歪んだ愛の檻から、自分の人生へ -「主観2.0」で私を開拓する

歪んだ愛の檻から、自分の人生へ -「主観2.0」で私を開拓する

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コラム
「毒親」という言葉を、近年よく耳にするようになりました。これは過干渉や暴力、ネグレクトなどによって子どもの人生を支配し、大人になってからも長く悪影響を及ぼし続ける親を指す俗称です。アメリカの心理療法士スーザン・フォワードが提唱した「Toxic Parents(毒になる親)」がその語源とされています。

主なタイプには、支配型、批判型、自己中心的な依存型、ネグレクト、そして虐待などが挙げられます。子どもは常に親の機嫌に振り回され、罪悪感を植え付けられながら育ちます。その結果、低い自己肯定感や他人の顔色をうかがう癖、感情の麻痺といった「アダルトチルドレン」や「愛着障害」の傾向に苦しむことも少なくありません。

医学的に、親の性格や行動を強制的に変える薬や治療法はありません。「毒親」そのものを治療することは極めて困難です。そのため、回復へのゴールは親を変えることではなく、「親の影響から脱出し、自分自身の人生を取り戻すこと」にあります。

親の呪縛という「主観1.0」のバグ

精神科の領域に足を運ぶ患者さんの多くは、子どもの側です。彼らは激しい自責の念に駆られています。親の他責的な態度によって傷つき、大人になった今も「自分が悪かったのではないか」と苦しんでいるのです。また、「自分が大人になったとき、自分の子どもに毒親として振る舞ってしまうのではないか」という恐怖を抱くこともあります。それはまるで、白雪姫に登場する魔女の毒リンゴのように、世代を超えて連鎖する呪いの恐怖です。

これは言わば、親の価値観や都合によって強制インストールされた「主観1.0」というOSのバグです。「自分が悪い」「親の言うことは絶対」という極端な思考の癖(認知の歪み)が、自分の本心であるかのように錯覚させられている状態なのです。

しかし、親から傷つけられた「子どもの心の傷」を癒やすカウンセリングは、すでに確立されています。

うつ病などの治療とは異なり、この領域では薬物療法よりも、カウンセリングによる認知治療が主体となります。ここでの薬物療法は、あくまでカウンセリングを落ち着いて受けられるようにするための補助的な手段です。臨床心理士や公認心理師などの専門家と共に、ストレスの原因となった記憶の要素を分解し、過去のトラウマを整理していきます。それは古い「主観1.0」をアンインストールし、新しい自分を開拓するための準備期間でもあります。

専門的なアプローチには、以下のようなものがあります。

■認知行動療法(CBT)
「主観1.0」の歪んだ思考の癖をほぐし、現実的な捉え方に修正します。
■スキーマ療法
幼少期に満たされなかった核心的な傷に気づき、自分で自分を育み直します。■EMDR
フラッシュバックする暴力の記憶を、眼球運動によって脳内で再処理します。

「主観2.0」へのアップデートと、新しい自分の開拓

専門的な治療と同時に、日常生活の中で自ら一歩を踏み出し、「主観2.0」へと自分をアップデートしていくステップが重要になります。他人の目を気にする生き方から、自分軸で世界を再定義していく開拓のプロセスです。

まずは親に対する怒りや悲しみをノートにありのまま書き殴る「ジャーナリング」で、感情を脳の外へ吐き出します。そして、「親の機嫌が悪いのは親の問題であり、自分のせいではない」と考える「課題の分離」を意識します。「親がいつか謝ってくれる、愛してくれる」という期待を完全に手放す「健全な諦め」を受け入れたとき、親は「変えられない過去の存在」へと変わっていきます。

育てるのが苦手な親、子どもをひとりの人間(個)として認識できずに抑圧してしまう親――。親のセンスや未熟さに振り回される必要はもうありません。

物理的な距離を置き、親の期待に応えない選択をすること。そしてカウンセラーや心療内科に相談すること。それは決して逃げではなく、古いOSを捨て去り、「主観2.0」という新しい自分の物語を開拓するための、確かな一歩なのです。

                           沙門蒼俊  合掌
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