近年、「発達障害と診断される子どもが増えている」と感じる場面が多くなりました。
学校現場でも、家庭でも、「昔はこんなに多くなかったのに」と戸惑う声を耳にします。
では、発達障害そのものが急激に増えているのでしょうか。
実際には、発達障害の子どもが突然増えたというよりも、これまで見過ごされてきた困りごとに、社会が気づけるようになったという側面が大きいと考えられます。
以前は、授業中に座っていられない子は「落ち着きがない子」と見られていました。
集団行動が苦手な子は「わがままな子」と受け取られることもありました。
読み書きに時間がかかる子は「努力が足りない子」と言われてしまうことも少なくありませんでした。
しかし現在は、ADHD、ASD、LDなどの知識が広まりました。
本人の性格や親のしつけだけでは説明できない特性として、少しずつ理解されるようになってきたのです。
また、保護者や先生方の意識が高まり、早い段階で専門機関につながるケースも増えています。
診断を受けることは、子どもに「レッテル」を貼るためではありません。
その子がどこで困っているのか。
どのような環境なら力を発揮できるのか。
それを知るための大切な手がかりです。
さらに、学校や社会の環境が変化したことも関係しています。
現代の学校生活では、長時間座って話を聞くことが求められます。
空気を読んで行動することも求められます。
決められた時間内に作業を終えることも求められます。
こうした環境の中で、発達特性のある子どもの困り感が表面化しやすくなっているのです。
大切なのは、「診断名があるかどうか」だけに注目することではありません。
診断があってもなくても、子どもが日々の生活の中で何に苦しんでいるのか。
何に安心するのか。
どのような支援があれば前に進めるのか。
そこを見ることが何より大切です。
発達障害の診断が増えている背景には、社会の理解が進んだことがあります。
支援につながりやすくなったこともあります。
そして、子どもたちの困りごとが見えやすくなったこともあります。
だからこそ、私たち大人に求められるのは、「問題のある子」と見ることではありません。
その子の見ている世界を理解しようとする姿勢です。
子どもは、自分を理解してくれる大人に出会ったとき、少しずつ安心して力を出せるようになります。
診断名はゴールではありません。
その子に合った関わり方を見つけるための出発点なのです。