こんにちは。
アステラ法務コンサルティングの「たくえい」です。
前回の記事では、土木施工管理技士の経験記述がなぜ重要なのか、その基本をお話ししました。今回のテーマは、「自身の経験をどう活かすか」です。
土木施工管理技士を目指す方の中には、「自分の経験は特定の分野に偏っていて、アピールできるか不安だ」と感じている方もいるかもしれません。しかし、重要なのは経験の多様性そのものではなく、その経験から何を学び、次の仕事にどう活かしたかです。
私のこれまでのキャリアは、民間企業でのメーカー勤務から、地方自治体での幅広い業務、そして現在は法務コンサルタント・建築士事務所の代表者と、多岐にわたります。この一見バラバラに見える経験が、どのようにして土木施工管理技士としての強みになっているのかをお話しします。
メーカーでの経験:技術と品質の基礎を築く
私のキャリアのスタートは、●●ヒューム株式会社でした 。ここでは、コンクリート二次製品の設計・積算に携わり 、コンクリートパイルやヒューム管、ボックスカルバートといった製品の設計補助や単独案件を担当しました 。その後、香港工場への出向では、工場の製造工程と品質管理を任され、現地スタッフと共に業務を遂行しました 。
このメーカー勤務時代に培ったのは、まさに「品質」に対する徹底した意識です。コンクリート二次製品は、その品質が現場での安全性や耐久性に直結します。設計段階から品質基準を厳しく管理し、製造工程で不良品を出さないための管理手法を学びました。この経験は、その後の施工管理業務において、工事全体の品質を確保するための基礎となりました。
特に香港工場勤務時代は、大陸資本のコンクリートパイルが現地に出回り始め、品質では勝っていたものの、価格勝負で苦戦を強いられていたことが、今でも記憶に残っています。品質と価格のバランス、永遠の課題です。
さて、経験記述において、このメーカーでの経験は非常に説得力を持つ要素です。私自身、土木施工管理技士の資格を取得したのは、メーカー勤務時代でした。
「品質管理」をテーマとする場合、単に現場での検査について書くだけでなく、資材メーカーの視点から品質を確保するための設計や製造プロセスに言及することで、より深い洞察を示すことができます。さらには、施工現場での経験もあったため、その現場経験を活かしたことはいうまでもありません。
行政での経験:多角的な視点を持つ強み
メーカーを退職後、私は地方自治体である●●町役場に入庁しました 。合併後は●●市役所へ転籍し、約24年間、地方行政に携わりました 。この期間に経験したのは、土木、建築、上下水道関係の部署での多岐にわたる業務です 。
具体的には、公共用地の管理・取得業務、登記業務、積算、施工、そして設計・施工監理などです 。●●町役場では、●●川河川改良工事や、●●地区簡易水道整備事業、ふるさと水と土ふれあい事業といった国庫補助事業や県費補助事業を担当しました 。●●市役所では、市道・里道・水路等の維持管理業務や整備計画に携わり、事業計画の立案から用地の取得、施工監理、若手職員の指導までを総合的に管理しました 。
この行政での経験は、経験記述に「多角的な視点」をもたらします。工事の実施には、技術的な側面だけでなく、用地取得のための交渉や法務手続き、そして住民への説明といった行政的な側面が不可欠です。
私の経験記述では、単に技術的な課題と対策を述べるだけでなく、関係地権者との交渉を重ねて用地取得を成功させた事例や、未登記道路の解消を実現させた経験を盛り込むことで、工事全体を俯瞰して管理する能力をアピールすることができます。
現職での経験:法務コンサルタント・建築士としての視点
●●市役所を早期退職した後は、浦川栄一行政書士事務所を開業し、現在は合同会社アステラみらい二級建築士事務所の代表社員として活動しています 。
この法務コンサルタント・建築士としての経験も、土木施工管理技士の業務に大いに活かされています。行政に提出する、建築確認申請等といった法務全般の知識 は、公共工事を進める上で避けては通れない各種許認可業務に直結します。また、二級建築士として建築工事の検査業務にも携わっており、土木構造物だけでなく、木造建築物やRC建築物といった幅広い種類の構造物に関する知識を深めています 。
このような経験は、経験記述において「トラブル回避能力」や「プロジェクト全体を管理する能力」を示す上で有効です。工事現場での技術的な課題だけでなく、法的な観点から生じるリスクを事前に予見し、対策を講じることができた事例などを記述することで、より高度な施工管理能力をアピールできます。
まとめ:経験を羅列で終わらせない
さて、皆さんにも私以上のご苦労、現場経験をお持ちのはずです。
経験記述で重要なのは、ただ「こんな工事をしました」と羅列することではありません。それぞれの経験から何を学び、どのようなスキルを身につけたのかを深掘りし、それが土木施工管理技士としてどう活かせるのかを論理的に説明することです。
私のキャリアは、メーカー、行政、そして現職と、多様なステップを経てきました。それぞれのステップで得た経験や知識は、単独では完結しません。すべてが繋がり、土木施工管理という仕事全体を多角的に捉える力を養ってくれました。
皆さんも、ご自身の経験を改めて振り返り、そこにどんな意味があったのかを見つめ直してみてください。きっと、あなただけの強みが見つかるはずです。
次回は、施工管理の業務を「設計・積算から現場監理まで」に分解し、それぞれのフェーズで経験記述にどう活かせるかをお話しします。お楽しみに。
参考【経験記述のネタ例】
安全管理:
・狭い場所での作業における安全対策(仮設足場の設置、重機との接触防止など)
・天候(雨天、強風など)による危険に対する対策
・交通量の多い場所での交通誘導体制
品質管理:
・コンクリートの品質管理(スランプ、気温、強度など)
・材料の品質管理(強度、寸法、形状など)
・出来形管理(出来高、精度など)
工程管理:
・天候に左右される工事(雨天、降雪など)
・材料の調達遅延
・作業員の不足
施工計画:
・複雑な構造物の施工計画
・周辺環境への影響を考慮した施工計画(騒音、振動、粉塵など)
環境対策:
・騒音、振動、粉塵対策
・濁水対策
・残土処理
経験記述を書く際のポイント:
具体的な現場状況:どのような工事で、どのような場所で、どのような状況下で作業を行ったのかを具体的に記述する。
技術的課題:現場で直面した課題を具体的に記述する。
検討項目:課題を解決するためにどのような検討を行ったかを具体的に記述する。
対応処置:検討結果に基づいてどのような対応処置を取ったかを具体的に記述する。
評価:対応処置の結果、どのような効果があったかを具体的に記述する。
文章表現:
・「だ」「である」調で統一する。
・丁寧な言葉遣いは避ける。
その他:
経験記述は、過去の現場経験を基に、技術者としての能力をアピールする場です。経験記述は、採点者に「施工管理技士としてふさわしい経験と知識を持っている」と評価してもらうためのものです。
経験記述は、第三者が見ても理解できるように、具体的に記述することが重要です。また、事前にしっかりと準備し、何度も添削を受けることで、より良い記述を目指さなければならないことは、いうまでもありません。
経験記述は、試験の合否を左右する重要な要素の一つです。
例:ある現場で、擁壁工事を行った際の品質管理について記述する場合
現場状況: 住宅街に近接した場所で、コンクリート打設後の凍結が懸念される状況。
技術的課題: 寒中コンクリートの品質確保。
検討項目: 養生方法、養生期間、コンクリート温度管理、型枠材の選定。
対応処置: 養生シートによる保温、加温ヒーターの使用、型枠材に断熱材を使用。
評価: コンクリートの強度試験の結果、所定の強度を確保できた。
上記のように、具体的な状況、課題、検討内容、対応処置、評価を記述することで、技術者としての能力をアピールできます。