生理前に彼氏が「頼りない」と感じるのは、あなたの体が生存戦略を発動しているから

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「また来た。この感じ」


カウンセリングルームに入ってきたカナエは、いつもより少し疲れた表情をしていた。

カナエ「すみません、今日はちょっと...調子が悪くて」

彼女は椅子に座ると、小さくため息をついた。

ダイキ「無理しないでくださいね。今日はどうされました?」

カナエ「また...なんです。生理前になると、彼のことが急に嫌になっちゃって」

少し恥ずかしそうに、でもどこか困り果てたような表情で、カナエは言葉を続けた。

カナエ「普段は本当に優しくて、一緒にいて楽しいんです。でも...生理の1週間くらい前になると、なんていうか、全部が嫌になるんです。彼の話し方、食べ方、返信の仕方まで」

ダイキ「全部が、ですか」

カナエ「はい。で、『もう無理かも』って本気で思うんです。別れようって。でも生理が終わると、『なんであんなに嫌だったんだろう』って...自分でもわけがわからなくて」

カナエは両手で顔を覆った。

「私、おかしいですよね」


カナエ「友達に相談したら、『PMSじゃない?』って言われて。でも、PMSってイライラするとか、体がだるいとかじゃないですか。私の場合、本当に心の底から『この人とは無理』って思っちゃうんです」

彼女の声には、自分自身への疑問と不安が混ざっていた。

ダイキ「その『無理』って思う時、具体的にどんなことを感じていますか?」

カナエは少し考えてから、ゆっくりと話し始めた。

カナエ「なんか...距離を置きたくなるんです。触られたくない、話したくない。あと、彼のことを『頼りない』って感じるようになって。普段は全然そんなこと思わないのに」

ダイキ「頼りない?」

カナエ「はい。優柔不断に見えたり、決断力がないように見えたり...。でも冷静に考えたら、彼はちゃんと考えて決めるタイプだから、決して優柔不断じゃないんです。なのに、その時期だけは『なんでこの人こんななの?』って思っちゃう」

ダイキは静かにうなずいた。

ダイキ「それは、カナエさん自身も混乱しますよね」

カナエ「そうなんです...。しかも最近、生理前に彼と会うのが怖くて。またあの気持ちになったらどうしようって」

「体が教えてくれていること」


ダイキ「カナエさん、その『別れたくなる気持ち』は、もしかしたらおかしいことではないかもしれません」

カナエ「え...?」

カナエは驚いたように顔を上げた。

ダイキ「女性の体って、排卵から生理までの間、ホルモンのバランスが大きく変わるんです。そして、そのホルモンの変化は、気分だけじゃなくて、人への感じ方にも影響を与えることがあって」

カナエ「人への...感じ方、ですか?」

ダイキ「はい。例えば、排卵の時期って、体は『子孫を残すモード』になっているんですね。だから、本能的に『強そうな遺伝子』を求めるような気持ちが強くなる。でも、排卵が終わって生理前になると、今度は全く違うモードに切り替わるんです」

カナエは、初めて聞く話に少し戸惑いながらも、真剣に聞いていた。

ダイキ「生理前って、体の免疫機能が少し変化する時期でもあるんです。だから、本能的に『安全を確保したい』『リスクを避けたい』という気持ちが強くなる。人との距離も取りたくなるし、いつもより慎重になる」

カナエ「安全を...確保したい?」

ダイキ「そうです。原始時代を想像してみてください。女性にとって、妊娠する可能性がある時期は、とても慎重に過ごす必要があった。特に、生理前後は体が敏感になるから、危険を避けたり、無理をしない方が生き延びやすかったんです」

カナエは、何かが腑に落ちたような表情になった。

カナエ「じゃあ...私が彼を『頼りない』って感じるのも...」

ダイキ「もしかしたら、カナエさんの体が『この人は私を守ってくれるだろうか』って、いつもより厳しい目で見ているのかもしれませんね」

「でも、それって変じゃないですか?」


カナエは少し考え込んだ後、言った。

カナエ「でも...おかしくないですか? 排卵の時は『強い遺伝子』を求めて、生理前は『守ってくれる人』を求めるって。なんか、矛盾してませんか?」

ダイキ「良いところに気づきましたね。実は、それこそが女性の体の賢さなんです」

カナエ「賢さ...ですか?」

ダイキ「はい。子孫を残すっていうのは、ただ生まれればいいわけじゃなくて、その子が無事に育つことまで含まれますよね。だから、排卵の時期には『優れた遺伝子』を求めて、生理前、つまり妊娠初期の可能性がある時期には『安全に育てられる環境』を求める。二つの視点で、パートナーを評価しているんです」

カナエは目を丸くした。

カナエ「そんな...複雑なことを、体が勝手にやってるんですか?」

ダイキ「そうなんです。意識ではコントロールできないけど、ホルモンが、カナエさんの感じ方や判断に影響を与えている。それは何十万年もかけて培われてきた、生き延びるための戦略なんです」

少しの沈黙の後、カナエがぽつりと言った。

カナエ「じゃあ...私の気持ちは、間違ってないんですか?」

ダイキ「間違っているとか、正しいとか、そういうことじゃないと思います。ただ、カナエさんの体が、生理前には普段と違うメッセージを送っているっていうことです」

「だとしたら、私はどうすれば...」


カナエは少し落ち着いた様子で、でもまだ不安そうに聞いた。

カナエ「でも、それがわかったとして...どうすればいいんですか? 生理前になるたびに、彼のことが嫌になって、それを我慢して...っていうのを繰り返すしかないんですか?」

ダイキ「我慢するっていうより、まずは『今は生理前だから、いつもと違う見方をしているんだな』って認識することが大切だと思います」

カナエ「認識...するだけで、変わるんですか?」

ダイキ「全部が変わるわけじゃないけど、少なくとも『私おかしい』って自分を責めることは減るかもしれません。それに、『これは一時的なもの』ってわかっていれば、勢いで別れを切り出すこともなくなるかもしれませんよね」

カナエは小さくうなずいた。

ダイキ「あと、もう一つ。その時期に感じる『頼りない』っていう気持ちも、実は大事なサインかもしれません」

カナエ「サイン...ですか?」

ダイキ「はい。もしかしたら、普段は我慢していることや、気づかないふりをしていることが、生理前になると敏感に感じられるようになっているのかもしれません」

「言われてみれば...」


カナエはしばらく黙って、何かを思い出すような表情をしていた。

カナエ「...そういえば、彼、優柔不断じゃないって言いましたけど、たまに大事なことを決めないで先延ばしにすることはあるんです」

ダイキ「普段はどう感じていますか?」

カナエ「ああ、彼らしいなって。慎重なんだなって。でも、生理前になると、それがすごく無責任に見えて...」

彼女は自分の言葉を反芻するように、ゆっくりと続けた。

カナエ「もしかして...私、本当は少し気になってたのかもしれません。でも、普段は『まあいいか』って流してたのかも」

ダイキ「その『まあいいか』が、生理前になると『やっぱり気になる』に変わるんですね」

カナエ「そうかもしれない...。でも、それって、ホルモンが私の本音を教えてくれてるってことですか?」

ダイキ「一つの見方としては、そうかもしれません。ただ、生理前に感じることが全て正しいわけでもないんです。その時期は、普段なら気にならないことも大きく感じやすくなるから、両方を見てバランスを取ることが大切だと思います」

カナエは深く息を吸って、ゆっくりと吐いた。

カナエ「難しいですね...。でも、少しわかった気がします」

「彼に、伝えてみようかな」


次のセッションの時、カナエは少し明るい表情で来た。

カナエ「この前、彼に話してみたんです」

ダイキ「どんなふうに?」

カナエ「『生理前になると、いつもと違う気持ちになっちゃうことがあるんだ』って。『その時は、少し一人の時間が欲しくなるから、理解してほしい』って」

ダイキ「彼はなんて?」

カナエ「最初は『え、そうなの?』ってびっくりしてたんですけど、ちゃんと聞いてくれて。『じゃあ、その時期はあんまりしつこく連絡しない方がいい?』とか、『会う頻度減らした方がいい?』って、具体的に聞いてくれたんです」

カナエの声には、安心と感謝が混ざっていた。

カナエ「で、『別れたいわけじゃなくて、ただちょっと距離が欲しくなるだけなんだ』って伝えたら、『わかった。その時期は無理に会おうとしないから、落ち着いたら教えて』って言ってくれて」

ダイキ「良かったですね」

カナエ「はい...。あと、『彼が優柔不断に見える時がある』っていうのも、すごく勇気を出して伝えてみたんです。そしたら、『そうか、それは申し訳ない。僕、決めるのに時間かかっちゃうタイプだから、大事なことは早めに相談するようにするね』って」

カナエの目には、うっすらと涙が浮かんでいた。

カナエ「なんか...怒られるかと思ってたんですけど、ちゃんと受け止めてくれて。私、この人と一緒にいたいんだなって、改めて思いました」

「体の声と、心の声と」


ダイキ「カナエさん、今の気持ちはどうですか?」

カナエは少し考えてから、答えた。

カナエ「まだ、生理前になると気持ちが揺れるんだと思います。でも、それは私がおかしいわけじゃなくて、体が何かを教えてくれてるんだなって思えるようになりました」

ダイキ「それは大きな変化ですね」

カナエ「はい。それに、『今は生理前だから、いつもより厳しく見ちゃってるんだな』って思うと、ちょっと冷静になれるんです。『この気持ちは一時的かもしれない』って」

彼女はそこで少し笑った。

カナエ「でも、完全に無視するんじゃなくて、『これって本当に気になることなのかな?』って、後で落ち着いてから考えるようにしてるんです」

ダイキ「良いバランスの取り方ですね」

カナエ「ありがとうございます。あと...なんていうか、自分の体を信頼できるようになった気がします。ホルモンが勝手に暴走してるんじゃなくて、ちゃんと理由があって、私に何かを教えてくれてるんだなって」

「これからも、きっと揺れる」


セッションの終わりに、カナエは言った。

カナエ「きっと、これからも生理前になると気持ちが揺れると思います。でも、それは私がダメなんじゃなくて、体が持ってる古い仕組みなんですよね」

ダイキ「そうです。何万年もかけて作られた、生き延びるための仕組みです」

カナエ「面白いですよね。今の時代には必要ないことなのかもしれないけど、体はまだ覚えてるんだなって。それを知れて、良かったです」

彼女は深く息を吸って、少し照れたように笑った。

カナエ「もう、自分のことを『おかしい』って思わなくていいんですね」

ダイキ「はい。カナエさんはおかしくない。ただ、体が教えてくれるメッセージと、どう付き合っていくかを学んでいるところなんです」

カナエはゆっくりと立ち上がり、カウンセリングルームを出て行った。その背中は、以前よりも少し軽くなっているように見えた。

おわりに


生理前に彼氏と別れたくなる──。

それは決して「おかしいこと」ではありません。

女性の体は、排卵期には「優れた遺伝子」を求め、生理前には「安全な環境」を求めるように設計されています。それは何十万年もかけて培われてきた、生き延びるための戦略です。

エストロゲンとプロゲステロン。この2つのホルモンが周期的に変化することで、私たちの感情や、人への感じ方も変わります。それは「感情が不安定」なのではなく、「体が異なるモードで動いている」ということなのです。

大切なのは、その変化を「敵」として戦うのではなく、「体からのメッセージ」として受け取ること。

そして、生理前に感じることと、普段感じていることの両方を見て、バランスを取ること。

あなたの体は、あなたを守るために、今日も賢く働いています。


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🙋 このブログを書いている人について
だいき|産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
会社員時代、職場の人間関係でメンタルが限界に。「このままではまずい」と一念発起し、コミュニケーションを学び直した経験が、産業カウンセラー・キャリアコンサルタントの資格取得につながりました。
恋愛・婚活でも7年間で88人とデートを重ねながら、うまくいかない時期が長く続きました。その苦しさを知っているからこそ、脳科学・進化心理学・愛着理論といった知識を「自分ごと」として学び続けてきました。
キャリアブレイクコミュニティでは160回以上のワークショップを主催。さまざまな悩みや状況を持つ方と向き合い続けてきた経験が、相談の土台になっています。
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