休職中なのに焦るだけ。やりたいことが見えない女性が取り戻したもの

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やりたいことが、わからない


カウンセリングルームに入ってきた彼女は、少し疲れたような表情をしていた。椅子に座ると、小さく息を吐いて、それから口を開いた。

クライエント「あの、実は...やりたいことがわからないんです」

ダイキ「やりたいことが、わからない」

クライエント「はい。転職活動を始めて3ヶ月くらい経つんですけど、どの求人を見ても...なんていうか、ピンとこなくて。これがいい、あれがいいって、全然思えないんです」

彼女は膝の上で手を組んだまま、視線を少し下に落としている。

ダイキ「ピンとこない、というのは?」

クライエント「なんか...心が動かないっていうか。前の仕事は人事だったんですけど、それも別に好きでやってたわけじゃなくて。でも、次は自分が本当にやりたいことをって思って辞めたのに...」

クライエント「何を見ても、『これだ!』って思えない。むしろ、何を見ても不安になるだけで」

不安が先に来る


ダイキ「何を見ても、不安になる」

クライエント「そうなんです。この仕事、続けられるかな、とか。この会社、自分に合ってるのかな、とか。失敗したらどうしよう、とか」

彼女は少し言いよどんだ。

クライエント「...だから、結局何も決められなくて。友達には『あなた、何がしたいの?』って聞かれるんですけど、自分でもわからないんです」

ダイキ「今、お話を聞いていて思ったんですけど...」

クライエント「はい」

ダイキ「『やりたいこと』を考えようとすると、その前に不安が出てくる感じでしょうか」

クライエントは少し驚いたような顔をした。

クライエント「...そうかもしれません。やりたいことを考える前に、『でも失敗したら』とか『うまくいかなかったら』って、そっちが先に来ちゃって」

ダイキ「やりたい、という気持ちよりも、不安の方が大きい」

クライエント「ああ...そうですね。そう言われてみれば」

彼女は深く息を吐いた。その息には、どこか力が入っているように見えた。

緊張していることに気づいていない


ダイキ「今、ちょっと体の状態を確認してみてもいいですか?」

クライエント「体の状態...ですか?」

ダイキ「今、肩に力が入っていませんか? それから、呼吸は浅くなっていませんか?」

クライエントは自分の肩に手を当てて、それから少し驚いたような顔をした。

クライエント「...あ、本当だ。すごく肩に力が入ってます」

ダイキ「今まで、気づいていましたか?」

クライエント「いえ...全然気づいてなかったです。いつもこうなのかな...」

彼女はゆっくりと肩を回してみた。でも、すぐにまた元の状態に戻ってしまう。

ダイキ「実は、人間って緊張していると、自分の本当の気持ちがわかりにくくなるんです」

クライエント「緊張...ですか?」

ダイキ「不安が強いと、体も心も常に警戒モードになります。何か危険なことが起きないか、失敗しないか、ずっと見張っているような状態です」

クライエント「ああ...」

ダイキ「そうすると、『やりたい』とか『楽しそう』とか、そういう感覚がすごく鈍くなってしまうんです。感性が麻痺してしまう、と言ってもいいかもしれません」

感性が麻痺するということ


クライエントは黙って、自分の手を見つめていた。

クライエント「感性が、麻痺する...」

ダイキ「例えば、すごくお腹が痛いとき、美味しそうな料理を見ても、食べたいって思えないですよね」

クライエント「ああ、確かに」

ダイキ「それと同じで、心がずっと緊張していると、本来感じられるはずの『やりたい』とか『これ面白そう』っていう感覚が、感じられなくなってしまうんです」

クライエント「...だから、何を見てもピンとこなかったんですね」

ダイキ「そういうことかもしれません」

クライエントは少し俯いた。しばらく沈黙が続いた。

クライエント「じゃあ、私...ずっと緊張してたってことですか?」

ダイキ「今まで、どうでしたか?」

クライエント「前の会社では...確かに、いつも緊張してました。失敗しちゃいけない、ミスしちゃいけない、期待に応えなきゃって」

彼女の声が少し震えた。

クライエント「でも、もう辞めたのに。なんで今も...」

警戒モードは、すぐには解除されない


ダイキ「環境が変わっても、体や心はすぐには変わらないんです」

クライエント「え...?」

ダイキ「例えば、ずっと危険な場所にいた人が、安全な場所に来ても、すぐにはリラックスできないですよね。体が『まだ危険かもしれない』って、警戒を続けてしまう」

クライエント「ああ...」

ダイキ「今のあなたも、もしかしたら、まだ体が警戒モードのままなのかもしれません」

クライエントは自分の肩に再び手を当てた。

クライエント「確かに...ずっと力が入ってます。今もです」

ダイキ「その緊張を解いていくこと。それが、やりたいことを感じられるようになる第一歩かもしれません」

クライエント「緊張を、解く...」

彼女は少し戸惑ったような顔をした。

クライエント「でも、どうやって?」

緊張を解くための第一歩


ダイキ「まず、今できることから始めてみましょうか」

クライエント「はい」

ダイキ「呼吸を、意識してみてもらえますか? 今、どんな呼吸をしていますか?」

クライエントは少し考えてから答えた。

クライエント「...浅い、です。胸のあたりで、短く吸って短く吐いてる感じ」

ダイキ「そうですね。緊張していると、呼吸が浅く速くなります。それが、さらに体を緊張させてしまうんです」

クライエント「悪循環、ですね」

ダイキ「その通りです。じゃあ、ゆっくり息を吐いてみてもらえますか? 吐く方を長くして」

クライエントは目を閉じて、ゆっくりと息を吐いた。

クライエント「...ふう」

ダイキ「どうですか?」

クライエント「少し...楽になった気がします」

ダイキ「呼吸を整えるだけでも、体の緊張は少しずつほぐれていきます」

クライエントは何度か深呼吸を繰り返した。その表情が、少しずつ柔らかくなっていくのが見えた。

やりたいことは、探すものじゃない


ダイキ「ひとつ、お聞きしてもいいですか?」

クライエント「はい」

ダイキ「今まで、『やりたいこと』をどうやって見つけようとしていましたか?」

クライエント「え、と...いろんな求人を見たり、自己分析の本を読んだり。あと、『やりたいことの見つけ方』みたいなセミナーにも行きました」

ダイキ「たくさん、行動されたんですね」

クライエント「はい。でも、全然見つからなくて...」

ダイキ「実は、やりたいことって、探して見つけるものじゃないかもしれないんです」

クライエントは少し驚いたような顔をした。

クライエント「探すものじゃない...?」

ダイキ「やりたいことは、感じるものなんです。『あ、これ面白そう』『これやってみたい』って、自然に湧いてくる感覚」

クライエント「自然に、湧いてくる...」

ダイキ「でも、その感覚が出てくるには、体も心もリラックスしている必要があるんです。緊張していると、その感覚が麻痺してしまう」

クライエント「だから、いくら探しても見つからなかったんですね...」

彼女は深く息を吐いた。今度は、さっきより力が抜けているように見えた。

過去を振り返る


ダイキ「ちょっと、昔のことを思い出してみてもらえますか?」

クライエント「昔...ですか?」

ダイキ「学生時代でも、子どもの頃でも。『これ、楽しい』『これ、好きだな』って思ったこと、ありませんでしたか?」

クライエントは少し考え込んだ。

クライエント「...あ」

ダイキ「何か、思い出しましたか?」

クライエント「高校生の時...文化祭で、クラスの出し物を企画したんです」

彼女の表情が、少し明るくなった。

クライエント「最初はみんなバラバラで、全然まとまらなくて。でも、一人一人に話を聞いていったら、だんだん形になっていって」

ダイキ「それは、どんな気持ちでしたか?」

クライエント「...すごく、楽しかったです。みんなの意見を聞いて、それをひとつにまとめていくのが」

彼女の目が、少し潤んでいた。

クライエント「あれ...なんで今、泣きそうになってるんだろう」

本当の気持ちに触れる


ダイキ「もしかしたら、それが本当のあなたの気持ちなのかもしれませんね」

クライエント「本当の...気持ち」

ダイキ「人の話を聞いて、それをまとめていく。人と人をつないでいく。もしかしたら、それがあなたの『やりたいこと』の根っこにあるのかもしれません」

クライエントは涙を拭いながら、小さく笑った。

クライエント「そうかもしれません...でも、人事の仕事も、本当はそういうことだったのかもしれないですね」

ダイキ「前の職場では、それができなかった?」

クライエント「できなかったです。いつも数字を追いかけて、採用計画を達成しなきゃって。人の話をゆっくり聞く余裕なんて、全然なくて」

彼女は深く息を吐いた。

クライエント「でも...本当は、もっと一人一人と向き合いたかったのかもしれません」

緊張が解けると、見えてくるもの


ダイキ「今、どんな感じですか?」

クライエント「...不思議です。さっきまで、何を見てもピンとこなかったのに、今は『ああ、こういうことがしたかったんだ』って、少しわかる気がします」

ダイキ「少し、緊張が解けてきたのかもしれませんね」

クライエント「そうですね...肩の力も、さっきより抜けてる気がします」

彼女は自分の肩を軽く叩いた。

クライエント「でも、これから転職活動するとき、また不安になっちゃうかもしれないです」

ダイキ「それは、自然なことだと思いますよ」

クライエント「そうなんですか?」

ダイキ「不安は、悪いものじゃないんです。『これ、大丈夫かな?』って考えることで、私たちは準備ができる。ただ、不安が大きすぎて、他の感覚が感じられなくなるのが問題なんです」

クライエント「不安と、うまく付き合っていくってことですね」

ダイキ「そうです。不安を感じたら、まず深呼吸。それから、体の力を抜く。そうやって、少しずつ緊張を解いていく」

クライエント「はい...やってみます」

これから、どう進んでいくか


ダイキ「これから、どうしていきたいですか?」

クライエントは少し考えてから答えた。

クライエント「まず...今日みたいに、自分の体の状態に気づけるようになりたいです。緊張してるなって」

ダイキ「いいですね」

クライエント「それから...焦らずに、自分の感覚を大切にしながら、次を探していきたいです」

ダイキ「人の話を聞いて、つないでいくような仕事」

クライエント「はい。それが、どんな形になるかはまだわからないけど...でも、その軸は持っていたいです」

彼女は、カウンセリングルームに入ってきた時とは違う、少し明るい表情をしていた。

クライエント「あの、ひとつ聞いてもいいですか?」

ダイキ「どうぞ」

クライエント「やりたいことって、すぐに見つからなくてもいいんですよね?」

ダイキ「もちろんです。というか、見つけようとしなくてもいいんです」

クライエント「え?」

ダイキ「大切なのは、自分の感覚が戻ってくることです。『これ、面白そう』『これ、いいかも』って思える状態になること。その状態になれば、やりたいことは自然に見えてきます」

クライエント「...そうですね。焦らないようにします」

最後に


カウンセリングの終わりに、彼女は深く息を吐いた。それは、最初の息とは全く違う、力の抜けた息だった。

クライエント「今日来て、よかったです」

ダイキ「どんなところが、よかったですか?」

クライエント「自分が、ずっと緊張してたって気づけたこと。それから...やりたいことは、探すものじゃなくて感じるものだって」

ダイキ「それに気づけたこと、大きいですね」

クライエント「はい。これから、まず自分の体と心を整えていきたいと思います」

彼女は立ち上がって、軽く肩を回した。

クライエント「あ、本当に軽くなってる」

ダイキ「よかったです」

クライエント「ありがとうございました。また来させてください」

ダイキ「いつでもどうぞ」

彼女がカウンセリングルームを出ていく姿は、入ってきた時よりも、少し軽やかに見えた。

【カウンセラーからのメッセージ】


「やりたいことがわからない」と悩む人の多くは、実は感性が麻痺している状態にあります。不安や緊張が強いと、体も心も警戒モードになり、本来感じられるはずの「やりたい」「楽しそう」という感覚が感じられなくなってしまうのです。

大切なのは、まず緊張を解くこと。深呼吸をして、体の力を抜いて、刺激を減らしていく。そうやって少しずつリラックスできる状態を作っていくこと。

やりたいことは、探すものではなく、感じるものです。感性が戻ってくれば、自然に「これがいい」「これをやりたい」という感覚が湧いてきます。焦らず、まずは自分の体と心を整えていきましょう。


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