東京の家賃は上がっている。それでも不動産投資が簡単になったわけではない理由

東京の家賃は上がっている。それでも不動産投資が簡単になったわけではない理由

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コラム
最近、不動産投資を検討している方であれば、
「東京のマンション価格が上がっている」
「東京では家賃も上がっている」
という話を聞く機会が増えたと思います。

実際、東京の賃貸市場は強いです。

アットホームが公表した2026年8月の募集家賃データでは、東京23区の賃貸マンションはシングル向けが2015年以降の最高値を更新。カップル向けも15カ月連続で最高値を更新しています。

こうした数字を見ると、

「これだけ家賃が上がっているなら、今から東京の不動産を買っても家賃収入が増えていくのでは?」

と思う方もいるかもしれません。

ただ、不動産仲介の現場にいる立場から見ると、
家賃が上がっていることと、不動産投資が簡単になっていることは別の話です。


家賃だけではなく、物件価格も上がっている

まず見ないといけないのが購入価格です。

東京23区の中古マンション70㎡換算価格は、
2026年9月時点で1億2,629万円です。

直近では4カ月連続で前月を下回っていますが、
それでも価格水準そのものはかなり高い状態にあります。

もちろん、この数字は70㎡換算なので、
投資用ワンルームの価格そのものではありません。

ただ、東京の不動産を取得するために必要なお金も大きくなっている
という市場環境を見る材料にはなります。

不動産投資では、「家賃がいくら取れるか」
だけではなく、その家賃を得るために、物件をいくらで購入するのか
が非常に重要です。

例えば単純な例として、
年間120万円の家賃が得られる3,000万円の物件なら、表面利回りは4%です。

家賃が10%上がって年間132万円になったとしても、
物件価格が20%上がって3,600万円になれば、表面利回りは約3.67%です。

家賃は上がっています。

しかし購入価格もそれ以上に上がれば、
投資家から見た収益性が良くなったとは限りません。

ここは投資初心者の方に特に見てほしいところです。


東京では「高い家賃が取れる」より「高い価格で買う」影響も大きい

現在の東京の投資市場を象徴する数字があります。

日本不動産研究所の2026年4月の調査では、
東京・城南地区の賃貸住宅一棟の期待利回りは、
ワンルームタイプ 3.6%  
ファミリータイプ 3.7%
となっています。

これは個人が購入するワンルームマンションの表面利回りをそのまま示した数字ではなく、投資家調査における期待利回りです。

ただ、東京の不動産価格がかなり高く評価されている
ことは分かります。

初心者の方からすると、
「東京なら空室になりにくそう」
「家賃も上がっている」
「将来売却するときも売りやすそう」
という安心感があると思います。

これらは東京のメリットとして考えてよいと思います。
ただし、その安心感を物件価格としてどこまで支払うのか。
ここまで考える必要があります。


さらに今は、金利も無視できない

もう一つ以前と状況が違うのが金利です。
日本銀行は現在、無担保コールレートを1.25%程度で推移するよう促す金融政策をとっています。

もちろん、不動産投資ローンの金利がそのまま1.25%という意味ではありません。

実際の借入金利は、
・金融機関  
・購入者の属性  
・物件  
・借入期間  
・融資割合
などによって変わります。

重要なのは、
「低金利だから多少高く買っても大丈夫」という以前の感覚だけで収支を考えないことです。

不動産投資では、家賃収入が増えても、
・ローン返済  
・管理費  
・修繕積立金  
・賃貸管理費  
・固定資産税  
・原状回復費  
・空室期間
などがあります。

表面利回りだけを見て、「4%あるから大丈夫」
とは判断できません。

私が初心者投資家なら「今の家賃」だけでは判断しない

ここからは、賃貸仲介をしている立場から特にお伝えしたいところです。

投資物件の販売資料を見ると、「現在賃料10万円で賃貸中」
と書かれていることがあります。

初心者の方は、
「毎月10万円入ってくるなら安心だ」
と思うかもしれません。

でも私なら、その10万円が次の入居者でも取れるのか
を確認します。

例えば、現在の入居者が5年前から住んでいるとします。

現在賃料は10万円。
しかし周辺を調べたら、同じような物件が9万5,000円前後で募集されている。
この場合、今の入居者が住んでいる間は10万円入るかもしれません。

しかし退去した瞬間、同じ10万円で募集してすぐ決まるとは限りません。
反対に、現在9万円で貸しているけれど、周辺では10万円前後まで上がっている。
という物件もあります。

だから、現在賃料=市場賃料
とは考えない方がいいです。


「東京だから決まる」も少し危険

東京は地方と比較すると、賃貸需要が強いエリアが多いと思います。

ただ、東京ならどんな物件でも簡単に決まるわけではありません。
これは実際に賃貸募集を見ていても感じます。

特に最近は、築浅マンションだからといって、
以前のように募集を出せばすぐ決まるとは限らなくなってきました。

私自身、募集現場を見ていると、空室期間を短くするために、
・AD(広告料)の増額  
・フリーレントの設定  
・仲介会社向けキャンペーン  
・募集条件の見直し
といった対応を行う物件を以前より目にするようになっています。

特に、多くの賃貸物件を保有・管理している大手や中規模の会社は、
・問い合わせ数  
・内見数  
・申込み数  
・競合物件の募集条件
などを確認しながら、市場の変化に比較的早く対応している印象があります。

ここで投資家の方にも知っておいてほしいのが、AD(広告料)です。
ADとは、成約した際などに貸主側から仲介会社へ支払われる広告料です。

例えば、似たような条件の物件が2つあったとして、
A物件 ADなし  
B物件 AD100%
ということがあります。

もちろん、仲介会社がお客様の希望を無視してADが高い物件だけを紹介するという意味ではありません。

ただ、条件がほとんど変わらないのであれば、仲介会社にとって収益性のある物件の方が積極的に提案されやすくなることは、現場ではあり得ます。

貸主側からすると、
「家賃はいくらなら決まるのか」
だけを見るのではなく、仲介会社から見ても紹介しやすい募集条件になっているかという視点も必要になります。

一方で、地域密着型の管理会社などでは、長年同じ地域で募集していることで、
「この地域ならこの家賃で決まる」
という過去の感覚をベースに募集条件を決めているケースを見ることもあります。

もちろん、
地場の不動産会社だから市場を把握していない
という意味ではありません。

その地域の入居者層や細かな需要を、
大手より詳しく把握している会社もあります。

ただ、東京のように賃料や競合物件の募集条件が短期間で変化する市場では、
数年前まで決まっていた募集方法が、今もそのまま通用するとは限りません。

同じ駅
同じ徒歩分数
同じくらいの築年数
それでも、すぐ決まる物件と数カ月残る物件があります。

その差には、
・賃料  
・初期費用  
・AD  
・フリーレント  
・間取り  
・階数  
・設備  
・募集写真  
・内見のしやすさ  
・周辺競合
など、さまざまな要素があります。

投資家側からすると、
「東京23区だから空室リスクは低いでしょう」
と考えたくなると思います。

しかし購入前に確認したいのは、
その物件を今実際に募集したとき、周辺の競合物件と比べて選ばれる条件になっているかです。

東京という大きな市場を見るだけではなく、
自分が購入しようとしているその1室が、現在の賃貸市場でどのような立ち位置なのかを見る必要があります。


家賃上昇局面だからこそ「想定賃料」を慎重に見る

今のように家賃が上昇している市場では、投資物件の説明でも、
「今後さらに家賃を上げられる可能性があります」
という話が出てくると思います。

もちろん、本当に余地がある物件もあります。

ただ、「東京の家賃が上がっている」
というニュースと、「購入しようとしているこの1室の家賃を上げられる」
ことは別です。

例えば東京23区全体では上昇していても、その駅では供給が多いかもしれません。

同じ駅でも、

築浅と築古  
20㎡と30㎡  
駅徒歩3分と12分  
1階と高層階  
バス・トイレ別と3点ユニット

では競争力が違います。

つまり、東京全体の家賃上昇を、そのまま自分の購入予定物件へ当てはめない
ことです。


私なら購入前に3つの数字を分けて確認する

初心者の方が投資物件を見るなら、私は少なくとも、

現在の賃料  
今、新しく募集した場合の市場賃料  
その賃料を前提にした購入価格

この3つを分けて確認します。

販売会社から、「現在10万円で貸しています」
と言われたら、「退去したらいくらで募集するのか」
を考える。

「今後11万円まで上げられます」
と言われたら、「周辺で11万円前後で募集・成約が見込めるのは、どんな物件なのか」を確認する。

そこまで調べてから収支を計算した方が、購入後の想定とのズレは小さくなります。

「家賃を上げれば利回りも良くなる」という想定にも注意する

物件を検討していると、

現在家賃 9万円  
想定家賃 10万円

という収支計算を提示されることがあります。
確かに10万円で貸せれば収益は改善します。

ただ、投資判断をするなら、
本当に10万円で借りる人がいるのか
まで確認したいところです。

10万円で募集できることと、10万円で入居者が付くことは同じではありません。

周辺に同じような物件が、

9万5,000円  
9万7,000円  
9万8,000円

で複数募集されているのであれば、10万円に上げることで募集期間が長くなる可能性もあります。

さらに競合物件が、

礼金なし  
フリーレント1カ月  
ADあり

で募集されているのであれば、単純な賃料だけでは比較できません。

だから私は、
想定賃料を見るときほど、実際の賃貸募集市場を見る必要がある
と思っています。


今の東京は「家賃が上がっているから買う」ではなく、個別物件を見る市場


東京の賃貸市場が強いこと自体は、投資家にとってプラス材料です。

2026年8月時点でも、東京23区のマンション募集家賃はシングル・カップル向けで高い水準が続いています。

一方で、
物件価格は依然として高い  
期待利回りは低い水準にある  
金利環境も以前とは違う
という状況があります。

だから私は、
「東京だから買う」
「家賃が上がっているから買う」
ではなく、
「この価格で、この家賃なら買ってもいいのか」
を一件ずつ考えることが、以前より重要になっていると思います。

特に初めて不動産投資をする方は、販売資料の想定利回りだけではなく、

実際の周辺賃料  
現在の入居状況  
退去後の募集条件  
管理費・修繕積立金  
ローン返済  
空室期間  
将来的な売却価格

まで一度整理してから判断することをおすすめします。

私は不動産投資の相談を受ける際も、単純に「買う・買わない」を決めるのではなく、賃貸仲介の立場から、本当にその家賃で入居者が付くのかという視点も含めて確認しています。

東京の不動産投資に興味はあるけれど、
「販売会社の説明だけでは判断できない」
「想定賃料が本当に妥当なのか知りたい」
「購入前に第三者にも見てもらいたい」
という方は、購入を決める前に一度整理してみるとよいと思います。

家賃が上がっている今だからこそ、
「家賃が上がっている」という情報だけではなく、自分が買う1室の数字を見る。

初心者の方には、まずそこから始めてほしいと思います。


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