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灰色になった世界で、手をつなぐこと

 ある日突然、世界から色が消えたように感じることがあります。蒼俊も、灰色の世界を見た経験者です。 これまで当たり前にできていたことが、どうしてもできなくなってしまう。 文字を眺めてもただの記号にしか見えず、漫画を読もうとしてもコマを追うルートが分からなくなってしまう。 あれほど心を震わせた音楽はただの雑音になり、大好きだった趣味に向かう気力も湧いてこない。  それは本人の怠けなどではなく、脳のエネルギーがすっかり枯渇してしまったサインなのです。専門的な言葉では「アンヘドニア(興味の喪失)」と呼ぶそうですが、脳の報酬系という部分が傷つくと、楽しい、面白いという感情が全く動かなくなってしまいます。 そして、このエネルギー不足は、人間の本能である「性的な関心」をも奪っていきます。脳が疲弊することでホルモンの分泌が抑えられ、気持ちだけでなく、身体的な興奮反応さえも起こりにくくなってしまうのです。 ここで悲しい誤解が生まれることがあります。パートナーの方は「自分への愛情が冷めてしまったのではないか」「自分に魅力がなくなったのではないか」と不安になり、二人の関係がギクシャクしてしまうのです。どうか知っておいてください。 これは決して愛情の枯渇ではなく、病気が見せている一時的な症状にすぎません。 心のエネルギーが回復するまでは、無理に性行為を求める必要はありません。 その代わりに、そっと手を握ったり、優しくハグをしたりするスキンシップを大切にしてみてください。 心が傷ついているとき、パートナーから「ハグされること」は、どんな処方薬よりも深く、辛い闘病の時間を癒やしてくれる「お薬」になります。
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「消えてしまいたい」という心の霧と、行き場のない感情の居場所

 いつからだったでしょうか。朝、目が覚めても体に重い鉛が乗っているようで、起き上がることすら億劫に感じてしまう。そんな日々が続くことがあります。 ただ毎日を「こなす」だけで精一杯になり、心の中にはいつも薄暗い霧が立ち込めている。 そんな時、心の奥底で小さな声が「助けてほしい」と呟いているのかもしれません。 けれど、私たちはその声を何度も無視してしまいがちです。日本では昔から、どんなに苦しくても「頑張ります」と言って耐え忍ぶことこそが「美徳」とされてきました。 真面目で優しい人ほど、その見えない縛りに囚われてしまいます。「これくらい、みんな耐えているのだから」と自分に鞭を打ち、平気なフリを続けてしまうのです。 しかし、心と体が発する悲鳴に嘘はつけません。「ちゃんと疲れている」と感じたら、その声を絶対に逃してはならないのです。 限界を超えた心の叫びは、時に「この世から消えてしまいたい」という、激しい痛みを伴う希死念慮に変わることがあります。 誰かがそのような苦しみを訴えるとき、周囲は人間関係や仕事の挫折など、目に見える「原因」を探そうとしがちです。 しかし、メンタルヘルスの不調における苦しみは、そうした明確な原因がない場合が決して少なくありません。 具体的なトラブルがあるわけでもないのに、ただただ「消えてしまいたい」という考えに支配されてしまう。 それは、これまでの我慢や疲労が限界まで蓄積し、感情の行き場がなくなってしまっているサインなのです。 どこにも吐き出せず、ぶつけることもできない感情が、内側へ内側へと向かった結果、自分自身を消し去りたいという思考に行き着いてしまいます。 原
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