「もっと削れるはず」──月10万円生活、節約に囚われた35歳の気づき

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ユウタさん(仮名)、35歳。フリーランスのグラフィックデザイナー。数年前に会社を退職してフリーランスに転身したが、収入が不安定なことから、徹底した節約生活を送っている。月の出費を10万円以内に抑えることを目標としており、食費は月2万円、交際費はほぼゼロ。友人との食事の誘いも断り続け、趣味も削り、ひたすら「無駄を省く」ことに集中している。しかし最近、孤独感と虚しさを感じるようになり、「このままでいいのか」という疑問を抱えてカウンセリングを訪れた。

節約は美徳、でも...


カウンセリングルームに入ってきたユウタさんは、少し緊張した面持ちで椅子に座った。

ダイキ「こんにちは、ユウタさん。今日はどんなことでお話ししたいですか?」

ユウタ「あの...節約について、なんですけど」

そう言って、ユウタさんは少し言葉を探すように視線を下に向けた。

ユウタ「僕、フリーランスになってから、すごく節約を意識するようになったんです。収入が不安定だから、できるだけお金を使わないようにしようって」

ダイキ「なるほど。収入が不安定だと、やっぱり不安になりますよね」

ユウタ「はい。それで、今は月10万円以内で生活してるんです。食費は月2万円。外食はほとんどしないし、友達からの誘いも断って...」

ダイキ「10万円以内...かなり切り詰めてますね」

ユウタさんは、少し誇らしげな表情を見せた。

ユウタ「そうなんです。最初は難しいと思ったんですけど、慣れるとできるもんで。冷蔵庫の食材も全部使い切るし、電気代も節約して...」

そこまで話して、ユウタさんの表情が少し曇った。

ユウタ「でも、最近...なんか虚しくなってきて」

ダイキ「虚しい?」

ユウタ「はい。節約すること自体は悪くないと思うんです。無駄遣いしないのは大事だし。でも、友達と会わなくなったし、趣味も削ったし...気づいたら、ずっと一人で部屋にいるんです」

ユウタさんは、そう言って深くため息をついた。

「失う」ことへの恐怖


ダイキ「ユウタさんは、どうしてそこまで節約しようと思ったんですか?」

ユウタ「...それは、やっぱりお金がなくなるのが怖いからです」

ダイキ「お金がなくなると、どうなると思いますか?」

ユウタさんは、少し考えてから答えた。

ユウタ「...生きていけなくなる、かな」

その言葉には、強い確信があった。

ダイキ「生きていけなくなる...そう思うようになったのは、何かきっかけがあったんですか?」

ユウタさんは、しばらく黙っていた。そして、ゆっくりと話し始めた。

ユウタ「...昔、親が仕事を失ったことがあって」

ダイキ「そうだったんですね」

ユウタ「その時、家族全員がすごく不安定になって。母親が毎日暗い顔してたし、父親はずっとピリピリしてて...僕はまだ子どもだったから、何もできなかったんですけど」

ユウタさんの声が、少し震えた。

ユウタ「あの時の記憶が、今でもすごく鮮明に残ってるんです。『お金がなくなる』って、すごく怖いことなんだって」

ダイキ「...そうだったんですね。それは、とても不安な体験だったと思います」

ユウタ「だから、僕は絶対にそうなりたくないって思って。フリーランスになってから、ずっと節約してきたんです」

ダイキは、静かに頷いた。

ダイキ「ユウタさんは、あの時の不安を繰り返さないために、今も頑張ってるんですね」

ユウタ「...そうなのかもしれません」

節約の「代償」


ダイキ「ユウタさん、今の節約生活で、何か困っていることはありますか?」

ユウタ「困ってること...」

ユウタさんは、少し考えた。

ユウタ「...友達と会わなくなったのは、やっぱり寂しいです。誘われても、『お金がもったいない』って思っちゃって」

ダイキ「友達との時間よりも、お金を優先してしまう?」

ユウタ「はい。外食したら3000円とか5000円かかるじゃないですか。それだったら、その分貯金したほうがいいかなって」

ダイキ「なるほど。じゃあ、その3000円を貯金したことで、ユウタさんは何を得ましたか?」

ユウタさんは、その質問に少し戸惑った様子だった。

ユウタ「...得たもの?貯金額が増えた、ってことですか?」

ダイキ「そうですね。貯金額が増えたことで、ユウタさんの生活は何か変わりましたか?」

ユウタ「...変わった、というか...安心感はあります。通帳の残高が増えてると、ちょっとホッとするというか」

ダイキ「ホッとする。じゃあ、友達と会わなかったことで、失ったものは何でしょう?」

ユウタさんは、言葉に詰まった。

ユウタ「...楽しい時間、ですかね」

ダイキ「他には?」

ユウタ「...友達との...つながり?」

ダイキ「そうですね。他にもあるかもしれません。例えば、友達と会って話すことで得られる情報とか、新しい視点とか、仕事のきっかけとか」

ユウタさんは、ハッとした表情になった。

ユウタ「...そうか。僕、そういうこと考えてませんでした」

「節約」という名の監獄


ダイキ「ユウタさん、節約することで、今のあなたは自由だと思いますか?」

ユウタ「自由...?」

ダイキ「はい。例えば、今日、急に友達から『今から飲みに行こう』って誘われたら、行けますか?」

ユウタさんは、即座に首を横に振った。

ユウタ「無理です。予算オーバーしちゃうから」

ダイキ「そうですよね。じゃあ、美味しそうなレストランを見つけたら?」

ユウタ「...やっぱり無理です」

ダイキ「新しい趣味を始めたいと思っても?」

ユウタ「それも...お金がかかるから」

ダイキさんは、静かに言った。

ダイキ「ユウタさん、それって本当に『自由』でしょうか?」

ユウタさんは、その言葉にじっと考え込んだ。

ユウタ「...言われてみれば、確かに。僕、何も選べてない」

そう言って、ユウタさんは驚いたような表情を浮かべた。

ユウタ「節約のために、いろんなことを我慢してたけど...それって、節約に縛られてるってことですよね」

ダイキ「そうかもしれませんね。節約することが目的になってしまって、本来の『自分らしく生きる』という目的が見えなくなっているのかもしれません」

ユウタさんは、しばらく黙っていた。そして、小さな声で言った。

ユウタ「...僕、何やってたんだろう」

お金より価値のあるもの


ダイキ「ユウタさん、一つ質問してもいいですか?」

ユウタ「はい」

ダイキ「ユウタさんは、何のためにお金を貯めているんですか?」

ユウタさんは、その質問に少し困惑した表情を見せた。

ユウタ「何のため...?将来のため、です」

ダイキ「将来、どうなりたいですか?」

ユウタ「...どうなりたい、というか...安心したい、です」

ダイキ「安心したい。それは、どんな状態ですか?」

ユウタ「...お金の心配をしなくていい状態、かな」

ダイキ「じゃあ、お金の心配をしなくていい状態になったら、ユウタさんは何をしたいですか?」

ユウタさんは、しばらく考えた。

ユウタ「...友達と遊びたいです。美味しいものを食べたいし、旅行にも行きたい。それから...新しいことにも挑戦してみたい」

ダイキ「そうなんですね。じゃあ、今のユウタさんは、『将来やりたいこと』のために、『今やりたいこと』を我慢してるんですね」

ユウタ「...はい」

ダイキ「でも、その『将来』って、いつ来るんでしょうか?」

ユウタさんは、ハッとした。

ユウタ「...いつ、って言われると...わからないです」

ダイキ「もしかしたら、その『将来』は永遠に来ないかもしれません。なぜなら、『お金の心配をしなくていい状態』という基準は、人によって違うからです」

ユウタ「...そうですね」

ダイキ「今のユウタさんは、貯金が100万円あっても不安、300万円あっても不安、もしかしたら1000万円あっても不安かもしれません」

ユウタさんは、深く頷いた。

ユウタ「...その通りです。いくらあっても、『もっと貯めなきゃ』って思っちゃうんです」

時間は戻らない


ダイキ「ユウタさん、一つだけ確実なことがあります」

ユウタ「何ですか?」

ダイキ「時間は戻らない、ということです」

ユウタさんは、静かにダイキの言葉を聞いていた。

ダイキ「今日という日は、二度と来ません。今この瞬間も、どんどん過ぎ去っていきます。もし、10年後に十分なお金が貯まったとして、その時に失われた10年は取り戻せません」

ユウタ「...」

ダイキ「友達との時間、新しい経験、自分の成長...それらは、お金では買えないものです。いや、正確には、『今しか買えない』ものなんです」

ユウタさんの目に、涙が浮かんだ。

ユウタ「...そうですよね。僕、ずっと『いつか』のために我慢してたけど、その『いつか』が来た時には、もう遅いかもしれない」

ダイキ「そうですね。もちろん、節約すること自体は悪いことではありません。将来のために備えることも大切です。でも、今を犠牲にしすぎるのは、違うと思うんです」

ユウタ「今を犠牲にしすぎる...」

ダイキ「はい。大切なのは、バランスです。将来のために備えながらも、今を楽しむ。そのバランスを見つけることが、ユウタさんにとって必要なのかもしれません」

本当の「豊かさ」とは


ダイキ「ユウタさん、『豊かさ』って何だと思いますか?」

ユウタ「豊かさ...」

ユウタさんは、少し考えた。

ユウタ「...今までは、お金がたくさんあることだと思ってました」

ダイキ「今は?」

ユウタ「...今は、わからなくなってきました」

ダイキ「それでいいと思います。わからなくなったということは、これまでの考え方に疑問を持ち始めたということですから」

ユウタさんは、小さく笑った。

ユウタ「確かに。今日、ダイキさんと話して、いろんなこと考えさせられました」

ダイキ「豊かさというのは、人それぞれ違うと思います。でも、少なくとも言えるのは、お金だけじゃないということです」

ユウタ「お金だけじゃない...」

ダイキ「例えば、大切な人と過ごす時間、美味しい食事を楽しむこと、新しいことに挑戦すること、自分の成長を感じること...これらも、豊かさの一部だと思います」

ユウタ「...そうですね。僕、お金を貯めることに必死で、そういうこと全部諦めてました」

ダイキ「諦めてたんですね。でも、今日気づけたことは、すごく大きな一歩だと思います」

小さな一歩から


ダイキ「ユウタさん、これから何か変えてみたいことはありますか?」

ユウタさんは、少し考えてから答えた。

ユウタ「...友達に連絡してみようかな」

ダイキ「いいですね」

ユウタ「ずっと誘いを断ってたから、もう誘ってくれないかもしれないけど...一度、自分から声かけてみます」

ダイキ「素晴らしいですね。それは、とても勇気のいることだと思います」

ユウタ「はい。あと、月の予算をもう少し見直してみようかなって思います」

ダイキ「どんなふうに?」

ユウタ「今は食費2万円、交際費ゼロなんですけど...交際費に月1万円くらい使ってもいいかなって」

ダイキ「なるほど。その1万円で、何ができそうですか?」

ユウタ「友達と月に1〜2回くらいは会えるかな。それだけでも、だいぶ違うと思います」

ダイキ「そうですね。小さな一歩ですが、きっと大きな変化につながると思います」

ユウタさんは、少し明るい表情になった。

ユウタ「...なんか、今日来てよかったです。ずっとモヤモヤしてたのが、少しスッキリしました」

ダイキ「それはよかったです。でも、これからが大切ですよ」

ユウタ「はい。わかってます」

「自分に投資する」という考え方

ダイキ「ユウタさん、もう一つだけお伝えしたいことがあります」

ユウタ「何ですか?」

ダイキ「お金の使い方には、『消費』と『投資』があります」

ユウタ「消費と投資...」

ダイキ「消費というのは、使ったらなくなるお金です。例えば、何も考えずに買ったコンビニのお菓子とか」

ユウタ「ああ、それはわかります。僕もそういう無駄遣いはしないように気をつけてます」

ダイキ「そうですね。でも、投資は違います。投資というのは、使ったお金が何か価値を生み出すものです」

ユウタ「価値を生み出す...」

ダイキ「例えば、友達との食事。これは単なる消費でしょうか?」

ユウタさんは、少し考えた。

ユウタ「...違う、かもしれません」

ダイキ「そうですね。友達との食事は、関係性を深めることができます。そこから新しい情報が得られるかもしれないし、仕事のきっかけになるかもしれない。それに、楽しい時間を過ごすことで、心が満たされる。これは、投資と言えるかもしれません」

ユウタ「なるほど...」

ダイキ「本を読むこと、セミナーに参加すること、新しい経験をすること...これらも投資です。自分の成長につながるからです」

ユウタ「確かに。僕、そういう視点で考えたことなかったです」

ダイキ「節約することも大切ですが、『自分に投資する』という視点も持ってみてください。そうすると、お金の使い方が変わってくると思います」

新しい基準


カウンセリングの終わりが近づいてきた。ユウタさんは、最初とは違う穏やかな表情をしていた。

ユウタ「ダイキさん、今日はありがとうございました」

ダイキ「いえいえ。何か気づきがあったようでよかったです」

ユウタ「はい。今まで、『いかにお金を使わないか』ってことばかり考えてたんですけど、これからは『どうお金を使うか』を考えてみようと思います」

ダイキ「いいですね。それは、とても大きな変化だと思います」

ユウタ「まだ不安はあります。でも、今日話して、『お金を使わないこと』が目的じゃなくて、『幸せに生きること』が目的なんだって気づけました」

ダイキ「その気づきが、一番大切だと思います」

ユウタさんは、深く頷いた。

ユウタ「これから、少しずつ変えていきます。焦らず、自分のペースで」

ダイキ「そうですね。無理せず、少しずつ。それが一番です」

ユウタさんは、立ち上がって深々とお辞儀をした。

ユウタ「本当にありがとうございました」

エピローグ──3ヶ月後


ユウタさんから、メールが届いた。

「ダイキさん、お久しぶりです。あれから、少しずつですが変化がありました。まず、友達に連絡して、久しぶりに食事に行きました。最初はすごく緊張したんですが、友達は『やっと連絡くれた!』って喜んでくれて...それがすごく嬉しかったです。

それから、月の予算も見直しました。交際費に月1万円、自己投資に月5千円使うことにしました。自己投資では、デザインのオンライン講座を受けたり、本を買ったり。それが、仕事の幅を広げるきっかけになって、今月は過去最高の売上を達成できました。

節約することも大切だけど、『使うべきところには使う』ことも大切なんだって、今は実感しています。まだ完璧じゃないけど、以前よりずっと心が軽くなりました。本当にありがとうございました」

カウンセラーからのメッセージ


節約すること自体は、決して悪いことではありません。将来のために備えることは、とても大切なことです。

でも、もし今、あなたが節約のために多くのものを犠牲にしているなら、少し立ち止まって考えてみてください。

「何のために節約しているのか?」 「その節約で、本当に幸せになれるのか?」 「今という時間を、大切にできているか?」

お金は大切です。でも、お金だけが人生の全てではありません。

大切な人との時間、新しい経験、自分の成長...これらは、今しか手に入らないものです。

バランスを見つけること。それが、本当の豊かさにつながるのかもしれません。


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