いつもお読みいただき、本当にありがとうございます!
今回のお話は、プラムちゃん、このかちゃん、そしてノワールちゃんの
恋のその後を描いたエピソードです。
三人の恋の行方を、ぜひ楽しんでくださいね😊
プラムちゃんとこのかちゃん
プラムちゃんがひとり、静かに考えごとをしていた時のことです。
ふっと、遠くの方から賑やかな足音が聞こえてきました。
「「ただいま✨」」
このかちゃんと天光龍ちゃんたちが、楽しそうに帰ってきたのです。
このかちゃんと一緒に夕日が沈むのを見届けたあとも、
一行の胸の中には、まだ温かい余韻が残っていました。
その明るい楽しい空気のまま、
一行は賑やかに話し続けながら、家の中へと戻ってきました。
みんなが帰宅したその瞬間、
それまでプラムちゃんを包んでいた薄暗いムードは一気に消え去り、
家の中にはぽかぽかとした柔らかな明るさが満ちていきました。
家の中や外では光龍たちが遊びまわり、
辺りに優しい光を添えていましたが、
一緒に帰ってきた天光龍ちゃんたちが放つ光は、
それよりもずっと眩しくキラキラと輝き、
その眩しさに触れただけで、
プラムちゃんの心はすっと晴れ渡っていくようでした。
光に包まれて帰ってきたこのかちゃんの頬は、
ぽっと赤らんでいました。
外の冷たい空気を連れて帰ってきたせいだけではありません。
みんなからもらった勇気の余熱と、抑えきれない興奮が、
彼女の頬を赤く染めていたのです。
けれど、部屋にいたプラムちゃんを見つけた途端、
このかちゃんは一瞬、息を詰めました。
さっと笑顔が消え、その表情はひどく緊張したものに変わりました。
ノワールちゃんのことで心が沈んでいたプラムちゃんは、
その急変した顔を見て不安に駆られ、心臓がどきっと跳ね上がりました。
(大丈夫だと思ったけど・・まっまさか・・ダメだってこと無いよね?
うっわぁ、ドキドキするっ、なんだか逃げ出したくなってきたっ!)
プラムちゃんは、自分から言い出したことなのに、
いざ結果を聞くとなるとどんどん心配になってきました。
どっくんどっくんと激しく波打つ心臓を、
右手を当てて必死に押さえながら、息もつけないほど緊張しています。
一方、このかちゃんは天光龍ちゃんたちに笑顔で背中を押し出され、
胸に両手を添えてドキドキしながら、
一歩、また一歩とゆっくりプラムちゃんに近づいていきました。
少しずつ、けれど確実に近づいてくるこのかちゃん。
プラムちゃんは、その圧倒されるような緊張感に
思わず後ずさりしそうになります。
けれど、同じように跳ねる心臓に右手を添えて、
どうにかその場に踏みとどまっていました。
そんな二人の様子を、
近くにいた小龍ちゃんたちが「何が始まるんだろう?」と
興味津々でじっと眺めています。
どんどん近づいてくるこのかちゃん。
プラムちゃんは何を言われるのか怖くなって、
思わずぎゅっと目をつぶりました。
目の前で目をつぶって固まっているプラムちゃんに戸惑いつつも、
このかちゃんは勇気を振り絞って言葉を紡ぎます。
「プラムちゃん……。私、プラムちゃんのことが、だいすきなの……。
だから、その……。
これから先も、ずっとずっと、一緒にいさせてくださいっ!」
このかちゃんもプラムちゃんと一緒になって、
ぎゅっと目をつむってしまいました。
お返事を待つ間、視界は真っ暗で、
ただ自分の激しい鼓動だけが耳元でトクトクと鳴り響いています。
ノワールちゃんのことで少し弱気になっていたプラムちゃんでしたが、
このかちゃんのその言葉を聞いた瞬間、
あまりの嬉しさにパッと目を見開きました。
心のどこかで「きっと大丈夫」だと信じてはいたけれど、
いざ目の前で真っ直ぐに想いをぶつけられると、
想像していた以上の喜びに胸がいっぱいになって、
うまく言葉が出てきません。
プラムちゃんは完全に言葉を失い、
ただ呆然と、愛おしそうに彼女を見つめていました。
リビングに流れる、数秒間の静寂。
(……あれ? 返事がない……っ。言い方、変だったかな?
どうしよう、恥ずかしい……っ)
沈黙に耐えきれなくなり、このかちゃんは恐る恐る目を開けました。
するとそこには、自分を真っ直ぐに、吸い込まれるような強い眼差しで
見つめるプラムちゃんの瞳がありました。
目が合った瞬間、このかちゃんの頬は一気に真っ赤に染まりました。
あまりの恥ずかしさに、
彼女はあわてて火照った頬を小さな両手でぎゅっと押さえながら、
頭の中はパニックで真っ白になりました。
それでも、震える声で精一杯の言葉を絞り出し、
「あ、あのっ、えとっ……! ……どうぞ、よろしくお願いしますっ……」と、
頬を真っ赤に染め、
瞳をうるませて一生懸命に想いを伝えるこのかちゃん。
その姿は、胸が熱くなるほど真っ直ぐで、純粋な想いにあふれていました。
プラムちゃんは、そんな愛らしいこのかちゃんの姿を、
言葉も忘れてただ、食い入るように見つめ続けていました。
そのあまりに熱い視線に、
このかちゃんの胸はドキドキと高鳴りました。
いつもなら恥ずかしくて逃げ出したくなるところですが、
今回は違いました。
このかちゃんは、指先まで伝わる鼓動を必死にこらえながら、
潤んだ瞳でプラムちゃんの視線を真っ直ぐに受け止めました。
そして、照れくさそうに、
心からの喜びを込めて、花がほころぶように優しく微笑みました。
不安で少し潤んでいた瞳が、自分を見つめて、嬉しさでふわりと輝く。
そのはかなげで優しい笑顔を見た瞬間、プラムちゃんの心には、
これまで経験したことがないほどの愛しさが一気に押し寄せました。
(ああ、もう……、なんて可愛いんだろう……っ!)
言葉ではもう、この溢れる想いを伝えきれない。誰にも渡したくない、
ずっとこうして隣にいたい――。
プラムちゃんは衝動を抑えきれなくなり、
たまらずこのかちゃんを力いっぱい抱きしめました。
抱きしめるうちに、
信じられないほどの幸福感が全身に満ち溢れてきました。
その喜びを体全体で表現したくて、
プラムちゃんはもう、
うずうずしてじっとしていられませんでした。
弾かれたように両手を高く突き上げ、
「やったぁぁーーっ!結婚するんだ!
僕はこのかちゃんと結婚するんだよっ!」
とぴょんぴょんと飛び跳ねて喜びを表しました。
その場にいた小龍ちゃんたちは「おめでとう!」「良かったね!」と
次々に祝福の言葉をかけ、惜しみない拍手を送りました。
プラムちゃんもその祝福の言葉に
このかちゃんの肩を抱きよせながら
「ありがとうっ、僕達これから幸せになるよっ!アーッハハッ」と
宣言して大笑いしました。
けれど、幸せの絶頂にいるプラムちゃんは、
肝心なことを二つも忘れていました。
まず一つめは、このかちゃんへのお返事です。
「これから、よろしくお願いします」
そう勇気を出して伝えてくれたこのかちゃんの言葉を、
プラムちゃんは舞い上がるあまり、
ほとんどスルーしてしまった形になっていたのです。
このかちゃんとしては、一生懸命な想いに対して、
ちゃんと言葉でお返事が欲しかったんです。
皆に温かく祝福され、プラムちゃんにぎゅっと肩を抱き寄せられながらも、
このかちゃんの可愛いお顔は少しだけ「むぅ」と膨らんでいました。
大好きなプラムちゃんに抱きしめられて、
心がぽかぽかと幸せな気持ちになっているのは確かです。
でも、それとは裏腹に、胸の中には少しだけ残念な気持ちも残っていました。
(……プラムちゃんにぎゅってされるのは、とっても嬉しい。
でも、勇気を出して伝えた私の言葉に、
ちゃんとお返事がないのは、やっぱり寂しい。
このもどかしい気持ちのぶんは、結婚してからゆっくり時間をかけて、
プラムちゃんに分かってもらわなきゃ!)
幸せな余韻に包まれながらも、心の中ではすでに、
これから二人で歩んでいく穏やかな未来を見つめているようです。
おっとりしているように見えて、実はこのかちゃんの方が、
プラムちゃんを優しく包み込んでリードしていく
「しっかり者の奥さん」になりそうですね💕
そして二つめは、親友であるノワールちゃんのこと。
あんなに心配していたはずなのに、今のプラムちゃんの頭の中からは、
ノワールちゃんの存在がすっかり抜け落ちていました。
親友としては少し寂しい状況ですが、
今の彼は幸せの余韻にどっぷりと浸かっていて、
他のことは何ひとつ考えられない状態みたいですね。
このかちゃんと結ばれた喜びで胸がいっぱいになっている
今この時は、
それも仕方がないのかもしれません。
プラムちゃんとノワールちゃん視点
翌朝、まばゆい朝陽が昇る頃。
ノワールちゃんは、お兄ちゃんのすばるちゃんに優しく肩を抱かれ、
寄り添うようにして帰ってきました。
一方、プラムちゃんはというと、
昨夜の興奮でほとんど眠れないまま
朝を迎え、このかちゃんと幸せそうに笑い合っていました。
けれど、ノワールちゃんの姿が目に入った瞬間、
はたと我に返って慌てて駆け寄りました。
「ノワールちゃん……あの、その……大丈夫?」
胸にあるのは、このかちゃんとうまくいった喜びと、
それ以上に親友のノワールちゃんの事を
すっかり忘れていた後ろめたさ。
複雑な気持ちが混ざり合って、気の利いた言葉がうまく出てきません。
二人が寄り添う姿を、
ノワールちゃんはじっと見つめました。
自分の恋がうまくいっていない分、
胸の奥にはまだ小さな痛みがチクリと残っています。
けれど一晩中、すばるお兄ちゃんに慰めてもらい、
思い切り泣き明かしたノワールちゃんの心は、驚くほど穏やかでした。
プラムちゃんが、どこか気まずそうに「ノワール、その……」と
申し訳なさそうな視線を向けると、
ノワールちゃんはそれを包み込むような、優しい笑顔を見せました。
「……僕は大丈夫だよ。二人が一緒にいるのを見て、安心した。
……うまくいったみたいで、本当によかったね! おめでとう!」
言葉をうまく飾ることはできないけれど、
一つひとつの言葉に精一杯の真心がこもっています。
ノワールちゃんからの真っ直ぐすぎる祝福の言葉に、
プラムちゃんは急に、
どうしようもないほどの照れくささが込み上げてきました。
「えっ、あ……う、うん……。……ありがとう」
顔を真っ赤にして、照れ隠しに頭をかくプラムちゃん。
けれどノワールちゃんの驚くほど穏やかで優しい笑顔が目に映ると、
照れていたプラムちゃんの顔も、自然と柔らかくほころんでいきました。
自分たちの幸せを心から喜んでくれる親友の存在が、
何よりも温かく、胸に響きます。
プラムちゃんはこのかちゃんの肩をそっと抱き寄せたまま、
今度はノワールちゃんに向かって、頼もしく、そして誇らしげに、
最高に眩しい笑顔を返しました。
親友の深い優しさに包まれた、幸せいっぱいの朝でした。
その日の昼前、プラムちゃんはこのかちゃんを連れて、
嬉しそうに帰路につきました。
別れ際、プラムちゃんはノワールちゃんの両肩にぽんと手を置いて、
「……ごめんな。昨日は俺、自分の惚気(のろけ)ばっかり喋っちゃってさ。
もしノワールが何か言いたいことがあったなら、次はちゃんと聞くから。
遠慮しないで、いつでも頼ってくれよな!
親友のために、俺、精一杯力になりたいんだ」
と、力強く告げました。
昨夜、自分がノワールちゃんの異変にすぐ気づけなかったことを、
彼なりにずっと気にしていたんですね。
ノワールちゃんは、その不器用で真っ直ぐな優しさに胸が熱くなり、
「……うん、ありがとう」と、微笑み返しました。
遠ざかっていく二人の後ろ姿をじっと見つめていると、
胸の奥に少しだけ寂しさが込み上げてきます。
けれど、親友がくれた温かい言葉を何度も心の中で反芻しながら、
二人の幸せを願って、いつまでも穏やかな笑顔で見送っていました。
ノワールちゃんとすばるちゃんとリューさん視点
その後、ノワールちゃんの悩みは、思わぬ形で一気に決着へと向かいました。
きっかけは、樫の木の精霊リューさんが冬眠から目覚めたことです。
リューさんは、すばるちゃんとノワールちゃんが幼い頃から
子守りをしてきた、執事のような存在です。
さっそく状況を報告したものの、
頼れる相談役であるリューさんの反応は、予想だにしない厳しいものでした。
彼は二人をその場に正座させると、低く重い声で切り出しました。
「すばる殿。弟を案じるのは結構ですが、それは単なる『甘やかし』です。
傷つくのを恐れる弟の背を押し、道を示すのが兄の役目。
手立ても打たず傍観しているだけなど、あまりに情けない」
リューさんは拳を固く握り、
一文字ずつ噛みしめるように言葉を重ねます。
「相手の女の子の立場になって考えなさい。会いにも来ない、
連絡も無い、理由も分からず放置されて……
今、一番悲しんでいるのは誰ですか。
陰で泣いている者に目を向けないとは、なんと想像力の足りないことか」
続いてリューさんの鋭い視線が、
肩を震わせるノワールを射抜きました。
「そしてノワール殿。自分一人が傷つくのを恐れて逃げ回り、
相手の悲しみに向き合わぬとは、龍の風上にも置けませんぞ。
ノワール殿が怖がって立ち止まっている間、
彼女がどれほど寂しい思いをしているか、考えたことはありますか?
すばる殿にはスマホを手作りして連絡を取らせることも出来、
ノワール殿には会いに行く方法がいくらでもあったはず。
それなのに……。二人して、ただ手をこまねいていたとは……」
返す言葉もない正論でした。
すばるちゃんは、自分の「思いやり」が実は弟の成長を止め、
見知らぬ地龍の少女を孤独に突き落としていた事実に、
ハッとさせられました。
自らも恋愛に疎かったすばるちゃんには、
待ち続ける側の悲しみにまで想像を巡らせる余裕がなかったのです。
すばるちゃんは言い訳ひとつ口にせず、
その厳しい叱責をすべて自らの至らなさとして、
真っ直ぐに、そして静かに受け止めていました。
沈黙が部屋を支配し、完璧だった兄が深くうなだれる姿を見て、
ノワールちゃんの胸が激しく痛みました。
(僕のせいで、お兄ちゃんまで……!)
背が低いコンプレックスや自信のなさを一人で抱え込んでいた自分。
でも、自分のせいで大切なお兄ちゃんが叱られ、肩を落としている。
その姿は、どうしても見ていられませんでした。
ノワールちゃんは溢れそうな涙を必死にこらえ、顔を上げました。
そして大好きな兄のため、震える声で精一杯の想いを叫びました。
「リュー……お兄ちゃんは悪くないんだ!
彼女に嫌われるのが怖くて逃げ回っていたのも、
お兄ちゃんに相談するのはなんだか格好悪くて、
僕が勝手に意地を張っていただけなんだ……っ。
お兄ちゃんは、僕が自分の力で向き合えるようになるまで、
ずっと黙って見守ってくれていたんだよ!」」
ついにこらえきれず、大粒の涙が溢れ出して、
しゃくりあげながらも必死に兄をかばうその姿に、
すばるちゃんは胸を締め付けられました。
(頼りにしてほしくて、話してくれるのをただ待っていたけれど……。
僕が物分かりのいい兄の振りをしている間、
この子はたった一人で、ずっと追い詰められていたんだな……)
自分の不甲斐なさを突きつけられたすばるちゃんは、
たまらず、自責と愛おしさを込めて、
その小さな体をぎゅっと抱きしめました。
兄の温もりは、「もう一人で抱えなくていい」と
語りかけてくれるかのようでした。
その安堵感に突き動かされるように、
ノワールちゃんは兄の胸に顔をうずめ、
堰を切ったように泣きじゃくりました。
その光景に、厳しい教育者を演じていたリューさんも、
ただ黙って見守るほかありませんでした。
健気に寄り添い合う二人の姿を見つめるうちに、
隠しきれない親心が溢れ出し、
険しかった表情はいつしか優しく穏やかなものへと溶けていきました。
リューさんは少し気まずそうに、けれど慈しむような手つきで、
そっとノワールちゃんの頭を撫でました。
「ノワール殿……恋をすれば、怖くなることもあるでしょう。
ですが、向き合わねば道は閉ざされてしまいます。
その娘さんは、決してあなたを嫌ってなどいないはず。
怖がって逃げていてはいけません。
しっかり向き合って、前へ進むのです」
リューさんの言葉が、静かに胸の奥まで染み渡りました。
ノワールちゃんは袖で涙を拭って顔を上げます。
腫れた瞳の奥には、もう迷いのない、確かな決意の光でした。
「……うん。すごく怖いけど、逃げたままじゃダメだよね。
僕、勇気を出して、Mちゃんに会ってみる!」
その言葉を聞いたすばるちゃんは胸を熱くし、
弟の肩を力強く叩きました。
「ノワールがそう決めたなら、僕は全力で応援するよ。頑張ってこい!」
「うんっ! ありがとう、お兄ちゃん!」
ノワールちゃんは涙の跡が残る顔をパッと輝かせ、
満面の笑みを浮かべました。
寄り添い合う二人を、リューさんは穏やかな微笑みで見守っていました。
弟の勇気と、兄の真っ直ぐな愛情。そのすべてを祝福するように、
リューさんは深く静かに頷いたのでした。
以上です。
※文章が長すぎたので上、下に分け直して修正しました。
下では後日談と考察を追加しますので
良ければ読んでみてくださいね^^