『また駄目だったらどうしよう』が頭から離れない。32歳の決断

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やる前から疲れてしまう


オンラインカウンセリングの画面に映るユウコさんは、少し疲れた表情をしていた。

ユウコ「あの、今日相談したいのは...自分でもおかしいと思うんですけど」

ダイキ「おかしいって?」

ユウコ「やる前から、もう疲れちゃうんです。何かを始めようとすると、頭の中でいろんなシミュレーションが始まって...」

彼女は少し恥ずかしそうに続けた。

ユウコ「たとえば、資格試験を受けようかなって思うじゃないですか。そうすると、『勉強時間が足りなかったらどうしよう』『試験当日に体調崩したらどうしよう』『落ちたら周りにどう思われるだろう』って...」

ダイキ「いろんな『どうしよう』が出てくるんですね」

ユウコ「はい。で、考えてるうちに疲れちゃって、結局申し込みすらしないんです。こんなの3年くらい続いてて」

彼女の声が少し小さくなった。

「考えすぎ」と言われるけれど


ダイキ「周りの人には相談しましたか?」

ユウコ「友達に話したら『考えすぎだよ』って言われて。『やってみたら意外と大丈夫だよ』って」

ダイキ「それを聞いてどう思いました?」

ユウコは少し間を置いてから答えた。

ユウコ「...余計につらくなりました。だって、『考えすぎ』って言われても、考えちゃうんですもん。やめられないんです」

ダイキ「やめられない」

ユウコ「そうなんです。自分でも『こんなに心配してもしょうがない』って頭ではわかってるんですけど、気づいたら同じこと考えてて...」

彼女は深くため息をついた。

ユウコ「最近、夜も眠れないことがあって。ベッドに入ると、また『どうしよう、どうしよう』って始まっちゃうんです」

不安に名前をつけてみる


ダイキ「ユウコさん、その『どうしよう、どうしよう』って声、いつも同じ感じですか?」

ユウコ「...同じ感じ、ですか?」

ダイキ「ええ。その声の調子とか、言い方とか」

ユウコは少し考えてから答えた。

ユウコ「あ...確かに、いつも同じような感じかも。なんていうか、すごく焦ってる感じで、早口で...」

ダイキ「なるほど。その声に、名前をつけるとしたら、どんな名前がいいと思います?」

ユウコ「名前...ですか?」

ダイキ「はい。人によっては『心配さん』とか『慎重くん』とか、いろんな呼び方をする人がいます」

ユウコは少し笑った。

ユウコ「変ですけど...『せっかちちゃん』とか?なんかすごく焦ってる感じなので」

ダイキ「いいですね、せっかちちゃん」

ユウコ「名前をつけたら、なんか...ちょっと距離ができた感じがします」

ダイキ「距離?」

ユウコ「はい。今まで『自分が不安』だったのが、『せっかちちゃんが心配してる』みたいな...なんか変な感じですけど」

せっかちちゃんの正体


ダイキ「せっかちちゃんは、いつから現れるようになりました?」

ユウコ「...あ」

彼女は何かに気づいたような表情になった。

ユウコ「数年前、部署異動があったんです。新しい環境で、最初すごく失敗して...」

ダイキ「失敗?」

ユウコ「大きなプロジェクトの資料作成を任されたんですけど、前提知識がなくて。上司に『これじゃ使えない』って言われて、やり直しになって...すごく恥ずかしかったんです」

彼女の声が震えた。

ユウコ「それから、何か新しいことをやる前に、『また失敗したらどうしよう』って思うようになって」

ダイキ「せっかちちゃんは、ユウコさんを守ろうとしてるのかもしれませんね」

ユウコ「...守ろうと?」

ダイキ「ええ。『また同じ失敗をしないように』って、一生懸命警告を出してくれてる」

ユウコは目を丸くした。

ユウコ「そうか...敵じゃないんですね、せっかちちゃん」

やってみると、たいしたことない


ダイキ「ユウコさん、これまでで、『不安だったけどやってみたら意外と大丈夫だった』って経験はありますか?」

ユウコ「...あ、あります。最近だと、職場の飲み会の幹事を頼まれて」

ダイキ「どうでした?」

ユウコ「もう、やる前は最悪のシナリオばっかり考えてました。『お店の予約ミスったらどうしよう』『みんなの好みに合わなかったらどうしよう』って」

ダイキ「実際は?」

ユウコ「...普通に、楽しかったです。というか、拍子抜けするくらい何も起きなくて」

彼女は少し笑った。

ユウコ「考えてたことの9割は起きませんでした。っていうか、起きたとしても、なんとかなってたと思います」

ダイキ「やってみると、意外と大したことないこと、多いですよね」

ユウコ「そうなんです...でも、次また何かあると、また同じように不安になっちゃうんです」

不安は悪いものじゃない


ダイキ「ユウコさん、不安って、実は悪いものじゃないんです」

ユウコ「え...そうなんですか?」

ダイキ「ええ。不安があるから、私たちは準備をするし、気をつけるし、努力するんです」

ユウコ「でも、私の場合、不安が強すぎて動けなくなっちゃうんです」

ダイキ「そうですね。でも、その不安をうまく使えたら、どうでしょう?」

ユウコ「うまく使う...?」

ダイキ「たとえば、資格試験を受けるとして。『落ちたらどうしよう』っていう不安、ありますよね」

ユウコ「はい...」

ダイキ「その不安があるから、『じゃあ、落ちないように、毎日30分は勉強しよう』って計画を立てられる。不安が、行動の味方になるんです」

ユウコはゆっくりと頷いた。

ユウコ「不安を、味方に...」

小さな一歩から


ダイキ「ユウコさん、資格試験、本当は受けたいんですよね?」

ユウコ「...はい。ずっと、受けたいって思ってました」

ダイキ「じゃあ、今日から1週間で、できそうな一番小さいことって、なんだと思います?」

ユウコ「一番小さいこと...試験の情報を調べる、とか?」

ダイキ「いいですね。それなら、せっかちちゃんも許してくれそうですか?」

ユウコは少し笑った。

ユウコ「多分...『情報を調べるだけなら、失敗しないよね』って言ってくれそうです」

ダイキ「そうですね。で、情報を調べたら、次は?」

ユウコ「...過去問を1問だけ見てみる、とか」

ダイキ「完璧です。一気にやろうとしなくていいんです」

ユウコ「そっか...一気にやろうとするから、せっかちちゃんが『無理無理!』って言ってたのかも」

失敗してもいい、という選択


ダイキ「ユウコさん、もし試験を受けて、万が一落ちたとして。何が一番つらいですか?」

ユウコは少し考えた。

ユウコ「...周りに知られること、かな。『あの人、落ちたんだって』って言われるの、すごく嫌です」

ダイキ「そうか。じゃあ、最初は誰にも言わずに受けてみる、っていうのはどうでしょう?」

ユウコ「あ...」

ダイキ「合格したら報告すればいいし、もし落ちても、誰も知らない。次にまた挑戦すればいい」

ユウコの表情が少し明るくなった。

ユウコ「そうか...失敗してもいい状況を作ればいいんですね」

ダイキ「そうです。失敗できる環境を作ることも、準備のひとつですから」

「できる」より「やってみたい」


ダイキ「最後に、ひとつ質問していいですか?」

ユウコ「はい」

ダイキ「ユウコさんがその資格を取りたいのは、『取れそうだから』ですか?それとも『取りたいから』ですか?」

ユウコは少し黙った。

ユウコ「...取りたい、からです。その資格があれば、もっと面白い仕事ができそうで」

ダイキ「じゃあ、せっかちちゃんに、こう伝えてあげてください。『心配してくれてありがとう。でも、私はこれがやりたいんだ』って」

ユウコの目に涙が浮かんだ。

ユウコ「...私、ずっと『できるかどうか』ばかり考えてました。『やりたいかどうか』じゃなくて」

ダイキ「やりたいことを、やってもいいんですよ」

ユウコは大きく頷いた。

2ヶ月後


ユウコさんから連絡があったのは、初回のカウンセリングから2ヶ月後だった。

「ダイキさん、試験申し込みました!まだせっかちちゃんはうるさいですけど(笑)、『ありがとう、でも大丈夫』って言えるようになりました。勉強、楽しいです」

メッセージを読みながら、私は少し微笑んだ。

不安は、敵じゃない。

私たちを守ろうとしてくれる、大切な仲間なのだ。

その声に耳を傾けながら、それでも、自分のやりたいことに向かって一歩を踏み出す。

それが、不安と上手に付き合うということなのかもしれない。


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