコさんから連絡があった。

「ダイキさん、週末に友達と旅行に行くことにしました。母に相談したら、『楽しんでおいで』って言ってくれたんです」

その声は、明るかった。

新しい脚本は、少しずつ、でも確実に書かれていく。

まとめ:依存から独立への道


このセッションで浮かび上がったのは、以下のようなテーマだった:

親の期待と自分の気持ちの葛藤

「良い子」でいることの代償

自分の価値観を見失うこと

依存関係の認識

承認がないと価値を感じられない

相手の反応に自分の幸せを委ねる

独立への恐怖

見捨てられる不安

失敗への恐れ

新しい関係性の構築

対等な関係

相互依存(自分も相手も大切にする)

小さな一歩から始める

日常の小さな選択から

自分の気持ちを表現する練習

人生の転機は、苦しい。でも、その苦しみの中に、新しい自分と出会うチャンスがある。

古い脚本をシュレッダーにかけることは、親を否定することではない。

それは、自分の人生の主役になる、ということだ。


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