空室が決まっていても安心しない。賃貸マンションの貸主に見直してほしい募集条件

空室が決まっていても安心しない。賃貸マンションの貸主に見直してほしい募集条件

記事
コラム
賃貸マンションを所有していて、
「空室が出ても比較的すぐ決まっている」
「管理会社から特に問題があるとは言われていない」
という状態なら、募集条件について深く確認する機会はあまりないと思います。

実際、空室期間が長くなければ、「今の募集方法で問題ない」
と考えるのも自然です。

ただ、私が実際にマンションの募集状況を確認して感じたのは、
「空室が決まっていること」と「良い条件で決まっていること」は別
だということです。

以前、東京都内にある築約30年、1K中心のマンション3棟、合計約100戸の募集方法を見直したことがあります。

当時の3棟全体の入居率は約80%でした。

空室が発生しても比較的早く入居者を決めてくれる不動産会社があったため、担当者も募集方法そのものには大きな問題を感じていませんでした。

しかし、実際に周辺物件や募集条件を調べていくと、かなり改善できる部分がありました。


問題は「決まらないこと」ではありませんでした


最初に確認したのは、現在どのような条件で募集しているのかです。

すると、
募集賃料が何年もほとんど変わっていない
広告料を賃料2か月分設定している
フリーレントを多く付けている住戸がある
室内写真が少ない
写真の撮影方法もあまり良くない
募集図面が白黒で見づらい


といった状態でした。

空室自体は決まっています。
しかし、低めの家賃で募集し、さらに広告料やフリーレントを多く使って決めているのであれば、貸主から見た収益性は必ずしも良いとはいえません。

例えば同じ1か月で決まったとしても、

家賃90,000円
AD2か月
フリーレント1か月 で決まる物件と、

家賃95,000円
AD1か月
フリーレントほぼなし

で決まる物件では、収益はかなり変わります。

だから貸主として確認したいのは、
「何か月で決まったか」だけではなく、「どんな条件で決まったのか」
だと思います。


約15件の競合物件を実際に確認しました


では、今の賃料が高いのか安いのか。
ここを判断するため、周辺の競合物件を約15件確認しました。

ポータルサイトに掲載されている家賃だけを見るのではなく、
実際に室内も確認しています。

比較したのは、

築年数
駅からの距離
間取り
室内状態
設備
建物全体の状態
募集賃料
などです。

今回のマンションは築約30年。
築年数だけを見れば、新しい物件ではありません。

ただ、
駅徒歩10分以内
バス・トイレ別
オートロック
東京都内の比較的良い立地
という強みがありました。

実際に競合物件を見ると、それまでの9万円という賃料は少し安いと判断しました。

そこで、9万円から9万5,000円へ募集賃料を上げる
ことを提案しました。

家賃を5,000円上げて、ADは1か月減らしました

通常であれば、
「家賃を上げるなら、その分ADを増やした方がいいのでは?」
と考えるかもしれません。

しかし今回行ったのは逆です。
募集賃料 90,000円 → 95,000円
広告料 2か月分 → 1か月分
フリーレント 多め → 原則当月分のみ


という形で見直しました。

貸主から見ると、
家賃は高くなる
仲介会社へ支払う広告料は減る
フリーレントも減る
ということになります。

当然、「それで本当に決まるの?」
という話になります。

ただ、周辺の競合を実際に見た結果として、
95,000円でも十分選ばれる物件だと判断できたため、この条件で募集しました。


貸主が一度確認してほしい「AD」

賃貸経営をしていても、
ADについてあまり気にしていない貸主さんは意外といます。

ADとは、成約した際などに貸主側から仲介会社へ支払われる広告料です。

例えば、
AD50%
AD100%
AD200%

などと設定されることがあります。

地域や物件によっては、ADを付けること自体は珍しくありません。

ADがあることで仲介会社に物件を認知してもらいやすくなったり、
紹介を増やす一つの材料になったりすることもあります。

だから、AD=悪いではありません。
ただ、「昔から2か月払っているから」
という理由だけで、何年も同じ条件を続ける必要があるかは別です。

市場が変わっているなら、
AD2か月必要なのか
1か月でも決まるのか
そもそもAD以外に改善する部分がないか
を一度確認してみてもよいと思います。

毎回すぐ決まっているのであれば、もしかすると募集条件が良すぎる可能性もあります。


フリーレントも「付ければ決まりやすい」だけで考えない

フリーレントも同じです。

借主からすると、「1か月家賃無料」
は非常に分かりやすいメリットです。

募集を強化する方法として有効なこともあります。
ただ貸主からすると、当然その期間の家賃収入はありません。

例えば家賃95,000円でフリーレント1か月なら、それだけで95,000円です。
入居を早めるために必要なら問題ありません。

しかし、フリーレントがなくても同じスピードで決まる物件なのに、
以前から付けているからという理由で続けているのであれば、見直す余地があります。

賃貸募集では、
家賃
礼金
フリーレント
AD
それぞれを単独で見るのではなく、
全体でどの条件なら一番収益性が高くなるのか
を見ることが大切です。


賃料を上げるなら「見せ方」も変える

今回、募集賃料を9万円から9万5,000円へ上げました。

ただし、「家賃だけ5,000円上げて終わり」
にはしていません。

それまでの募集写真は枚数が少なく、
撮影角度もあまり良くありませんでした。

そこで写真をすべて撮り直しました。

室内だけではなく、
収納
キッチン
浴室
設備
なども分かるように撮影。

募集図面も、白黒で見づらかったものから、情報が分かりやすいカラーの図面へ変更しました。

これは非常に重要だと思っています。

家賃を上げるのであれば、
その賃料でも選ばれる募集ページにする必要があります。

例えば同じ95,000円の物件が2つ並んでいて、
一方は写真20枚
一方は写真5枚
であれば、借主から見た比較のしやすさも変わります。

物件自体は良いのに、募集ページで魅力を伝えられていない。

この状態で、「問い合わせが少ないから家賃を下げましょう」
となってしまうのは、少しもったいないと思います。


1社が決めてくれる状態も、一度確認してみる

今回の物件では、昔から付き合いのある不動産会社が比較的多くの空室を決めていました。

これは貸主にとって非常にありがたい存在です。
長く付き合っている仲介会社を大切にすることも重要だと思います。

ただ、その会社しか決めていない
のであれば、一度募集状況を確認してみてもよいと思います。

今回も、それまでの仲介会社との取引をやめたわけではありません。
新しい募集条件を統一したうえで、その会社にも引き続き紹介してもらいました。

その一方で、募集先を広げることで、他の仲介会社からも問い合わせや申込みが入る状態へ変えていきました。

結果として、
特定の1社に依存しなくても空室を決められる募集体制
を作ることができました。

貸主としては、
「いつもの会社が決めてくれるから大丈夫」だけではなく、
他社でも紹介できるのか
業者間で物件情報が流通しているのか
ポータルサイトではどう掲載されているのか
というところまで時々確認してみてもよいと思います。


原状回復が遅いだけで「空室期間」は伸びる


もう一つ見直したのが、原状回復です。

空室が複数あると、
「他の部屋が決まったら、この部屋も工事しよう」
と原状回復を後回しにすることがあります。

ただ、その状態では実質的に募集できません。

例えば、
4月1日に退去
4月20日に原状回復開始
5月1日に完成
5月から本格募集
となれば、退去から1か月間は十分に募集できない状態です。

そこで今回のケースでは、
退去後できるだけ早い段階で原状回復工事へ入るように変更しました。

空室対策というと、
・家賃を下げる
・ADを増やす
・フリーレントを増やす
という話になりがちですが、退去から募集可能な状態になるまでの日数を短くすることも立派な空室対策です。

むしろ、この部分なら家賃を下げずに改善できる可能性があります。


結果として約5か月で入居率95%以上へ

こうした見直しを行った結果、
募集した住戸の多くが掲載から1か月以内に成約しました。

3棟全体の入居率も、
支援開始時 約80%
約5か月後 95%以上
まで改善しました。

しかも、
家賃を下げて空室を埋めたわけではありません。

募集賃料は、
90,000円 → 95,000円へ上げています。

同時に、ADは2か月分から1か月分へ削減
フリーレントも縮小
募集写真を撮り直し
募集図面を改善
募集先を拡大
原状回復を早期化
という形で、募集全体を見直しました。

つまり今回の改善は、
「空室対策=家賃を下げる」ではなかった
ということです。


貸主に確認してほしいのは「空室率」だけではない


今回のケースで特に感じたのは、
入居率だけを見ていると、募集条件の問題には気づきにくい
ということです。

例えば入居率95%なら、
「うちはかなり良い状態」
と思うでしょう。

もちろん95%という入居率自体は良い数字です。

ただ、その95%を維持するために、
周辺より家賃を5,000円安くしている
毎回ADを2か月支払っている
毎回フリーレントを付けている

のであれば、まだ改善できる可能性があります。

反対に、
家賃を少し上げても
ADを減らしても
ほとんど同じスピードで決まるのであれば、その方が収益性は高くなります。

だから貸主の方には、
「空室が決まっているか」だけではなく、「どんな条件で決まっているか」
まで一度確認してみてほしいと思います。

こんな状態なら一度募集条件を確認してみてもいい

特に、
5年以上募集賃料を大きく変えていない
毎回同じADを付けている
毎回フリーレントを付けている
いつも同じ不動産会社だけが成約している
室内写真を何年も撮り直していない
募集図面をしばらく見ていない
退去後の原状回復に時間がかかっている

という物件であれば、一度現在の市場と比較してみてもよいと思います。

必ず家賃を上げられるという話ではありません。

調査した結果、
「今の家賃が適正です」となる場合もあります。

あるいは、
「家賃はそのままでADだけ減らしてみる」
「写真だけ改善する」
という結論になることもあります。

重要なのは、
昔決めた募集条件を、そのまま現在も使い続けないことです。

賃貸市場は変わります。
周辺の家賃も変わります。
借主が物件を探す方法も変わります。
競合物件の設備も変わります。
だから募集条件も、時々見直した方がよいと思っています。


「今の募集条件は本当に適正?」という相談も受けています




私はココナラでも、貸主さんや不動産投資をしている方から、

「今の家賃は相場に合っていますか?」
「管理会社からこの条件を提案されていますが妥当ですか?」
「もう少し家賃を上げられますか?」
「空室は決まっていますが、募集条件を見直した方がいいですか?」
といったご相談を受けています。

単純に、
「家賃を上げましょう」
「管理会社を変えましょう」
という提案をするものではありません。

周辺の競合物件や現在の募集状況を確認しながら、

家賃
初期費用
AD
フリーレント
募集資料
募集方法
などを第三者の立場から整理します。

今回の記事のように、
空室が決まっている物件でも、募集条件を見直すことで収益性を改善できる場合があります。

「空室では困っていないけれど、今の募集方法が本当に適正なのか気になる」
という貸主さんも、一度現在の条件を確認してみてはいかがでしょうか。

決まっているから問題ない、ではなく、良い条件で決まっているかまで見る。
長く賃貸経営をするのであれば、この視点も大切だと思います。
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