灰色になった世界で、手をつなぐこと

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コラム
 ある日突然、世界から色が消えたように感じることがあります。蒼俊も、灰色の世界を見た経験者です。
 これまで当たり前にできていたことが、どうしてもできなくなってしまう。
 文字を眺めてもただの記号にしか見えず、漫画を読もうとしてもコマを追うルートが分からなくなってしまう。
 あれほど心を震わせた音楽はただの雑音になり、大好きだった趣味に向かう気力も湧いてこない。
 それは本人の怠けなどではなく、脳のエネルギーがすっかり枯渇してしまったサインなのです。専門的な言葉では「アンヘドニア(興味の喪失)」と呼ぶそうですが、脳の報酬系という部分が傷つくと、楽しい、面白いという感情が全く動かなくなってしまいます。
 そして、このエネルギー不足は、人間の本能である「性的な関心」をも奪っていきます。脳が疲弊することでホルモンの分泌が抑えられ、気持ちだけでなく、身体的な興奮反応さえも起こりにくくなってしまうのです。

 ここで悲しい誤解が生まれることがあります。パートナーの方は「自分への愛情が冷めてしまったのではないか」「自分に魅力がなくなったのではないか」と不安になり、二人の関係がギクシャクしてしまうのです。

どうか知っておいてください。

 これは決して愛情の枯渇ではなく、病気が見せている一時的な症状にすぎません。
 心のエネルギーが回復するまでは、無理に性行為を求める必要はありません。
 その代わりに、そっと手を握ったり、優しくハグをしたりするスキンシップを大切にしてみてください。
 心が傷ついているとき、パートナーから「ハグされること」は、どんな処方薬よりも深く、辛い闘病の時間を癒やしてくれる「お薬」になります。
 もし大切な人のメンタルが優れないときは、どうか積極的に抱きしめてあげてください。

 うつ病の回復とともに、食欲や睡眠欲が戻るように、性的な関心や本来の趣味への情熱も自然と戻ってきます。
 もし、服用しているお薬の副作用が原因だと感じられる場合は、決して一人で抱え込まず、主治医の先生に相談してみてください。性機能への影響が少ない別のお薬(ミルタザピンなど)への変更を提案してくれるなど、きっと回復への優しい道筋を一緒に考えてくれるはずです。

                         沙門蒼俊  合掌
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